ネオン・デーモンのレビュー・感想・評価
全129件中、61~80件目を表示
悪魔に魂売ってでも
映画全体として見た目がとにかく良すぎる。ビビッドな色彩や女性達の長い手足や滑らかな肌。
生まれつき超可愛いくて素朴なジェシーが、自分の真価に気づいて魔性になっていく様にドキドキする。
美しいジェシーを軸に、その他大勢のモデル達は嫉妬し、ルビーは愛欲と拒まれた恨みを抱き、皆一様に狂っていく。
ジェシー自身も周囲の激情に巻き込まれてむごく殺されてしまう。選ばれた美人でも、器はただの弱い女の子で、「美」の概念にとり殺されてしまったように感じた。
ジェシーの死体を食べることで、モデル達は美しさを引き継ぐけれど、長くは続かない。オカルトっぽい展開だけど、美しさに呪われて彼女らは死ぬんだろうな。
なんとなく、利己的遺伝子の話を連想した。ちょっと違うんだけど、個体を超えて「美しい」という概念だけが女性の体を渡り歩く感じ。
登場人物全員、碌な目にあってないのに、それでもやっぱりキレイって良いなと思ってしまう。内面の美しさが云々みたいな言説が空虚なキレイ事に感じられるほどに、作中のキレイ・可愛いには説得力と力強さがあって、それが美しさの魔力なんだろうと思う。
半自伝的アート
『Drive』のN.W.レフン監督の最新作。
ポスターの美しさに惹かれ、数ヶ月前に鑑賞したが、未だにその衝撃が想起されることがあり、ここ1, 2年の映画の中では明らかに異彩を放っているものの1つ。
ストーリーは、まるで『ブラック・スワン』である。しかし、ブラック・スワンが白黒を基調とした、ややクラシカルなイメージがあるのに対し、本作では終始色とりどりで強烈なネオンサインやフラッシュが観る人を襲う。
さらに、まるでディスコに身を置いているかのような芯から震える重厚なサウンドと、現代美術あるいはシュルレアリスム絵画を想起させるような狂気的な画と息苦しさをも感じる静寂が、イヤというほど観客を惹きつける。
主演のエル・ファニングは当時弱冠18歳、大人の妖艶さと子供の儚さ・危うさを兼ね備えた、今が旬の女優である。本編通り、性的な興奮とともに、独占欲をもかき立てられる。
そして、凄まじいほどの映像・音響にトランス状態になっている観客らに叩きつけられる、ショッキングな結末である。あれで全て持っていかれる。
内容が薄いという批評は全く意味をなさない。これはN.W.レフン監督の前衛芸術なのだと理解した。
(追記)2017/09/10
2度目の鑑賞後にふと思い浮かんだことを記す。
本作の公開後、暫くしてレフン監督の『オンリー・ゴッド』の撮影裏を彼の奥さんがカメラで撮っていた1時間ほどのドキュメンタリー『My Life Directed By Nicolas Winding Refn』が公開される。
そこには、『ドライヴ』の成功による周囲の大きすぎる期待とプレッシャーに苦しむ姿があった。
周りの人間は良い作品だというが、彼自身確たる自信が持てず、イライラを募らせ、妻とすれ違いが生じる場面も記録に収められている。
『ネオン・デーモン』のエンドロールに、「リヴへ、愛を込めて」という言葉とともに、美しい曲が流れる。最初歌詞の内容も本編と全く無関係でピンとこなかったのだが、2回目で上記のドキュメンタリーを観た直後だから感じたのは、この歌詞が奥さんから彼への言葉にぴったり当てはまるということだ。曲は、Siaの”Waving Goodbye”、別れた彼へのラブソングである。レフンとリヴは離婚してはいない。しかし、”Tells me I should treat myself better”や”You’re too crying feel so bad But can I lie down”など、巨大なプロジェクトを創作するレフンを支えるリヴの想いに重なる。
リヴはレフンに家庭的な男であってほしいと願う。しかし、彼のプロジェクトの大きさもよく把握しているリヴはそれは単なる理想でしかないこともわかっている。リヴは彼を支えなくてはいけないこともよくわかっているが、一方で彼女自身、もっと自由になりたいと心の内では思っている。それでも、彼を愛しているのだ。
