ハドソン川の奇跡のレビュー・感想・評価
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声と静寂が作る「奇跡」の重厚感。
〇作品全体
対面、電話、無線…本作は様々なダイアログ、人の声で紡がれる物語だ。英雄視されるサリーが中心にいて「奇跡」を創り上げたのは間違いないが、その「奇跡」は人の声で形作られている。
無線での管制塔とのやり取りはそれぞれが最良の策を提案しあい、それでもハドソン川という選択肢しかなかったという「奇跡」への大きな布石になっているし、サリーと連携する副機長・ジェフとは緊迫した空間で横並びとなって機体の状況を声に出して報告する。これも「奇跡」への棋譜といえる。着水後はどうだろう。飛行機の添乗員やフェリーの乗組員の的確な指示出しや励ましの声がなければ155人が生存していたかはわからない。着水後は飛行機から脱出し、翼上で待つという少ないアクションしかない中で、緊張感を作り続けていたのは乗客の声だった。
こうした「奇跡」に至るまでのそれぞれの声を誇張せずに朴訥と紡いでいるからこそ、たどり着いた「奇跡」の真価が心にすんなり入ってくるようで、とても良かった。
物語終盤の公聴会で「Xファクターは関わったすべての人だ」というサリーのセリフがある。正直、このセリフだけを聞いてしまえばごくありふれたセリフのように感じる。「みなさんのおかげです」は現代社会ではありきたりな常套句の一つでしかない。ただ、ここまで実直に様々な声を映し、積み上げていった本作においては、これ以上ない表現方法だと感じた。
本作が素晴らしいのはこれだけではない。それは「声」を彩る「静寂」の演出だ。
本作では劇伴がほとんど流れない。最初に「奇跡」をサリーが回想するシークエンスでは飛行機内では一切劇伴がなく、最初に劇伴が流れるのは病院で上司から155人全員が助かったと聞かされる場面。サリーの緊張の解れに呼応する劇伴が良いし、なにより飛行機内の緊迫感を無音で演出する真っ向勝負な感じが素晴らしい。飛行機内では環境音としてあたりまえに存在するエンジン音。これが止まって聞こえなくなったときの違和感、異常さは無音でなければ伝わらない。この「静寂」という引き算的演出の大胆さがたまらない。
飛行機内での緊迫感をオーケストラで彩るのではなく、華美な装飾から切り離された「静寂」で重厚感を演出する。この演出に痺れる。
本作を見て改めて思った。目をくぎ付けにする、作品の世界に引き込んでくれる作品は音の塩梅が絶妙なのだと。映画は静かすぎても退屈だし、騒がしすぎてもしらけてしまう。本作はその点が「絶妙」であり、作品内にある声と静寂の重たさに浸ることができる重厚な作品だった。
〇カメラワーク
・冒頭のシーン、NTSBからの聞き取りを受けるシーンはカットバック演出が光る。このシーンのほぼすべてのカットにおいてNTSB側とサリー側を同じカメラに収めず、カットバックで対立を表現している。サリー側は不快感を示したりはしているが、会話に互いの状況を打開する決定打はなく、どちらかが声を荒げたりすることもないため、一見対立構造は大きく変わっていないようにみえる。しかし、このカットバックを何度も繰り返すことで、会話が続けば続くほど両側の感情の溝を深めるカット割りになっていた。
NTSB側が席を立つカットは部屋を少し俯瞰気味で映したことでサリー側も映りこんでいるのだが、サリーがすぐにNTSB側から体を背け、ジェフのほうを向く。そうすることでカメラにサリーが背を向ける格好となり、サリーをカメラの外に追いやるような構図になるよう工夫されているのも面白い。
・公聴会でフライトシュミレーターに従事するパイロットを映すカットは、ほぼ全てパイロットの背中側から、カメラを動かさずFIXで撮っている。後ろから撮っているからパイロットたちの表情が見えないうえ、業務上のやり取りしかしないため、ロボットのように映る。カメラが固定されているのもロボット感に拍車をかける。
この演出はちゃんと仕掛けになっていて、その後にあるパイロットの思案時間を考慮した状況でのシミュレーションシーンで発揮される。このシーンで初めてカメラは機長役のパイロットを横から(しかも目元は見えないように口から下を)映す。機長役は「低すぎる」とつぶやく。これにより「低すぎる」というセリフが機長役のパイロット個人から出た感想であること、そして目元を映さないからこそ匿名性が上がり、「一般のパイロットが思う感想であること」を強調することができる。同状況で空港に戻ることが不可能であることをシミュレーションの結果だけでなく、一般的なパイロットから見た視点でも語ることで説得力を増幅させている。伏線的な映像演出が魅せる意味付けの強化…すごく面白くて、上手だなと思ったシーンだった。
〇その他
