劇場公開日 2017年2月25日

「生類憐みの令」彼らが本気で編むときは、 たろっぺさんの映画レビュー(感想・評価)

0.5生類憐みの令

2017年3月5日
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鑑賞方法:映画館

やりきれない気持ちを昇華する物語。

マキオを演ずる桐谷氏の棒読みの台詞や、ぎこちない表情が気になって仕方がなかった。
また家庭内でのだらしのない仕草や、リンコさんを抱き締めるシーンでは筋肉の強張りが感じられ、トモの強張りを解く馴染みやすい役柄として不適当である。

また、生々しい家庭・社会問題の上澄みのみ掬うかの如く陳腐で時代錯誤な表現の数々からは、偏見に対する偏見が見受けられ、時折挟み込まれるリンコさんの母親の無神経さをギャグとして見せられても嫌悪感しか抱かない。
自分もトモと同じ母子家庭で、大変な苦労を経験なさっているだろうに、娘のパートナーに対して「片親だからラッキー。」などという非常識な台詞が出てくるなどまずあり得ないだろう。
勿論、敢えてそういう態度であっけらかんと受け入れ昇華しているという表現だが、その演出意図を含めて下品極まりない。
それから、末尾での「姉さんを宜しく頼む。」という叔父の発言にも納得がいかない。
しっかりしていようとトモは子供だ。
何故これ以上、大人の態度・行動を背負わせるのだ。
どうして「いつでも遊びにおいで。」と言ってやれない。
監督の倫理観に疑問符が付く。

現実に子供が思い詰めて自殺する世に於いて、片付けられた部屋を映して締めとせず、理解無き人間に対して、どう向き合い行動していくのかを示す責任があるのではないか。
本気で編む事は大事だが、苦難に対する解決には繋がらない。
本作をトモやカイと同じ様にネグレクトやいじめの渦中にいる子供が観た時、四面楚歌の中で編み続ける孤独を是としかねない。
また、本来助けを求めるべき児童相談所の人間まで理解無き大人として描かれている為、現実的且つ効果的な解決法の全てを封じてしまっている。
これでは立ち向かったり、逃げたり、理解を得ようとする心を育む事など到底叶わない。
トモの様に強く優しい人間が臨界点に達した時、どうなるのか。
死を選ぶのだ。

某Webマガジンのインタビューにて荻上監督は、「自分が決めた道を歩んでいるのであれば、周囲が何と言おうがどうでもいいと思う。」「自分が選んだ道を進んでいる限り、私は誰に嫌われても平気なんです。」と語られている。
成る程、監督は理解なき人や物事に対して無頓着に生きてきたのだろう。
それは他者との連帯から掛け離れたものであるという事を知るべきだ。

たろっぺ
たろっぺさんのコメント
2017年3月12日

否定的なコメントばかりで申し訳ありません。
私もネグレクトで寂しい幼少期を過ごしまして、今でも親に本心から構ってもらえる子供を見ると良かったなあという気持ちと同時にダメージを受け、いい加減な親を見ると睨み付けるぐらいの捻くれ者です。
その為、トモちゃんと母の絆を希望的に捉える事が困難でありまして、ああいう人間は頭では駄目だと理解出来ていたとしても行動や態度で示す事は一生出来やしないと自分の体験を当てはめて考えてしまいました。

荻上監督は「自分が決めた道を歩んでいるのであれば、周囲が何と言おうがどうでもいいと思う。」と仰っております。
確かにトモちゃんは大事なものが分かっている強い人間ですが、あの様に黙り込んで孤独に編み続けるという尊い行いに固執する事は、愚行が蔓延る社会において必ずしも有効な手段であるとは限りません。
強い人間にも耐えられる限界がありますから、言い返したり、戯けたり、喧嘩をしたりという馬鹿げた対応も、時として必要であり効果的な自己防衛と考えております。
また、後の事はどうでも良いという考えこそ、差別や偏見を助長すると考えております。
そういう分かり合えない人を切り捨てる訳ではなく、反発しつつも協力していかなければ、乗り越えられない壁もあると思います。

たろっぺ
餃子さんのコメント
2017年3月12日

主に全体的に共感します。笑
それぞれ、そこ、気になる点ですよね。

ただ、今回の映画は「母親と娘の絆」がテーマだったんじゃないでしょうか?
リン子と、トモが母子の絆を作り出す過程の物語だったんじゃないかな?と。

だから、周りの人達の反応はあえての記号的だったのかも?
カイや、トモがどうしていくか、もテーマから外れるから、あえて描かなかったのかも。
演技は…ほんと、「喋り方がアレな人」って見てるこっちが一発で分かる描き方して欲しかったですよね。監督、役者双方ともの課題だろうなーって思います。
編むことも、ホントそうですよね。そういう視点でいうと、リンコさんは弱い女性なんだと思います。自分から、社会に訴え出たりは出来ない。
賛否分かれる点だとは思うんですが、「理不尽に対して暴力で訴えない」という人間もいていいと思います。
そうゆうサイレントな人もいるんだって、描いてくれた作品じゃないかな、と思う。
LGBTの要素を持って生まれても、全員活動家になる訳じゃないから。

餃子