「家族愛は伝わったが…」リメンバー・ミー kkmxさんの映画レビュー(感想・評価)
家族愛は伝わったが…
さすがピクサー!一部の隙もない、エンタメ映画としては完璧に近い作品なのではないでしょうか。最初から最後まで退屈なシーンは皆無で、ストーリーもいい感じのどんでん返しもあり、キャラも魅力的。特に犬のダンテとココおばあちゃんがキュートで最高!ミゲルのミスフィッツメイクもなかなか似合っていて良かった。
そしてそしてそして…ミゲルがココおばあちゃんにリメンバーミーを聴かせてばあちゃんの記憶が戻るクライマックスのシーンにはまんまとやられました。号泣です。あんなに泣いたのは2016年の邦画「カノン」のエンディング以来です(でもカノンの方が泣いたな)。
マリアッチ風の曲も好みでした。でも、リメンバーミーなんかはコード進行も割と凝っていて、ポップとしてのクオリティも当然高い。映画館には子連れも多かったですが、本作で映画を初体験した子がいたら幸せだと思います。
そんな素晴らしい作品でしたが、正直乗れなかったです。
理由はただ一つ。この世で忘れられた人は2度目の死を迎える、という本作の根幹に関わる設定と、死者の国の住人たちはそれを怖れていることが自分と合わなかったのです。
これは到底受け入れることができませんでした。とても残酷ですよね。まるで忘れられた人は価値がない存在だ、と烙印を押されるようなものですから。
家族を持てなかった人は?配偶者や子どもを早くに亡くした人は?いいじゃん、別に。みんな生きてるときはガチで生きてるんだから、生ききっただけでオッケーじゃん。そこに変な優劣なんかないって断言できます。
しかも死者の国での彼らの生活ぶりといったら、まるでゲットーのようなところに住んでいて、死んでからも格差社会かよ、世知辛れぇなぁと痛感しました。
忘れ去られる、結構なことじゃないですか。そんな風に思っている自分の価値観と本作の基本設定が相容れず、本作を楽しんで感動までしながらも、心の底から揺り動かされることはありませんでした。
家族愛は描かれていた。でも人類愛はなかった。ピクサーなんだから、もっとスケールのでかい作品を期待します。