「愛ゆえに…3部作のクオリティには及ばず」ジェイソン・ボーン うそつきカモメさんの映画レビュー(感想・評価)
愛ゆえに…3部作のクオリティには及ばず
「ボーン・シリーズ」の魅力は何といってもアクション。
見たことのないシークエンスを次々に「開発」してくれたものです。
実際、シリーズ以降に、
同じようなアクションを真似している映画やドラマをよく見かけました。
・建物の窓に飛び込む(カメラごと)
・運転している主人公にそのまま横から突っ込んでくる車
・徒手空拳のリアルな殺人術
・身近な機材を駆使した敵を捜索する裏技
・極限まで削られた主人公のセリフ
・それらをやりこなすマット・デイモンの説得力
そして、続編ごとにレベルアップしていく敵の強さとボーンの攻防。
見事にまとめあげた完結編の幕引き。
すべてにおいて、完璧といえる内容で、ストーリーの破綻もなかったのです。
逆の意味で、ここからどう繋げるのかという興味はありましたが、不安のほうが大きかったのも事実。
せっかくきれいに完結したのに、作品性を穢すことになりはしないか?
結論から言うと、今回「出来はそこそこ。まぁ及第点か」という感じです。
上述したとおり、作品の魅力は確かに損なわれていません。
マットも、ゴツくなったけど、まあグッドシェイプを保っているし。
でも、新作ごとに、進化したアクションを見せてくれる期待は、今回かないませんでした。全部どこかで見たか、過去作でやったことのあるアクション。
満足度は高いものの、「ボーン」だけにハードルが上がりまくっていた分、星は4つと言いたいところ、でしたが、
字幕の戸田奈津子さんが、全面にフィーチャーされ(通常エンドロールの最後に紹介される字幕担当者が、冒頭から出てくる自信過剰さ)嫌な予感はしたのですが、何ヶ所か、気になる字幕があったのです。
もしかして誤訳なのかというモヤモヤしたものが残ったまま、映画は終わりました。回収されない伏線はよくあるけど、回収されない字幕って……。
可能であれば、日本語吹き替え版で再度見てみたいと思っております。
ちなみに、
(ネタバレ注意!)ここからは見ていない人は絶対読まないで。
・トミー・リー・ジョーンズが「左腕を撃て」とスナイパーに指示を出したのは、ストーリーの上では自分が疑われないためのカモフラージュ工作で、自らの左腕を撃たせる指示だったように見えましたが、撃たれたのは違う人。その後トミーは左腕をじっと見つめるシーンがあり、何か別の意図があったようにも見えました。
・予告編で使われていた「取り戻した記憶は全部うそだった」というやり取りが本編で出なかった。(ように思いました)
・アリシア・ヴィキャンデルが「ボーンはCIAに復帰をのぞんでいるはず」と、半ば強引に組織に反抗してボーンを操る展開のはずなのに、なぜか、最終的にはトミー・リー・ジョーンズがボーンに復帰を迫る展開。
モヤモヤしています。
2020.9.4