しかし、その想いは一方通行ではない。リヴは『オンリー・ゴッド』を最後まで応援してくれた。カンヌではリヴも彼と同じくらい緊張したと言っていた。彼女のおかげで『ドライヴ』の呪縛に屈することなく新作を作り上げることができたのだ。レフンもそんなリヴを愛しているし、彼女の想いは痛いほど理解している。
この”Waving Goodbye”は、彼女の想いもよくわかっているというレフンからのメッセージなのではないか。もっと言えば、『ネオン・デーモン』が、成功への欲望に取り憑かれてしまう、レフン監督の半自伝的物語なのではないだろうか。
『ドライヴ』による成功の呪縛が取り除かれた今、『オンリー・ゴッド』『ネオン・デーモン』と、レフン監督の真の才能が解き放たれ始めた。
すべてはキアヌのために・・・
見る前から興味がない内容でしたが、キアヌリーブスが出るためだけに観賞。
内容がいっさい伝わって来ない‼
キアヌが出てたから途中退席しませんでした。
星はキアヌに。出てなければ、マイナス星です。
今年の暫定ベスト
これはニコラス・ウィンディング・レフン監督ベストだと思う。
どぎつい色彩も過剰な音響もこの監督らしい魅力ですが、エル・ファニングの美しさで見やすくなってます。
これは小さい劇場でガンガンに音を浴びて観た方が堪能できるんじゃないかな。
現状での今年ベスト映画。
テレビやスマホじゃ伝わらない映画だと思うので是非スクリーンで。
あれこれは語れませんが、感じてください。
女子トイレは怖いです。
レフンの変態映画がここまでキタ!
NWレフン監督の世界観満載の変態映画!相変わらずのグロ描写と様式美を対照的に描きつつもそこに上手く心理描写を投影させていて素晴らしい世界観を構築している作品。
冒頭からエル・ファニングが監督の世界観にどうハマッていくのか見守っていたんだが、いい具合に彼女の容姿が1つのパーツとして合致しているので一見なんじゃこりゃ?映画だが、彼の作品にしてはバランスの取れた見やすい作品だったのではないかと思う。
天然と人工
田舎娘が売れっ子モデルになり嫉妬される話
レフン監督の作品は「ブロンソン」「ヴァルハラ・ライジング」「ドライブ」「オンリーゴッド」と見ていた。
ファンとまではいかないが結構好きな監督なので期待しつつ鑑賞した。
今作は衣装や背景の色合い、ファッション、空気感など「ラ・ラ・ランド」の暗黒版と言った印象だ。
ララランドと違って、恋愛もミュージカルも無いが、紫色の夜景やモデルの衣装などで原色きつめの服を着たり、オーディションなど何個か重なるシーンがあった。
モデルの原石である主人公、エル・ファニングがカメラマンやデザイナーに気に入られてどんどん仕事をもらうようになるのだが、ハッキリ言って業界の先輩3人のほうがはるかに美人だったと思う。
美人で溢れかえったモデル業界にはエルのような顔が珍しくていい感じだったのかも知れないが、元スーパーモデルのアビー・リーとモデル勝負するのはいささか無理がある。
スタイルの面でも手足の長さ、細さが違い過ぎて、エルが可哀そうだった。
顔も奇抜なメイクでごまかしているし、モデルオーデションの下着姿も全体をあまり映さずスタイルを上手く隠していた、総合的にどう見ても貧相と感じたのは自分だけだろうか。
アビー、クリスティーナ、ジェナの三人を画像検索してから、エルを検索してい比べてほしい。
人それぞれの好みはあるからなんとも言えないが、自分としてはエルは他を圧倒するモデルには成りえないと思った。
女優の顔の話ばかりしても仕方ないので物語の内容に移るが、全体的にお洒落でかっこよくて、雰囲気も最高だ。
監督の事が好きな人は見て損はないし、お洒落目当てで見ても十分満足できる。
新人が感じる厳しいモデルの女社会の嫌な雰囲気、馴れない町でのモーテル暮らしの危うさ、理由もわからずトントン拍子に出世する不安など上手く描けていたのではないだろうか。
オーデションなどで、あからさまに主人公を原石、美の象徴として扱う演出は過剰だったが、これも皮肉かなにかだったのだろうか。
若ければそれだけで価値がある点なども批判していたのかも知れない。
映像表現で楽しかったのはクラブで見る宙づりショーやネオン管の三角形、鏡なども演出だ。意図はまったく読み取れなかったが見ているだけでも高揚した。
