「英国舞台の格式が生きる」世界一キライなあなたに きりんさんの映画レビュー(感想・評価)
英国舞台の格式が生きる
ヒロインが一生懸命だ。
日本だったら、リメイクするなら、この子は「のん」だろうなぁ。
くじけず めげず、キュートな彼女はノリ・ツッコミの天才だ。
主人公ルーのニットはカラフルでご機嫌だし、そして黄色いストッキングに合わせる靴のコレクションが、超楽しい。
おお、そして劇中「オール・アバウト・マイ・マザー」のポスターも、小道具として光っているではないか。
さてと、
呼吸を整え、気を取り直してレビューせねばなるまい、
事前の情報もネタバレも一切知らずに観てしまった本作。
ヒロインが朗らかであるだけに、結末が重たくて、心が落ちた。
日本でも、「スイスへ行く人たち」のニュースやルポルタージュがちらほらと読まれるようになっている。
「彼ら」「彼女ら」にとって願い通りの旅になったり、当地で思いがけない断念が起こったりだ。「付き添う家族」のご様子も、とてもとても軽く流し読みなど出来ない重厚なレポートになっている。
本作、喉に飲み込む音韻のイギリス英語。田舎娘と貴族の若者。車椅子と介護者。予想としては陳腐なラブストーリーの展開だろう。
しかし、有りがちなお話しではなかったんだなぁ。
だから衝撃が大きいのだ。
実はこの映画の俳優たちすべてが、とんでもない演技の実力派だと思った。ルーの立ち姿も歩く様子もテレビ向きではない舞台俳優のそれだ。口からセリフを発する時のタイミングが素晴らしい。
新時代の、新しいジャンルの物語ではあるし、ひとつのラブ・ストーリーではあるのだが、〆の余韻にまで導かれるこれらすべての道程が、長い舞台芸術の歴史に裏打ちされた=英国演劇界の格の高さを示す。
そしてシェークスピアにまで遡る人間ドラマの手堅さを感じさせてくれるのだ。
父親と母親の凄みには、こちらも黙るしかなかった。
ウィル本人の覚悟にもリスペクトを捧げるしかなかった。
「壁」を保ち続け、深入りは厳然として避けつつも、しかし思いやりも示す・・これは大変に難しいウィルの演技だ。
後日、託された手紙を読むルー。
パリの街かどのカフェでの、笑い泣きだ。
これも、きっと、ハッピーエンドの新しい形なのだろう。
原題が良い。
「ミー・ビフォー・ユー」
こんな辛い目も味わって僕たちは生きて、そして成長していく。
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きりんさん、お力になれたようでうれしいです。今作、未見ですが、「スイスへ行く人たち」の一言で伝わりました。その覚悟を持って、元気な時に観てみたいと思います。


