「ママイメルダに共感」リメンバー・ミー Maple Mammaさんの映画レビュー(感想・評価)
ママイメルダに共感
故人との楽しい思い出を思い出すといなくなった日々の辛さに目がいくから、いっそ忘れて思い出したくないという気持ちと、故人が死後の世界で2度目の死を経験しないよう思い出すことが大切という気持ちの交錯がこの作品のテーマ。
思い出の詰まった大切な人を失った経験があれば、どちらの気持ちも必ずわかるはず。
ママイメルダの気持ちに私はとても共感した。だからといって家族にまで代々音楽を禁じる必要はないのだが、それだけヘクターとココとの毎日が音楽に溢れ幸せだったのだろう。ヘクターと別れた後、女手一つで幼いココを育てるには、思い出も音楽も丸ごと無かったことにしなければ、到底気持ちが持たなかったであろう。
愛を憎しみと変え、無関心にまで至らせる過程にはどれだけの苦悩があったことか。
ヘクターとの再会で、態度や表現は強くも、本当は心の底から何十年もヘクターとの時間を望んでいたのが伝わってきて泣けた。
そのココがヘクターを覚えている最後の生きている人間なのに、老いて認知症もあり、もうすぐ父親を忘れてしまう。幼い時の父親が歌ってくれた歌がリメンバーミーだったなんて、幸せすぎる。
そして、そういう想いの詰まった歌の由来を無視し、私欲のために1人の夫であり父親であるヘクターを殺害し、曲もギターも盗み、富を築いたデラクルス。許せない。鐘に殺されるのがお似合いだし、音楽界の敷居をまたぐ資格なし。
かくいうヘクターも、生前よりもずっと、死後にヘラヘラしたいい加減な人になっていて、強い魅力があるわけではないのだが、イメルダやココのために、叶いかけた夢を諦めて家庭に帰る決心をしていた。ここが重要ポイント。
でも、ヘクターとミゲルのデュエットはさすがDNAのなせる技、相性ぴったり。
先祖のだからと言ってミゲルがギターを盗むところと、このデジタル社会、地震多発国でも上映がある封切りの中で、写真を飾らないと死者の世界から戻ってこれないというのはなんだかな。
とはいえ、大好きで夢でもある音楽を否定するなんて家族として最低!というミゲルの反抗心が、真相を追ううちに、家族や先祖の気持ちの理解に繋がっていき、成長するところが良かった。