「アニメーション、音楽、ストーリー・・・すべてが秀逸。」リメンバー・ミー 天秤座ルネッサンスさんの映画レビュー(感想・評価)
アニメーション、音楽、ストーリー・・・すべてが秀逸。
安定の品質保証ピクサーアニメ。最近は各作品の続編の製作が目立っていたので少々不安になっていたところだったが、今回は大当たり。見て楽しく、聴いて楽しく、そして物語を噛み締めて感動できる、実に充実した作品になっていた。
ピクサー作品は、基本的には「旅」と「冒険」の物語が多い。「トイ・ストーリー」や「ファインディング・ニモ」もそうだし、例えば「インサイド・ヘッド」もまた、感情がライリーの頭の中を旅する冒険記だった。しかしそう言った旅のストーリーにも、そろそろマンネリを感じ始めていた私だったのだが、この作品に関しては、物語が描く旅の動機と続く展開の裏付けがしっかりとしているので、マンネリどころかとても有意義に物語を堪能。高曾祖父に許しを得るまでの旅と冒険のその意味合いと説得性に背中を押されて、物語が力強く動いている様子が伝わり、とてもとても楽しかった。そして終盤では、ちょっとした驚きと共に物語がますます充実感を増すのを感じる。なにしろこの映画は脚本が非常に良くできているのだ。伏線とその回収も巧みに機能して実に秀逸であるし、原題にもその名が冠せられた曾祖母の存在が意味する真のテーマ、そして「二度目の死」についての考察も含め、とにかく話が豊かで面白い。ピクサーのアニメーション技術に最早疑いはないが、脚本が良くできていてとても巧いので、これが面白くないわけがないという感じですらある。
そこに加えて映画音楽がまた心を躍らせる。リズミカルであると同時にメロディアスなメキシコの音楽は、陽気であると同時にどこかメランコリックで実に心をくすぐる音楽ジャンルだ。そこに少年の澄んだ歌声と、男声によるセクシーな低音、女性による情熱的な歌唱がそれぞれ見せ場を作って映画を盛り上げ、描かれるテーマに厚みを足す。そしてやはり最後に曾祖母ママ・ココに向けミゲルが優しく語りかけるように歌う「リメンバー・ミー」に思わず涙腺が緩んだ。この曲は、大切な人との別れ(それは一度目の死、二度目の死に限らず、生きている間に経験する別れも含め)の寂しさや悲しみを優しく慰めてくれるような佳曲だ。
個人的に、死者の国の色彩も好きだった。死者の国とあらば、白黒の暗い世界や、ティム・バートンのようなゴシック調の世界観がイメージしやすいところだけれど、この映画が描く死後の世界は、とても色彩豊かかつ鮮やかで、それぞれの色彩がまるで光を放つようなエネルギーで描かれていた。なるほど、死後もまたこんな風にエネルギーと生命力に溢れた色鮮やかな世界のはずだ、と死を前向きに捉えるメッセージにも思え、また更に勇気と励ましを貰うような気がした。