「ただただ戦場に放り込まれる感覚」ダンケルク shironさんの映画レビュー(感想・評価)
ただただ戦場に放り込まれる感覚
ノーラン監督が戦争モノ??
意外だったので、すごく興味がわきました。
私の世代だと、スピルバーグ監督が戦争モノを撮ったときの衝撃が蘇るのですが、
なかでも『プライべート・ライアン』は凄まじい上陸シーンが見所の一つでした。
本作は逆に、陸から船に向かって逃げるので、そのあたりの違いも楽しみ。
…ただ、戦争モノは観る前から心が痛く沈むので、かなりの覚悟を必要とします。
しかも、よりによってIMAX!
IMAXで撮影した映像なのだから、IMAXで観るのが一番なわけですが…ド迫力の映像から逃げられそうになく、正直、観るのが怖かったです。
でも、この歳まで平和に生きてこられた私の、せめてフィクションの戦争ぐらいは見ておかなければいけないという義務感のようなものと、
映画を通してノーラン監督が伝えたいメッセージも気になるので、思い切って応募しました。
幸い、監督の映像への美意識が行き届いているので、グロシーンが無いのが唯一の救い。(^^;;
むしろ戦闘機ごと見る空は美しい。
ただし、緊張感はアトラクションなみ!
死亡フラグ立ちっぱなしの、ものすごいストレスを強いられて、変な汗をかきます。(←更年期のホットフラッシュでは御座いませんww)
砂浜で受ける爆撃は、隠れる場所もなく敵から丸見え。
ただ地面に伏せて、運を天に任せるしかない。
敵機が飛び去った後、起き上がれる者と、起き上がれない者。。。
ストーリーは、陸・海・空の群像劇なのですが、「ん?なんだ?これ」とつまずくような小石があちこちにあって、
徹底的にリアルな映像を追求しながら、この雑なばら撒き方のギャップにハマって、まんまと監督の手の内に。あぁ嫌だ。
戦場へ向かっても、戦争とは全く関係の無いことで命を落としたり。
何度も何度も苦労して、時には姑息な手を使ってでも逃げようとする者がいる一方、助かる者は何もしなくても助かるし。
だからと言って、神目線で戦場の愚かさを描いている風でもなく。。。
ただただ、いろんなシチュエーションの当事者に立たされる感覚です。
とくに民間の遊覧船で救助に向かう親子のパートは、観た人と「あそこのあれは、ああだったのかなぁ?」と語りたくなります。
逃す為に犠牲になる人の多さも衝撃でした。
船の乗組員はもちろん、従軍看護師も。
なかでも印象的だったのは、序盤の土嚢バリケード兵士の複雑な表情。
逃す為の防波堤になる任務って…。と考えさせられました。
そして、トム・ハーディの安定感!!ww
どんな状況に陥っても自暴自棄にならず、任務を遂行して、最後の最後まで的確な処置。
空軍パイロットの鑑でした。