「闇と傷」愚行録 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
闇と傷
週刊誌記者の山本武志(妻夫木聡)は、1年前の未解決殺人事件を
再調査していた。
彼は実は犯人を知っていて、その犯人と疑う人物の確証を掴むために
再調査していたのではないのか?
私は観終えて、そんな感想を持った。
事件①
一年前。
エリート会社員・田向(小出恵介)妻(旧姓・夏原さん)と女児が惨殺された。
山本は田向と妻の交友関係を調べて人となりを探ってゆく。
すると田向は女友達を次々と変えて、ガールフレンドの父親の伝手で
就職を画策したりする男だった。
妻の大学時代の学友の宮村(臼田あさ美)からは夏原さん(田向の妻)の
良からぬ噂と恨みつらみを聞かされることになる。
大学の内部生と外部生のヒエラルキーは置いておくとして、
宮村は恋人中村倫也)の心変わりが夏村さんのせいだと考えている。
宮村と面談を重ねるうちに、
「夏村さんから酷いダメージを受けた女子学生がいた」
との証言を得る。
事件②
山本光子(満島ひかり)は父親の知れない子供を出産して、
その後その乳児が頭に酷いダメージを受けたことから、乳児虐待を疑われて
収監されている。
精神状態に異常がみられて精神鑑定を受けている。
光子は実は武志の実の妹で、小学校高学年から実父の性的虐待を受けていた。
兄の武志はそのことを薄々気付いていたが、自身も父親から暴力を振るわれ
高校3年になったある日、父親をボッコボコに痛めつけて、
それをキッカケに父親は家を出て行く。
拘置所に何回も面会に行く武志。
武志の鬱屈と心の歪みは、見ていても痛ましいほどだ。
妻夫木聡は冒頭の、バスで老女に席を譲るように促されて立ち上がり、
通路でよろけて這いつくばり、降車後は大きく足を引きずる。
バスが遠ざかると健常者として普通に歩行する。
彼の心の歪みをまざまざと見せつけるシーンだ。
宮村の証言の女とは?
光子は父親の失踪後勉学に励み夏原さんや田向や良家の子女が多く通う
有名大学に進学する。
夏原さんとその取り巻きに憧れを抱く。
光子は美しかったからヒエラルキー最下層ながらも夏原さんから
仲間に入れて貰う。
しかしそれが実は、良家のお坊ちゃんたちの性奴隷的ポジションだった。
夏原さんは男の子たちに光子を斡旋して利用していた。
その宮村の証言を無表情に聞いていた武志は、突然近付き宮原を
撲殺する。
さらに光子の弁護士橘(濱田マリ)が武志と光子の母親の再婚先に向かい
聞いた事実は時雨劇的だった。
光子の子供の父親は武志なのだった。
証言から浮かび上がる田向夫妻の裏の顔と実像にも驚くが、
武志と光子の心の傷と闇の深さにも驚愕する。
この映画(原作小説)は実は現実にあり得ることで、様々な事件の背後には
こんなあり得ないような闇の事実が潜んでいるのではないでしょうか?
人間の負の感情の強さと、それが増幅する様はリアルでした。
石川慶監督はこの後「蜜蜂と遠雷」を撮り、
妻夫木聡を主役に「ある男」で、高い評価を受ける。
愚行は日常の中にありますが、ある言い方で言えば若気の至り。
それを乗り越えながら生きているようにも思えますが、主人公兄妹に起きた出来事の最初のボタンの掛け違いが、兄妹による恋愛関係だったんでしょう。
この作品では何一つ解決される部分がないですが、最後に席を譲る主人公は、ようやく一歩前に進めたのかもしれませんね。
こんにちは♪
共感コメントありがとうございます😊ラストでまた妻夫木さんが、
自然に自発的に席を譲るシーンがありますね。どなたかのレビューに初めのは、事を起こす前、(私的にそのものになりきっていた)、ラストは、事を終え素の自分に戻っている、と書いてられました。
なるほど!と。だから、初めのバス以前から計画的だということですね。妻夫木さん上手いから、
怖かったですね🦁
こんばんは♪ 未レビューです。
現実にあり得ることですか⁉️
光子が田向、夏原、娘を○して、
兄が宮村を○してタバコの吸い殻で証拠偽装。
田向も夏原もイヤな人間でしたが。近親相姦は兄妹だったのも。
妻夫木が淡々と聞いていて、宮村を○○したのはビックリでした。
ビックリ連続の作品でした😱
こんにちは!
共感、コメントありがとうございます。
妻夫木くん、素敵な俳優さんですが、この作品では特にそれを感じますよね
それと妹役の満島ひかりさん、この映画以来、とても気になる女優さんになりました。内容もすごいですが演技力がそれを超えて凄まじい映画ですよねー
共感ありがとうございます。
私事で恐縮ですが、8月に入ってから、100歳の義母の容体が悪化し、一進一退を繰り返して、8月18に亡くなりました。8月25に告別式を行いました。ということで8月は映画から離れていました。9月から再開予定です。
本作、観終わって、気分が良くなる作品ではありませんが、本源の業、性を妻夫木聡、満島ひかりが卓越した演技力で見事に表現している問題作でした。こういう作品を創るのも映画の役割だと思いました。
では、また共感作で。
ー以上ー