劇場公開日 2016年12月17日

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「秀悦な原作と演出が完璧に融合」ぼくは明日、昨日のきみとデートする Cディレクターシネオの最新映画レビューさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0秀悦な原作と演出が完璧に融合

2017年2月14日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

知的

三木監督の「ソラニン」や、
「くちびるに歌を」が好きです。
優しい光で紡がれる心情の切なさが、
すっと響いてくる。
そんな温かな視点を持つ監督の、
新作に期待して。

冒頭からいきなり
高寿くんの一目ぼれに、
馴れ馴れしい愛美さん。
妙にリアリティのないふたりだな。
緩やかなカット割りで、
恋人2人視点の日常が
延々と映し出されてる。

柔らかい自然光を多用した
秀悦なライティングに
フイルム感のある暖かさ。
画角も語ってるし
京都のロケーションも効いてる。
映像はさすがだなぁ。

けどこの作品は、
きれいなラブストーリーなんだね。
オチはよくあるパラレルワールドか、
記憶喪失もの?
正直、失敗したと思いました。
タイトルが出る、およそ45分まではね。

不覚にも、
前半の「なにこれ?」は
全て伏線だったんだよ。

そして出会ったことのなかった、
壮大で不可思議なギミックに、
しばし頭の整理がつかない。
思い出が決して共有できない、
愛美さんの心情を察すると、
自然に涙が溢れてくるよ。

視点を変えるという、
映画でならではの手法で、
より深く揺さぶってくるのもずるい。
これ以上書いたら
ネタバレになってしまうから、
この切なさは伝えられないよ。

福士蒼汰くんも小松菜奈さんも、
時間軸が計算された絶妙な演出に、
的確に答えていましたね。
戸惑いに、混乱に、成長に、使命。
繊細な気持ちの揺れ動きが、見事だった。

もしかしたら若年層には、
不思議な物語で終わるかもしれない。
けど誰かを想う大切な時間が、
愛おしくて仕方ない事を知ってる人には、
忘れられない映画になるんじゃないかな。

秀悦な原作と演出が完璧に融合した、
なかなか出会えない傑作です。

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