「高い評価も納得の良作」ザ・コンサルタント 悶さんの映画レビュー(感想・評価)
高い評価も納得の良作
【鑑賞のきっかけ】
劇場公開時には、その存在に気づいていなかったが、動画配信で高い評価を受けているのを発見し、鑑賞してみることとしました。
【率直な感想】
<これまでにない設定>
ベン・アフレック演じるクリスチャン・ウルフは、会計士を職業としながら、裏の顔は、殺し屋という役どころ。
彼は、自閉症という精神疾患であるというところが、これまでにない設定でした。
その卓越した数的なセンスで、会計士としての仕事をこなしつつ、殺し屋という裏の顔を持つ人物。
自閉症の人物を映画で描く場合には、どちらかと弱い立場、場合によっては、被害者的な立場に立たされていることが多いように思います。
でも、本作品では違います。
自閉症を障害と捉えるのではなく、個性のひとつとして捉え、天才的な数学的センスも自閉症であるために備わった能力と本作品では描写されています。
さらに、殺し屋として、凄腕のスナイパーでもあるのですが、冷徹に標的を捉えるのが得意なのも、もしかすると、自閉症であることから、自分に関心のあることへの集中力が並外れていたためなのかもしれません。
本作品の原題は、The Accountant(会計士)なのですが、なぜ、邦題を「ザ・コンサルタント」としてしまったのでしょうか。
コンサルタントは、会計という緻密な計算を行うというよりも、企業経営の手法などをアドバイスする、コミュニケーション能力を要求される仕事。
自閉症の人物は、他人とのコミュニケーションは得意ではなく、ベン・アフレックも、この主人公を他人との関わりが苦手な人物として演じています。
でも、会計士は、会計という緻密な計算を地道に行うことができる人に向いている(もちろん、コミュニケーション能力があった方が有利でしょうが)。
主人公のウルフは自閉症ではあれけれど、特に「数学」には興味を強く持っていたため、「会計士」の仕事が向いているとして、制作サイドは人物設定をしたのではないかと思っています。
<人物の相関図もなかなかのもの>
金融犯罪取締ネットワーク部局のキング長官という人物が指揮を執りながら、「会計士」の正体を探るというのがサブ・ストーリーなのですが、このキング長官の過去が語られるところから、本作品の脚本の緻密な構成が光り輝いて見えました。
【全体評価】
アクションのことには触れてきませんでしたが、一応の水準はキープしており、ここにこれまでにない設定の主人公が活躍する物語展開は、緻密な脚本に裏付けられて、高い評価を得ているのも納得の一作品でした。