・副機長のジェフが最初のシーンで半袖のYシャツを着ているのがすごく良いな、と感じる。これはうまく言葉にできないのだけど、サリーが長袖を着ていて、かつ真正面を向いて腰かけている大人な印象を受けるのに対して、半袖で少し姿勢を楽にして座っているジェフからは若さがあふれているように見える。単刀直入に言ってしまえば、その印象が違う様子にサリーとジェフが対立しているのではないか、と感じた。でも実際はそうじゃないとこの後わかるのだけど、その「実際は違っていて、信頼関係がある」ということに喜びというか、温かい気持ちになって、それが良いなと思ったのであった。
アウトサイダー的視点、ここでも健在
前作に続いて英雄と呼ばれた男の心理面を映像に刻んだイーストウッド。96分という上映時間は彼の監督作として最短である。とはいえ、終わりなき地獄を描いた前作とは全く違ったやり方で、今回は一瞬の閃光をあまりに鮮やかな手腕で捉えてみせる。そこには英雄礼賛を持ち出すのではなく、イーストウッドならではのアウトサイダーとしての視点が絶妙な具合に浮かび上がってくる。
“サリー”が闘う相手は調査委員会ではない。最終的に対峙すべきは自分自身であること、自分の中にこそ答えがあることを彼は十分に知っている。映画のかなりの部分を割いて繰り返される飛行シーンで、彼は自分が間違っていなかったか、他に何か方法はなかったのか寝ても覚めても検証し続ける。決して自己弁護に陥らず、自らに対してもアウトサイダー的視点で引き金を引き、答えを求めようとするその姿にこそ、イーストウッド作品の主役に通底する戦い方、孤高の生き方がある。
達人ならではの一筆書き
「過不足なく」というのはこの映画のことを言うのだろう。物語の核はコレだと見極め、余計なものに目をくれず一直線にゴールを見据えて作る。やりたいこと伝えたいことが明確で迷いがない。達人イーストウッドならではのみごとさだと思う。
ただ「なすべきときになすべきことを成した人々の矜持」という美談以上の膨らみが感じられない、と言うとワガママだろうか。
さすがですら!と感心しつつも、ムダな脇道や得体の知れないこだわりが漏れ出た映画の方が記憶や心に残ったりする。物語も演技も演出も立派なだがなにか物足りない。そんな贅沢な葛藤を呼び起こす時間でもあった。
いや、同じ事件に着想を得て、本当にどうしようもない男のどうしようもなさを突き付けるフィクション『フライト』の方が好みというだけかも知れません。96分でこれだけの作品が観られるのだから損はないと思いますが、こんな感想もあるということで。
助かって良かった
2009年1月、NY。
鳥の大群であんなに簡単にエンジンが壊れて
しまうなら、その予防手段に必死に取り組む
必要があるのでは、と感じた。
機長と副機長の冷静沈着な判断によって、
機体トラブルの為、ハドソン河に不時着しつつも
乗客乗員155名全員の命が助かった、という
タイトル通り奇跡のような実話、を元にした
作品。
初めは、全員助けて英雄だー、と持て囃しつつ
時間が経てば、
最寄りの飛行場の滑走路に着陸できた筈だ、
1月の冷たい川に着水して落ちて溺れたり、
寒さ冷たさによる低体温症で命の危険があったり、命のことを考えなかったのか、と。
手のひら返しのように叩いて来て、
事故調査委員会とかで、調べていくとか。
コンピューターによるシュミレーションでは
最初二つの飛行場に着陸成功。
ここで機長たちが物申す。
検討タイム35秒いる。その時間をプラスして、
再度シュミレーション、
二つとも、着陸不可能やぶつかって失敗。
いかに瞬時の判断が素晴らしく、
技能面も申し分なかったか。
機長が脱出誘導の指揮を執り、最後の一人が
機内に残っていないかとしつこく点検して
最後に機体を離れる姿には尊敬するばかり。
また、沿岸警備隊やさまざまな機関が、
時間ロスを無くし急いで、
船やヘリコプターで駆けつける様子も感動。
連絡入って24分で全員救助❗️素晴らしい❗️
ただ、乗客の身になって考えると、普通に、
目的地に着いて当たり前であり、
つくづく飛行機には乗りたくないな、と。
しかし、本事件の9年前、恐ろしい出来事が
起こり、あの際の乗客乗員の気持ちや
ビルで働いていた人々や救助の人々を考えると
尊い命がなんてもったいないことかとも。
改めて考えさせられた。
トム•ハンクスさん、エンドロールに出て来られた機長ご本人によく似ておられた。
安心の名演技。
事後話は知らなかった
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いわゆる「ハドソン川の奇跡」で乗客を救った英雄の機長。
しかし左エンジンは動いていて、空港に帰還できたはずとの疑惑がかかる。
公聴委員会が設置され副機長と共に調査され、シミュレーション実施。
それにより十分に空港帰還できたという結果が出た。
しかしシミュではトラブル後即座に空港に向かっている点を機長が指摘。
実際には判断までに35秒くらいかかったはずで、それを考慮すると失敗した。
さらに左エンジンが発見され、動いていなかったことも証明された。
こうして機長はやっぱり英雄だったと判明。
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劇場で見たわ。いい映画なのに、観客少なかった。平日昼だったからか?
