「目で見、音で感じる戦場映画」ダンケルク 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
目で見、音で感じる戦場映画
クリストファー・ノーラン初の戦争モノで実話モノ。
アメコミ・ヒーローやSFに斬新さやリアリティーをもたらした彼だが、『プライベート・ライアン』のような戦争映画を期待すると肩透かし。
戦争映画にエンタメ性や兵士たちの友情、感動などを求める人には不向き。
ドラマチックな展開も感情を揺さぶる演出もほぼ皆無、説明的な描写も台詞も最低限。
好き嫌い分かれそうな作品だが、あらゆるものを削ぎ落とした仕上がりは、突然ポンと戦場に放り投げ出されたような錯覚に陥る。
圧倒的なまでの臨場感、緊迫感にKO!
まずは、音。
冒頭、市街地の静寂を破る銃撃音。轟音と共に迫り来る敵機。魚雷命中の音響にはドキリとさえした。
耳をつんざくとは、この事。来年のオスカー録音賞・音響効果賞は間違いないだろう。
奇しくも前日レンタルで『この世界の片隅に』を再見したばかりもあって、戦争の“音”の恐ろしさを殊更感じた。
CGを極力使わず、ほとんどを実写で撮影したという話題の映像。
頭上をかすめる戦闘機、浜辺での爆発、沈みゆく艦…これらがほとんど実写だと思うと、やはり圧巻!
でも、それら以上に印象に残ったのは、背景。
寒々とした空、荒れる海…。
どんなにCGが発展しようとも、生身の映像には及ばない。
話の展開は、陸・海・空、それぞれの視点から。
面白いのは、別場所同時刻ではなく、別場所別時刻である事。
陸=1週間、海=1日、空=1時間。
時間軸もバラバラでそれらが交錯して一見複雑にも思えるが、それらが巧みに、見事に相乗して緊迫感を盛り上げる。
不穏を煽るハンス・ジマーの音楽。
役者陣の名アンサンブル。
確かに撤退までが一代作戦として描かれる訳ではないが、救出された際の張り詰めた緊張が解れる安堵感に、ようやくホッと胸撫で下ろした。
まさしく、目で見、音で感じる“戦場映画”。
ギュッと濃縮した、ノーラン印のタイムリミット106分!
専らIMAXでの鑑賞がオススメのようだが、地方の我が映画館ではそんな贅沢なシアターはナシ。
それでも一番大きなスクリーンで迫力を充二分に感じたが、IMAXはこれを上回るのか…!