劇場公開日 2018年3月16日

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「家族を亡くした経験が多い人ほど感動できるはず」リメンバー・ミー アラカンさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0家族を亡くした経験が多い人ほど感動できるはず

2018年3月17日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

幸せ

吹き替え版を鑑賞。ピクサー作品の中でも評価の高い「トイ・ストーリー3」のスタッフが作った新作だそうである。「トイ・ストーリー3」も,サプライズ的に感動的な展開が相次ぎ,1から見てきた子供達はもとより,子供と一緒に見てきた親にまで福音となるような名作だったので,今作も期待して見に行ったところ,期待を上回る出来であった。

アメリカでは昨年 12 月の公開だったため,先に上映されるアナ雪の続編では,クリスマスが舞台になっており,かなり季節外れな感じを受けた。日本の公開も当初は同時期だったものが,今月まで後倒しにされてしまったためらしい。アナ雪も吹き替え版であったが,前作の松たか子,神田沙也加,ピエール瀧らが相変わらず高水準の歌唱を聴かせていた。

リメンバー・ミーの舞台がメキシコということで,ディズニーのオープニングテーマまでラテン的なアレンジで演奏されるのがまずサプライズである。メキシコには「死者の日」というのがあって,日本のお盆と同じように先祖の霊がこの世に戻ってくるという風習があるらしく,それを下敷きに物語が作られている。また,生前の自分を覚えている人が一人もいなくなると死後の世界からも消滅するという設定も,日本の「石仏(いしぼとけ,50 回忌を過ぎた死者の霊)」という風習を感じさせる。日本人は,多分この設定に容易に感情移入できるはずである。

まず,色使いが素晴らしいと思った。キーアイテムとなる花びらの色,花びらでできたあの世とつながる橋,死後の世界の建物の色,死後の世界の立派さも目を見張らされた。脚本もよく練れていて,見事なサプライズがいくつも用意されていた。人はそれぞれ,先祖に対してどのような気持ちを持っているかは違うだろうが,この話に心を動かされない人は少ないのではないかと思う。

ミュージカル仕立てになっている本作において,吹き替え版では,全ての歌曲を吹き替え役の日本人声優が歌っているのだが,それぞれ見事な歌唱なのに感心させられた。アカデミー賞の長編アニメーション賞と主題歌賞を獲得しているので,吹き替えの仕事の中でもトップクラスに困難な仕事だろうと思った。曲の水準も高く,非常に気持ちよく見ることができた。

家族を亡くした経験が多い人ほどこの話には胸を打たれるのではないだろうか。誰か家族とご一緒に鑑賞されることをお薦めしたい。ぼっちで見てしまったのが返す返す残念であった。
(映像5+脚本5+役者5+音楽5+演出5)×4= 100 点。

アラカン