「最強映像体験、しかし。」スター・ウォーズ 最後のジェダイ kazutoshiさんの映画レビュー(感想・評価)
最強映像体験、しかし。
新シリーズ2作目となる本作では、新ヒロインレイの修行とダークサイドとの邂逅、老いたルークの葛藤と兄妹の絆、カイロレンの覚醒など、要素はてんこ盛りであるけれど、基本的にストーリーは一事象として反乱軍の逃亡劇に終始していました。
当初から味方の主戦力を削がれ絶望的状況に追い込まれながらも、BB8やフィンのおかげでコミカルな雰囲気を保っていました。
レイア姫のテレキネシス帰還でひと驚きあり、一方惑星オクトーでは老いたルークがレイを徹底的にスルー、飄々とした日常が映りEP5の老いぼれヨーダと重ね合わせさせられます。
そしてシリーズファンとしては世界観への没入から漠然とその神秘性を崇拝すらしていたフォースが、やる気になった風のルークにかなりあっさり定義されます。レイは程なく理解するが、その力の強さと闇への没入にルークが早くも逃亡。
一方フィンの個人活躍ストーリーの分岐にはアジア系新キャラが登場し合流、クロアチアをロケ地とした美しい新星が登場。
このあたりで物語が中盤急激に失速したと私的に感じました。帝国の逆襲に似ているようで似ていない。
ルークはグダグダで何がしたいのか分からない。旧シリーズの好青年ぶりからは考えられない、弟子への不意打ちという昔話をレイとカイロレンのフォースの絆を絡めつつ明らかにしたが、そんなに長々要らない。これがスノークの罠、レイレン共闘の伏線として重要だと言われても、それならばお師匠ルークにはどこかで一貫した態度を示して欲しかった。ムズムズした。
しかし目を離させない、マークハミルとレイ、レンらキャストの魅力は凄かったですね。
そしてカジノの星、映像美が素晴らしいが、ポッと出ローズちゃんのバックストーリーに興味が出ないし、捕らえられて逃亡のくだりは所々魅せられたが冗長かもしれない。セレブ系異星人のビジュアルは嫌いじゃないけれど、そこまで…
同時進行で語られる反乱軍船団でのポーの立ち回りも、後に彼の弱さと仮指揮官の強さを詳らかにする為設けられたのでしょうが、映像としてつまらない。あんな不安そうな顔した指揮官ならそりゃポーさんああするでしょう。
そしてまさかのベネチオデルトロ登場(事前に知らなかった)、フィンらのキャラと相性が良いようであるが、善悪割り切れない濃いキャラとして、実は相対的にフィンをただの真面目若造に見せ、コミカルな部分を消していく。ただ、個人的には好き。このあたりでローズちゃんにも愛着が…少しは湧いてくるはず。
しかし、しかしながらここまでのグダグダはレイとカイロレンの共闘、そして仮指揮官の単独ハイパードライブたいあたりによって勇壮かつ鮮烈に上書きされる。
前者、スノークの犬死は頂けない。何だそれ。(そう言えばファズマは前回に引き続きやはり全く魅力を発せられませんでしたね。恐怖感ゼロで、フェンシングみたいなヒョロイ剣を振り回して余所見で死亡。せっかくなのにフィンが可愛そうだと感じました。)
しかしそんな事はどうでもいい、ー昔の敵との共闘ーなんてジャンプ的展開でベタかもしれないが、オカンを殺せなかったカイロレンやはり光の誘惑(笑)に負けたのか?という希望とともに、青と赤のライトセーバーが並び、5忍衆みたいに武器を差別化した敵どもとぶつかり合う。
映像として本当に胸が熱くなる。師匠と弟子の青い二本のライトセーバーが交わされたEP3と対照的。
レイが無名の人に宿ったフォースの爆発だった、という事実は確かにインパクトに欠けますが全然構いません。
後者、めちゃくちゃカッコいい。これがハリウッド、本気でこういうクールな映像が描けるなんて羨ましい。巨大コズミックチャージみたいな、研ぎ澄まされたエネルギーがスタイリッシュな軍艦を切り裂き、刹那音が止まる、今までのスターウォーズでは見られなかったシーン、ホルド仮指揮官のキャラ裏切りと合わせ鼓動を高めてくれました。
(ローグワンでハンマーヘッドがデストロイヤーに体当たりしてますが、あれハイパードライブ起動してませんでしたっけ?至近距離だと違うのかな。)
ここで巻き返してきます。やはり、莫大なお金をかけた映画がダメダメだなんて事はないんです。
あ、なんかヨーダも出てましたね。
ルークを本筋へ引き戻す役目を果たしていました。旧作のパペット風にチョコチョコ動いて自分勝手にジェダイ古代書を焼いてましたけど、コイツ何してんねん。
そしてクライマックスへ。オンボロスピーダーのモノスキーで白い塩の表層から弾け飛ぶ鮮烈な赤の表現、予告で見てはいたが実際とても美しかった!そして結晶に覆われた地下空間へ続く空中戦。更に男前になったルーク登場。
多少地味なカットもあるが、見応えとしては十分すぎるほど。
ルークがライトセーバーを構えるシーンは鳥肌がたつし、2つの太陽に思いを馳せ死を迎えるシーンは涙が出た。(消え方が不透明度100→0みたいなのは頂けないが)
そして新たなる希望、と言わんばかり、ローズのバックストーリー絡みにフォースを持つ少年が映り劇終。
ムズムズ感はずっとあります。中盤は長く感じてしまいました。しかしながら何と言っても映像美がこれは新しいスターウォーズなんだ!と言わんばかりの説得力、迫力を押し付けて来ますので、無為な抵抗をしなければ娯楽として楽しめます。
しかしその代償に、ブチ切れキャラに突っ走ってしまったカイロレンと声は良いが舐められまくってるハックスを擁するファーストオーダー、パルパティーンやベイダーのようなカリスマが不存在だし、次作で出しても手遅れである点、最早旧作キャラに頼れない反乱軍側では既に最強と化しつつあるレイにどんな試練を与えるのか、フィン達が再組織化する過程は地味すぎやしないかという点など、不安を擁する結果となってしまいましたね。
ストーリーとして前作の終わりから反乱軍の逃亡劇が一つ終わった、それだけの事といえばそれだけの事です。
次作では時間を飛ばして、力を溜めた総力戦クライマックスを念頭に、レイによるジェダイオーダーに代わるフォースライトサイドの復活、カイロレンの壮絶な死など想像は膨らみますが、やはり、この終わり方だと膨らみは小さいです。
ただ前作のキャラへの愛着を増長させるエピソードとしては有りなのかもしれませんね。フィン君とレイちゃんは結ばれないのか、みたいな恋愛面も多少あったりして。
とにかく、今年見た映画の中では、有無を言わさず映像表現の美しさは突出していて、これが娯楽だ、と怒鳴られた思いがしました。
もう一度観に行こうと思います。