「子供向けギャグ・ファンタジー」BFG ビッグ・フレンドリー・ジャイアント 天秤座ルネッサンスさんの映画レビュー(感想・評価)
子供向けギャグ・ファンタジー
原作はよく知らないが、おそらくは子供向けの作品なのであろう。映画が幕を開け物語が進んでくると、その荒唐無稽さに一瞬驚く。というか、ストーリー自体があってないようなもの。上から下へ泡が落ちるジュースでおならを出したり、巨人たちが車で悪ふざけをしたり、突然女王陛下のもとへ出向いたりと、漫画的な展開に一瞬にして飛んで行ってしまう。これはファンタジー?というよりも、ギャグマンガ?とでもいいたいような。つまりは同原作者の「チャーリーとチョコレート工場」のような作品なのだろう。それならそれでいい。しかし何を間違ったか、それをスピルバーグが彼の映像技術と演出技術とを駆使して映画化してしまったため、本来物語が持っているおかしな魅力と、スピルバーグの真っ当なファンタジー性とが食い違って、ちぐはぐな印象になってしまったようだ。ティム・バートンとジョニー・デップでやらせてたらまた意味合いは違っていたかも。緑のおならも女王陛下もシュールなゴシックファンタジーとして魅せ切ったかも知れない。ただスピルバーグはこの題材に真っ当なファンタジーの演出を与えてしまった。物語と演出の完全なる齟齬。これはまるで「フック」(1991)の二の舞?
とは言え映像は夢の世界そのものでキラキラゆらゆらとしてとっても綺麗。こういうところはさすがのスピルバーグ。ただCGとヒロインの少女の間に歴然とした壁を感じたのも事実で、モーションキャプチャで演技をするマーク・ライランスとヒロインを演じたルビー・バーンヒルの間にはっきりと境界線が見えるような感覚。「ジャングル・ブック」を見てしまった今となっては、すっかりCGの目も肥えて、この程度では違和感すら覚えるようになってしまったか・・・なんて。