「アップデートされた任侠映画の様式美」新宿スワンII Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
アップデートされた任侠映画の様式美
コレがなければ、「日本で一番悪い奴ら」(2016)の綾野剛もなかったかもしれない、ひとつのキャラクターを確立したとシリーズ。前作よりパワーアップしている。
前作から引き続き、園子温監督ではあるものの、"らしさ"を感じられない下請け作品。どちらかというと"トライストーン"ファミリー作品だ。実質は山本又一朗プロデューサーのもので、脚本も本人(水島力也名義)だ。綾野剛は自社の所属俳優だし、小栗ヨメも出ているし。
同じトライストーン作品の「クローズ」もそうだけど、基本こういうオトコ臭いのが好きらしい。しかし、似たようなファミリー映画の「HiGH&LOW」より格段にアカ抜けている。脈々とつながる"任侠映画の様式美"を現代にアップデートさせるとこうなる。
伝統の任侠映画が減退したのは、"暴対法"および"排除条例"が遠因。業界の自主規制というよりも、マル暴が犯罪に絡むリアリティが減退してしまったから。設定が”拳銃”や”ドラッグ”はNGというカタギ商売であるところも、実にイマ風である。ちなみに最近のスパイ映画のつまらなさも、"冷戦後の仮想敵の不在"が原因だ。
本作は、「仁義なき戦い」や「極道の妻たち」のエッセンスを絶妙にリスペクトするバランス感覚の良さ、ありそうでなかったアクション演出の新味、大御所と若手のキャスティングの巧みさ。これがLDHとのキャリアの差。
新キャストについては、なんといっても浅野忠信の演技がそつない。たまたま同日公開の「沈黙 サイレンス」でも、主役ではないのに存在感を発揮しているところが素敵。2作をつづけて観ると、唸るものがある。
広瀬アリスは彼女なりに頑張っていると思う。勢いでは妹に及ばないし、キャミソールで歌舞伎町を走っちゃう沢尻エリカとは比べようもない。石田ゆり子のごとく時間が解決するかな・・・。椎名桔平は何に出ても同じ。
原作にはまだまだネタがあるだけに、任侠ポジションを承継して第3作、第4作とシリーズ化をすすめてほしい、期待のエンターテインメント作品である。
(2017/1/21/TOHOシネマズ日本橋/シネスコ)