劇場公開日 2017年1月13日

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「不完全な美」ネオン・デーモン Raspberryさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5不完全な美

2017年1月15日
iPhoneアプリから投稿

他人から認められたければ自分以外の誰かの欲求に合わせなければいけない。真の主体ではなく、ニセの主体に翻弄され続ける。
鏡が実に象徴的だった。

男目線に影響された女の美ではなく、あくまで女の中の熾烈な美への執着心。そして理想像と自分の乖離を埋めるべく、理想の他者と一体化しようとする狂気。

あの屋敷の主人はきっと彼女たちに殺されたのだろう。理想の他者と同一化したいという欲求を共感し合った者たちに、罪悪感は生まれない。

しかし理想の他者を体内に取り込んでも、自分の主体にはなり得ない。やがて、悲惨な形で中から崩壊する。

静止した映像と音楽。絵画や写真の構図と違い、映像全体がどことなく常に不完全で、「次」を見たい欲求にかられる。
完結された美よりも、不完全な美に人は魅了されるようだ。
映像言語の真骨頂を感じた。

最近の邦画と違い、ちょっとしたセンスの良さみたいな小手先で勝負しない、監督の骨太さがハンパない。

Raspberry