キアヌ・リーブスの今までにないゲス役も必見、新鮮で最悪だった(いい意味で)
月の光とネオンの光は天然と人工の対比であり、モデル業界、映画業界へのメッセージとも取れる。
最終的にはおとぎ話風の美を求めるあまり起きてしまう事件をへて物語は終了するが、単純明快で良かった。
どんな世界も食うか食われるかなのだと思った。
主人公が小さい頃に母親に言われた「あなたは危険な子」とはヤンチャで無鉄砲な危ない子ではなく、周りを誘惑し巻き込む危うい子と言う意味だったのだろう。
危うさ儚さをエル・ファニングが上手く演じていたし監督の演出なども素晴らしかった。
衣装デザインやカワイイ女優目当てで気軽に見ると火傷するが、バイオレンス映画だとしっかり認識した上で鑑賞するといい映画体験ができると思う。
劇中セリフより
「美は全てではない、唯一だ」
同じ人間は居ないし好みはそれぞれだが、皆が共感する美人とは何が基準なのだろうか。
全てが唯一のこの世界で美の物差しを持つ人間はどんな視点で人を見るのか興味が湧いた。
グロくて怖くて眩しくて…
エルファニングがニコラスWレフン監督作品にでるんかー、
過去作見たことないけど気になるー、とのんきに思ってみたのがいけませんな。
サスペンスとバイオレンスは許容できても、ネクロフィリアにカニバリズムは無理でしたよ。
吐き出した眼球を、また別の人が食べるて。
胃酸でめっちゃすっぱいはずやのに、眉根をひそめもせず、咀嚼もせず。
丸呑みできる大きさでもないのに・・・。
きもちわりーと思いつつ結構観察していますな、わたし。
赤毛のルビーのいきなりの親密さが怪しくて、最初からこいつは信用したらいかんよと
思っていたら、案の定でしたね。
メイクの仕事以外の仕事は、人形の特殊メイク?それとも死体?どっちかはっきりわからんと思ってましたが、死体、ですよね。
まあ、ジェシーが投影できる器なら何でも興奮できたんかしらんけど。
そして、陵辱されたあのご遺体は一体何されたんでしょうね、あの体の傷・・・。
ネットで知り合ったカメラマン男性も、やばいやつだったらどうしようと思っていましたが、
彼だけがこっちの世界の人って感じでした。
ジェシーが自分がかわいいと知っていて、それを武器にして何が悪い?ってのは、うん別に悪くないよとおもいました。
そして、そういう矜持を持つにしても、あんた無防備すぎるよと思いました。
窓を開けて出かけて、でかいネコ(ヒョウレベルのでかさ)が部屋に侵入して、柄の悪い管理人に弁償といわれて
逃げるしかないとかさ、だめじゃん。てか、そんなん、事務所に相談して安全な住処用意してもらえへんの?
バカなん?無知な子供で、美しき悪魔。その美しさを羨望し、ルビーら3人はその体を食べたってことですよね。
美しさを我が物にするために。ルビーはまた違うんでしょうけど。
ルビーの上半身前面のタトゥーが怖かった・・・
ルビーのお仲間のモデル2人が見分けつきにくくて困りました。
トイレの鏡を割って、流血したジェシーの血を飲んだモデルは、
ルビーのお仲間じゃないひとかと思ってましたが、どうやら片割れの背の高いほうの人、なんですね。
あの手のべっびんさんは、皆顔が似てて、見分けつかないんですよね。
点滅する光が目にすごく悪いので、苦手な人はご注意あれ。
意味不明なシーンの挿入も多く、戸惑いもしました。
エロじゃない変態は、今後手を出さない事にします。
「美を極める」の果ての果て
「美を追い求め、取り憑かれた女たちの顛末を、極限まで過剰に描いた物語」…と言っても、まさかここまで過剰だとは思うまい。
エグい耐性のない人だと、ほんとに気分悪くなって吐くかもしれないw
もうほんと、いくつかの場面では笑っちゃった。
けど、ほんとに恐ろしいしグロテスクなんだけど、多くの女性は「気持ち悪かったー」の後に「それにしてもエルファニングめっちゃ綺麗だったね!」って言っちゃうと思う。
それこそがこの映画の、そして女性の業の深さというか。
しかしこれ、エルファニングはどんな気持ちで観たんだろうなw
とにかくギラギラ
正直に言うと、??ってなるシーンはたくさんありました。
