「アメリカのねずみ男もなかなかヤルよねw」SING シング 雨丘もびりさんの映画レビュー(感想・評価)
アメリカのねずみ男もなかなかヤルよねw
【ライブの可能性も限界も描いたうえで、音楽のすばらしさを伝える大傑作】
とにかく楽しい!しかも、ここまで行き届いた音楽映画を他に知らない。
素人のど自慢コンサート。
熱唱する出演者のかげに必ず一人以上、そのパフォーマンスに乗っていないキャラがいる。
ライブや音楽の限界をフェアに描いており秀逸な視点。
特にゴリラのジョニーがパフォーマンスしているときに、ステージを見もしないあの子!そう!それこそが正しい!あなたが集中するべきなのは他人のステージじゃない!と手を握り締めた。
オリジナル曲なんか盛り上がらない問題も、出演者一同が“みんな知ってるスタンダード”を歌うことで回避。
ヤマアラシのアッシュのみオリジナル曲で勝負するが、バスターの紹介MCとジュディスの妨害あってこその観客大声援。その手があったか。
※ジュディスは映画的敵対者ってだけで悪役じゃないけどね。むしろバスターたちの方がアウト。
登場するキャラ全員、魅力的で大好き。
特に、結構みなさんに嫌われている様子のコアラ(^^;)。
バスター=ムーン、確かに人格を疑う言動も多いが、プロデューサとしてこんなに思いやりにあふれた人物がいるだろうか。
彼が嘘をつくのは、決まって相手をがっかりさせたくない時。
何かあると真っ先に出演者のことを心配し、ステージで力を最大限発揮させるために尽力を惜しまない。
もちろん、出演者が望まぬスタイルを問答無用で押し着せるのはNGだが、バスターの提案をヒントにして出演者が思いついたアイデアは、大いに応援する。
何より、バスターの目的は一貫して素晴らしいショーを開催することであり、自分の広名欲や自己顕示欲のためではないのだ。
ラストシーンで彼が佇んでいた場所、私も密かに拍手を送った。
これはきっと、監督が抱くリーダー像の理想であり、夢だと思う。
「大丈夫!僕がなんとかするー!」
あなたになら付いて行くよ。
あなたがみんなを信じていたから、みんなあなたを信じて付いて行ったんだよ(^^)