「それでもメディアショーは続く」マネーモンスター 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
それでもメディアショーは続く
生放送中、番組がジャックされる。
実際にはありそうで滅多にないシチュエーションだが、映画では格好の題材。
韓国映画で『テロ,ライブ』。メディアによって犯人が祭り上げられる『狼たちの午後』や『マッド・シティ』。邦画でも『グッドモーニングショー』なんてあったが、これは…。
本作も特別優れた傑作ではないにせよ、サスペンスと社会派のハリウッド・エンタメ。
スター映画でもある。監督はジョディ・フォスター、ジョージ・クルーニー&ジュリア・ロバーツ共演。
人気TV番組“マネーモンスター”。MCのリーは軽妙なトークとユニークな趣向で視聴者に株の動きを伝えていた。
しかしある日、予測していたアイビス社の株が大暴落。その原因を番組内でアイビスの広報担当に直撃しようとしていた。
ディレクターのパティはスタジオ内に不審な男がいる事に気付く。その男は銃を持ちリーを人質に取って番組をジャック。
男カイルはアイビス社の株価暴落によって財産を失った。リーの誤った情報と不正があったと凶行に及んで訴えに出たのだ…。
これまでにも何度も言っている通り、株などお金の動きに疎い私。だから『マネー・ショート』なんてちんぷんかんぷんだった。
とは言え、お金の動きなんて精通している人からすればある程度予測出来るのだろうが、絶対的じゃない。株が上がったとか暴落したとか、未知数。それでいちゃもん付けられても…。
しかしそこに、疑わしい不正があったとしたら…?
いつも得をするのは金の亡者たちだけ。貧乏人は搾取される。
カイルのやった事は犯罪だが、気持ちが分からん人も少なくないのでは…?
リーも当初は、何で俺がこんな目に…としか思っていなかっただろう。結構俺様な性格。
しかしカイルが、自分が発した情報によって被害を受けた事にさすがにショックを受ける。
俺が間違っていたのか…?
いやそもそも、俺が間違わされていたのか…?
人質になって身に危険が及ぶ中、真偽を突き止めようとするが、アイビス社のCEOは行方をくらましたまま。
何か、ある…。
いつ爆発し、さらなる凶行に及ぶか分からないカイル。TVを通じて恋人から説得して貰おうとするが、恋人はカイルを痛烈に批判。赤っ恥をかかされ、カイルの精神状態はさらに不安定…。
カイルをなだめるリー。自分の身の安全もさることながら、カイルの事も助けたいというのも嘘ではないようだ。
と言うのも、パティらTV局側と警察は…。
パティは何よりリーの安全優先。リーとパティは男女の関係と言うより、長年のバディ。
警察は必要とあらばカイルの射殺も辞さない。スタジオ内に狙撃手を配置。
リー、カイル、パティらTV局、警察の思惑が交錯と混乱する中、行方をくらましていたアイビスのCEOの足取りが…。
スタジオ内も外も警察の包囲網。
アメリカ中の注目の的。
極刑どころか、一歩間違えれば死ぬかもしれない。
でも、ここでこのまま手をこまねいているか…?
自分で事の真相を追及しに行くか…?
大胆な行動。リー自ら人質となって盾になり、TV局の外へ。カイルを連れ立ってCEOの元へ向かう。
混乱とアクシデントの中、遂にCEOと対峙した二人は…。
ジョディ・フォスターの監督4作目。前3作のヒューマンドラマから、突然の路線変更のサスペンス。スリリングなエンタメ性と社会派要素の手腕は上々。
序盤のジョージ・クルーニーは本人を見ているよう。犯人に同情し、共に真相を突き止めようとするヒロイックなご都合主義はご愛敬。
ジャック・オコンネルも狂気と哀切を表していた。
ジュリア・ロバーツも好サポートするが、ちと合ってなかったような…。ジョディ・フォスターの方が合ってたかも…?
CEOを問い詰めるクライマックスは痛快。
が、犠牲が…。自業自得なのかもしれないが、哀しさ滲む…。
ラストシーンは“バディ”の信頼感とスターオーラで、ただ後味悪く終わらない。豪華スタートリオによるTHEハリウッド・エンタメ!
TVにSNSにメディアの情報に躍らされる今の世。
それが絶対とは言えないのにも関わらず、鵜呑みにしてしまう。幸になるか、不幸になるか。
それでもショーは続く。