「何か起きてからでは遅い」バーニング・オーシャン 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
何か起きてからでは遅い
2010年に起きたメキシコ湾原油流出事故。
人命が失われ、深刻な環境問題にも発展。
最悪の事故となったが、不謹慎ながら、人災パニック映画としては非常に面白かった!
序盤はちと退屈。
ありがちな家族とのドラマ、現場の人間と上役の対立。専門的な現場の用語や作業の流れも分かり難い。
が、いざ事故が起こるや、瞬く間に引き込まれた。
凄まじい勢いで噴出される泥水。
続く、原油。
こうなると人の力など無に等しい。
原油噴出だけでも大変な事態なのに、さらに追い討ちをかけるようなガスの蔓延。そして…
大爆発。
辺りは一面、灼熱地獄に。
迫力ある音響、リアルなCG火災、恐怖とスリルの脱出劇…後半からはただただ目が釘付け、圧倒された。
その日は何かがおかしかった。
車のエンジントラブル、縁起の悪い“紫”のネクタイ、ヘリにぶつかってきた鳥…。
これから起こる大事故の…と言ってしまえば後付け予兆だが、こういう人災の原因は決まっている。
人為的ミス。
現場の人間は、どんなに経費がかかろうと日程が延びようと、テストやチェックやメンテナンスは怠るべきではないと主張。何より安全最優先。
しかし上役は、経費の削減と作業の完了最優先。安全テストの多少の異常など意に介さない。
石油採掘の事故だけではなく、誰しも仕事で少なからず経験はあるだろう。
上役は現場の意見などほとんど聞いてくれない。
現場は言われたとおりに働け。
現場の不満。
上役の圧力。
が、何か起きてからではもう遅いのだ。
作品は意外とコンパクト。
前半は事故に至る異常のあれこれ、後半は事故と脱出。
マーク・ウォールバーグやカート・ラッセルやジョン・マルコヴィッチらを配していながら、誰一人英雄的に事故の収束に奔走する者は居ない。ラッセルなんて大怪我を負い、マルコヴィッチは嫌みな上役。
ただ生き延びようと必死。その姿がドラマチックでもある。
痛々しいのは、事故による怪我の描写ではなく、仲間や愛する者を失った悲しみ。
何故、事故は起きたのか。
近年屈指の人災パニックの醍醐味を堪能しつつ、どんな仕事にも通じる教訓として学ぶ。