「意外な人間ドラマ」キングコング 髑髏島の巨神 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)
意外な人間ドラマ
予告編を観ていた限りでは、ハリウッドのお気軽なSFものかと思っていたが、別の面がサイドテーマとなっている立体的な作品である。
コングや他のクリーチャーのCG映像は確かに凄くてとても見ごたえがあった。しかしそれ以上に、ベトナム戦争終結時のなんとも言えない空気感が作品の底流に漂っていて、登場人物それぞれのベトナム戦争に対する関わり方の違いから、あちこちに微妙なズレが生じているという、極めてデリケートな設定が、観客を不安にさせ。
それは主役を演じたトム・ヒドルストンの醸し出す雰囲気によるところが大きい。この俳優は、「ハイ・ライズ」で微妙な立場の主人公を見事に演じていたように、複雑な心情を表現することに長けている。ここでもその才能を遺憾なく発揮し、作品を深みのあるものにした。
SFと人間ドラマを上手く融合させた佳作である。
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