「現代国家の写し鏡としてのワカンダ王国」ブラックパンサー nagiさんの映画レビュー(感想・評価)
現代国家の写し鏡としてのワカンダ王国
シビル・ウォーで彼の父が亡くなってから、その背景を描いた作品。
ワカンダ王国を理解することで、現代のグローバル社会の問題が見えてくる。
まず、黒人差別の問題。これはもう、近年あらゆる映画で提起させられていることで本作にも『GET OUT』の主演のダニエル・カルーヤが出ていたではないか。キルモンガーの理論も、社会的弱者に武器を。ということである。『GET OUT』は弱者でなくなりつつある黒人に対する、白人の有りようがシニカルに描かれていて、非常に面白かったのだが。
次に、閉鎖的国家の問題。ワカンダは長年、他国家との交流を避けて隠れて生きてきた。それこそが平和が維持できていた理由だと、ブレインは語る。しかし、そうは言っていられなくなる。多民族国家における問題、それは独立・権限移譲を求める内乱だ。カタルーニャ州がスペインからの独立を主張するように、ワカンダの民族も、思想の違いで国家内で戦争に発展する。シンガポールの地政学者であるパラグ・カンナは、国家の細分化は、熱力学第二法則的で、自然なものであるといい、エントロピーの増大こそ争いを沈めるという。国家の団結は、統合ではなく分離によってもたらされ、細分化されたそれぞれをインフラストラクチャーで接続する。それこそ、今後のグローバル国家の在り方だと彼の著書で語っている。
キルモンガーの事件があってからのワカンダの行動は、その理論に通ずるものもあり、ビブラニウムによって各国のインフラを整備すれば、各国の接続性は高まるだろう。
まあ、MCUにおいては、国家間の平和はサノスをやっつけることでもたらされるのでしょ。