「今こそプリクエルを評価しろ(ああ、こんな日が来るとは)。おっさんはこの悶絶駄作をこう見た」スター・ウォーズ 最後のジェダイ しんざんさんの映画レビュー(感想・評価)
今こそプリクエルを評価しろ(ああ、こんな日が来るとは)。おっさんはこの悶絶駄作をこう見た
「ローグ・ワン」の話からしよう。
正史をリアルタイムで観てきたおっさんとしては、「ローグ・ワン」の在り方は正しくも、やはり「スター・ウォーズ」では決してないもので、その楽しみ方も「スピンオフ」ならではの「いいとこどり」のおまけでしかなかった。
「勝利は、名もなき者の犠牲の上で成り立っている」
そんな誰もが知っていることを、仰々しくやったところで、正史の面白さに拍車がかかることはない。正史はやはり「スカイウォーカー」の話が主軸だからだ。
と同時に、スプンオフでその存在が居なかったように、正史は「ジェダイ」の話である。
製作順としては、ルーク(すなわちルーカス)の父離れ(父親殺し)で成長し、プリクエルで父親がダークサイドに落ちた理由を語ったが、その落ちた理由はパドメとの恋愛や怒りの感情そのものではなく、ジェダイ協議会の鈍感、鈍重、傲慢、判断能力のなさによるものだとははっきりしている。
つまり、ルーカスは父親を殺し、そして許しているのだが、「ジェダイ」については、旧3部作と思いが異なる。
個人的な思いをルークに投影したルーカスにしてみれば、「フォースの覚醒」以降、ルークにははっきり言って出番はない。だが、もう「ルーカス」の作品ではないし、出てしまったのはしょうがない。
だが、出してしまったのなら、それなりの退場する舞台は用意すべきだ。それこそが正史だからだ。
「スター・ウォーズ 最後のジェダイ」
・
・
・
本作、あまりにもひどすぎて、どこから文句を言ってやろうか、とも思ったが、大概のことはほかの人が言っているので、以下の2点にとどめる。
1)ルーカスがプリクエルで描いた「ジェダイ」の「罪と罰」について。
そもそもジェダイの在り方は禁欲的なものであり、当然後継者は「自分(の血)ではない誰か」ということになる。だから、レイが何者だろうが、その意味では間違っていない。
だが、レイは何者ではない誰かであってはいけない。なぜなら、これから量産されるスピンオフが「何物でもない誰か」だからだ。
しかも、ルークはアナキンを許しているのだから、「血」は尊いとちゃんと説明している。
ルークがジェダイの教えを守り抜き、だが、弟子の教育に失敗し、異常に落ち込み、引きこもるコミュ障の童貞ジジイという設定は「ジェダイ」ゆえ。それは分かる。
アナキンがそうではなかったのに反し、ルークが禁欲で童貞で過ごす理由はレイアが妹でショック!さらにソロに盗られたというショック!!ということも当然あるので、万年童貞、という設定もまあ、分からないでもない。「ジェダイの帰還」ではすでに悟りを開いたかのように、ジェダイとして生涯童貞宣言を覚悟した感はあった。
だから、レイはルークの子供ではない、ということで、ルークを「単なる神」にしてしまったことも分からないでもない。
だが、それははっきり言って、正史を見続けたものにとっては、やっぱり悲しいのである。
ファンは、ルークは伝説でも神でもなくていい。ただ童貞でなくてよかったね、とみんな思いたいのだ。
2)大事なことは何一つ語られていない。
帝国の崩壊からファースト・オーダー台頭まで、お前ら何をボケーっとしていたのか?なぜ、ベン・ソロはスノークに闇を見せられたのか?
この辺はルーカスだったら、プリクエルのように多少ダレても、ダサくても、描いたことだろう。プリクエルはちゃんと「スカイウォーカー」の話と「シス」の狡猾さと「ジェダイ」の愚鈍さを描いている。
今こそ、プリクエルを再評価するときだ。
本作、一番面白いところを描かず、何を延々と2時間30分もやっているのか。戦闘シーンはセンスなし。ライトセイバー戦はグダグダ。音楽は前作に引き続き全然ダメダメ。
全くの、容赦なしの駄作。
追記
ルークの前に、ヨーダもしらーっと現れ、無責任に「過去を燃やせ」という。
お前が一番の過去の遺物で諸悪の根源だ。
どうせやるなら、ここはアナキンが出て、息子であるルークの人生の「無為」を嘆き、謝罪をし、ともに消えるようであれば、また深みもあったのだろう。
ラストの2つの夕日とは、アナキンとルーク。
それが沈むというエンディングだったら、ルークのつらい人生に「悲しい」を通り越して、「感動で号泣」になったのに。