「IMAXでないと意味のない映画」ダンケルク こまじぇさんの映画レビュー(感想・評価)
IMAXでないと意味のない映画
「戦争映画」ではなく「戦争体験映画」です。極端な言い方をすれば「戦争体験アトラクション」のような映画です。
この作品はクリストファー・ノーラン独特のこだわりに満ちており、IMAXフィルムでの上映を前提(必須)として撮影されているために、IMAXでないと縫値の半分も体験出来ないようです。事実、日本のほとんどの映画館では上下約40%がカットされた「縁付き」上映になります。
私は一度目は、少し遠いIMAXデジタルの映画館で鑑賞し、二回目は近くの通常上映で鑑賞しました。全くと言っていいほど別物でした。
登場人物の台詞はほとんど無く、従ってキャラクターが立つこともありません。名前を呼ぶシーンも民間徴用船の親子くらいで、保管委はスピット・ファイヤーの搭乗員くらいです。
戦争映画なのに、敵側=ドイツ軍は全く登場しません。
陸・空・海で起こる3つのストーリーが順次登場し、最後のクライマックスで1つに統合されるという凝った構成を取るので、油断すると筋書が分からなくなります。
比較するのも変ですが、「脱出・撤退戦争映画」としては、東宝作品「太平洋奇跡の脱出・キスカ」の方が、遥かにハラハラ・ドキドキ、成功した時の高揚感はありましたが、この作品はあくまでも「戦争を体験する映画」なんだと思います。敵国同士の友情とか、騙し合いとか、愛国心と自己愛の相克とか、そんな感情的な部分は一切排除し、そこには絶望的な状況に投げ入れられ、怖れ・慄く若い名もなき兵士たちのリアルな姿があるのみです。