しかし、「理解するんじゃない、感じろ」と言わんばかりのギラつく映像と音楽で不思議と楽しむことが出来ました。
この監督の作品は初めてなのですが、監督の売りこそがこのギラつく映像と音楽だそうで。
他の作品も見たいと思える内容でした。
美と狂気と静寂
トップモデルを目指しロスへとやって来た田舎娘ジェシーが大都会にて女たちのドス黒い嫉妬による争いに巻き込まれる様子を描いた作品。
ギラッギラの色彩センス、静かすぎて逆に耳に響く不協和音のような劇伴、最先端過ぎるぶっ飛びファッション、そして女。
相当クセが強い笑。冒頭のシーンからぶっ飛んでた。間の使い方が長かったり謎の表現がホントに謎だったりと見ててだいぶ胃が痛くなると同時に相当クセになる笑。
これR15どころじゃない気がする。直接的な描写はないけど間接的な描写がエグすぎる。
ラスト前のシーンが映された瞬間、ほぼ満員だった映画館の観客全員がドン引きして息を飲むのを感じた気がした笑。そしてそのシーンが予想して映し出されるのを若干期待していた自分に引いた笑。
あと月灯りのルビーが映されたシーン。
絶対あの瞬間
え?うry
と思ったのは自分だけじゃないはず笑。
この胃のキリキリ感、怖いくらいの間の使い方からたぶんこの監督はキューブリック好きなんだろうなって感じた。
あとホントにエルファニングかわいい。あどけなさの中に妖艶さを混ぜた演技でだいたいの男性を犯罪の道に走らせること間違いなし。まだ10代かぁ!もう2歳くらい歳近けりゃなぁ!(?)
そしてキアヌの無駄遣いたまらん笑。
まだドライヴを見たことないが正直これ見てハードルは上がった。今作は女性ならではの表現をエグめに描いていたけどアメリカの夜のドライブというトラヴィス大先輩がご健在するテーマの中どんな狂気を描いてくれるか楽しみになった。
2017年01月22日(日)1回目@TOHO新宿
2017年06月18日(日)2回目@キネカ大森
過剰な欠落
レフン監督らしい過剰な色と光に溢れていたが。映画を見終わったあと強く印象に残るのは、過剰な色と光が止んだ後の、暗闇であり、欠落であり、満たされない焦燥だ。
光が暗闇を際立たせ、暗闇が光を引き立てる。欲望が焦燥を招き、焦燥が欲望を呼ぶように。
—
本作のヒロインは乙女(処女)であるが。だからこそ。
男がウォーキングを見ながらゴクっと唾を呑み込んでも、若者が月光に晒された乙女にピクっと反応しても、カメラマンが頬を撫で回しても、キアヌがナイフを喉に突き刺しても、処女の欲望は満たされない(満たされていれば最早処女では無くなっている筈だ)。
満たされないもの。それが乙女だ。
美への渇望が抑えきれずに女どもが乙女を喰らったとしても、決して満たされることはない。
ジリジリとしたヒンヤリとした焦燥と欠落が迫ってくる映画だった。
—————————
女優やモデルの舞台裏みたいな噺が大好き。例えば『ショーガール』みたいな。
本作、ストーリーは全然違うが、「かっこいいなあ」よりも寧ろ「バッカだなあ」と思ってしまうシーンが多々あって、そんなところも『ショーガール』っぽくて、大変楽しい映画だった。
『ショーガール(バーホーベン)』のような…と書いたが、本作に対する映画評には国内外問わず、「〇〇の様な」という惹句が並んでいる。
『アディクション(フェラーラ)』のような〜。『マルホランド・ドライブ(リンチ)』のような〜。『つめたく冷えた月(この映画大好き!)』のような〜。『シャイニング』、『キャリー』、『サスペリア』、『ズーランダー(笑)』、「チープな園子温のような」…エトセトラエトセトラ、いろんな疑似作が並んでいる。
何かに似た映画で懐かしい感じすらあるが。
この映画には、バーホーベンのような下世話さも、フェラーラのような面倒くささも、リンチのような求心力もない。似て非なるもどかしさ。どこか満たされない焦燥と欠落が漂っている。
「欠落」を責めたい訳ではない。いや、欠落こそがこの映画の魅力のような気もしてくる。
本作観て取り敢えず、今年リリースされるバーホーベン新作(エル)とリンチ新シリーズ(ツインピークス)が、もの凄く観たくなった。なんかそういう「飢え」みたいのを呼ぶ映画だと思った。
全129件中、61~80件目を表示