この事件は知ってたけど、後日こんなモメ方していたとは知らなかった。
それに映画用に多少誇張してんだろうけど、公聴委員会のお粗末ぶりがひどい。
何故そんなんで機長らが疑いかけられなアカンねん(場)
しかしトムハンクスはお爺ちゃんの役も違和感なかったなあ。
最初は別人と思ったけど、途中からトムハンクスに見えて来て、
キャスト見たらやっぱりそうやったんで笑ったわ。
仕事に正解はない。
自分の判断は正しかったのか、葛藤する登場人物の緊張感が伝わり手に汗握る。もし一人でも犠牲者が出ていたら、それでも機長は英雄と呼ばれたのだろうか?人間の温かさと狡さの対比が面白い。
映画を通して偉業をクールに再検証するイーストウッド監督
クリント・イーストウッド監督による2017年製作の米国映画。
原題Sully、配給ワーナー・ブラザース映画。
トム・ハンクスによる抑えに抑えた演技とイーストウッド監督による英雄視しないクールな演出で造形された機長というプロフェッショナル像が、物凄くカッコ良くて、拍手!
実在のサレンバーガー機長の準備を重視し、頻回チェックを怠らない用意周到さを、きめ細やかに表現した脚本も秀逸に思えた。やはりというべきか、プロ中のプロは、基本的な細かい部分の積み重ねを長期間行なっており、事故ケース研究や事故調査も行なっていたらしく、成程と納得させられる。そして、軍隊時代の緊急着陸の成功経験の映像の挿入。自分はあの経験があったがために、判断を誤りハドソン川に降りたのか?機長の自問自答が説明無しで映像的に示されて、実に上手い。
機長の判断が適切であったか、それを検証するコンピューター・シュミレーションも利用した国家運輸安全委員会の規模と参加人数の多さにはとても驚かされた。当初、他パイロットによる模擬操縦も含めて安全に空港に戻れたとの結果であったが、人間なら仕方がないロス時間35秒も考慮すると、どのパイロットによっても安全に空港には戻れなかった。
機長糾弾の委員会の姿勢は事実とは異なるらしいが、この検証の流れは事実らしい。大変に映画的な展開であると共に、上手くいったものを結果オーライとせず、敢えて再度科学的に検証しようとする姿勢に大いなる敬意を覚えた。これがあったからこそ、エンジンを完全喪失の旅客機をハドソン川に不時着させた機長の凄さが、より明確になったところがある。
委員会の描写の丁寧さと事実改変を考えると、監督らは、この映画を通して、安易な英雄視は、逆の悪玉扱いも含め厳禁で、この様な検証過程こそを、大切にしていかなければならないと訴えている気もした。それこそが、クリント・イーストウッド監督が、最近ずっと映画製作を通して行ってきていることだから。
蛇足だが、この映画のタイトルで『・・・の奇跡』という邦題をつけた人間の品性や知性を疑ってしまった。クリント・イーストウッドをはじめ製作者は多分、英雄とか奇跡で安易に終わらせてはいけないと考え、この映画を作っただろうに。映画製作の意図をあまりに踏み躙っていて、悲しくなってしまった。作り手のプロ達に最低限の敬意は持つべきと思った。
製作クリント・イーストウッド、フランク・マーシャル、アリン・スチュワート、ティム・ムーア、製作総指揮キップ・ネルソン、ブルース・バーマン。
原作チェズレイ・サレンバーガー、ジェフリー・ザスロー、脚本トッド・コマーニキ(博士と狂人等)。
撮影トム・スターン(MEG ザ・モンスター等)、美術ジェームズ・J・ムラカミ、衣装デボラ・ホッパー、編集ブル・マーレイ、音楽クリスチャン・ジェイコブ、ザ・ティアニー・サットン・バンド。
出演はトム・ハンクス、アーロン・エッカート(「ダークナイト」で検事ハービー・デント)、ローラ・リニー、クリス・バウアー、マイク・オマリー、アンナ・ガン、ジェイミー・シェリダン。
圧倒的機長の人間力の高さを描いた作品。
追憶を辿る系の映画が苦手な人にもおすすめの作品。
