「ちょっとシリアスな娯楽映画として割り切れば」ザ・コンサルタント 天秤座ルネッサンスさんの映画レビュー(感想・評価)
ちょっとシリアスな娯楽映画として割り切れば
前半部分は、なんだか複雑で多面的な物語のように思う。ベン・アフレック主導の物語と、J.K.シモンズら主導の物語と、ジョン・バーンサル主導の物語とが入り組みながら、アフレックの少年時代の回想のほか断片的なエピソードシーンが挿入され、物語は多角的なベクトルで描かれる。そして物語が進み後半に入るとそういった部分が整理されていくのだけれど、それがなんだか少しも心地よくない。事実が明らかになり、伏線が解ければ解けるほど、多面的に見えた物語がただただ平面的に一面的にと変化していくだけなのだ。「あぁ、あのシーンがここで出てくるのか」と一瞬思うだけで、伏線が解ける心地よさはない。
と同時に気づくのは、前半のシーンは決して多面的だったわけではなく、ただただ語り口がゴタついていただけだったということ。実際のところ実に直線的な物語だったと気づく。アフレック、シモンズ、バーンサルが一つの事件に集約されていく安直さというかご都合感も否めない。先が読めてしまうのは悪いことではないけれど、読みの通りに行った時の充足感という点でも至らない。
結局のところ、この映画はサスペンスフルなドラマ性を描こうとしたのだろうか?娯楽映画として描こうとしたのだろうか?自閉症の主人公の人物像の掘り下げやサスペンスの描写はドラマティックなそれ。しかし乱雑に挿入される少年時代の父親からの教育はなんだか少年漫画の修行シーンみたいだし、粗雑なアクションシーンはMARVEL映画のように現実感がない。ちょっとシリアスなエンターテインメント映画だと割り切ればいいのかもしれない。こちらもハッタリに乗ってダマされた気分になって見ればいいのかもしれない。それでもなんだか腑に落ちない気分が残ってしまうような、そんな映画だった。