というのも、テンポが良い作品です。
私はとりあえずテンポが良い作品、シナリオ構成が良いと思った作品は高評価になってしまいます。
まずタイトル通り、この作品は主人公として描かれる方の人間性が本当に涙が出るほど暖かく強いです。
機長として乗客の身の安全を第一にずっと考えていて、それに伴って行動も真摯に誠実に一つ一つ冷静に、ミスなくこなす様子は見ていて心震わされます。
病院で関係者に「155人全員無事だ」、と主人公のサリーが知らされた時、何度も彼は言葉で「155人、155人か…」と吐露していて、ハドソン川に着水し、時間が流れ、ようやく彼が心の荷を下ろせた瞬間、そのシーンのトムハンクスさんのまさに「安堵」の表情が印象に残っています。
個人的にその中でも飛行機の脱出トランポリン(?)滑り台を機体本体から切り離して飛行機と道連れにならないようにするシーンはなかなか事故の様子を細かく作り込まれていて印象に残っています。
最後の公聴会のシーンで、ブラックボックス?機長と副機長が着陸するまでの音声を公聴するシーンではその様子がノーカットで描かれ、機内で何があったのか、主体で描かれます。追憶を辿る1時間30分ほどの映画、一つ一つの追憶パーツをこの5分前後(?)でばーーっと音声、映像で演出していくため、何が起こって2人がどうしていたのか、わかっているのに目が離せなくなる、トムハンクスさん演じる機長「衝撃に備えて」の重みがすごいシーンでした。
機長と副機長の表情の変化も素晴らしかったです。
美談として描かれた映画といえばそうなのかもしれません。私はこの作品の題材となった、実際の事故を目撃していません。しかしその上で、多少脚色されたかもしれない、けれどその上で作品のシナリオや構成、演出、どれをとっても私には評価の高い作品でした。
おすすめです。
とても良い
映画自体は90分程度と短めであるが、コンパクトに内容がまとまっていて、途中の不時着シーンの演出も見事だった。
また、字幕版だと特典映像を見ることができるため、これから視聴する人は吹き替えより字幕版がオススメ。
真摯であり続けること
"土曜プレミアム" で鑑賞。
実際の映像は当時のニュースで何度も観ました。
奇跡の不時着の後、このようなことが起こっていたとは。
事実はフィクションよりも奇なり。
パイロットとしての経験と冷静な状況判断でハドソン川への不時着を決めたサレンバーガー氏でしたが、国家運輸安全委員会はその判断が誤りだったのではないかと執拗に追求。
事故調のメンバーは書類やコンピュータによるシミュレーション結果を元に、「ああだったのではないか?」「こうだったのではないか?」と後からなんとでも言えるような事柄を並び立てて来ました。サレンバーガー氏は苦悩を深めるばかり。
保険会社の意向が働いていたことは確実です。
乗員乗客全員が生還したにも関わらず、何故ここまで責められないといけないのか。サレンバーガー氏の長年の経験まで否定するような訊問に怒りすら覚えました。
これが事故調査だと言われればそれまでかもしれませんが、事故調の面々に「じゃあそこまで言うんやったら、あんたがやってみろよ」と言ってやりたくなりました。
事故当日のシーンが何度も形を変えて描かれ、サレンバーガー氏自身が何度も事故について検証していました。あの判断は本当に正しかったのか。空港に緊急着陸することが出来たのではないか。繰り返される自問自答。
苦悩の果て、公聴会での逆転劇で溜飲が下がりましたが、自分の成すべきことを責任持って全うし、周囲だけでなく己自身にも真摯に向き合い続け、誠実であろうとしたサレンバーガー氏の勝利を心から讃えたくなりました。
※修正(2024/03/31)
事故の裏に隠された衝撃!商法(詐⚫)
映画説明の抜粋↓
「奇跡と称賛された史上最大の航空機事故に隠された、衝撃の実話を本編ノーカットで地上波放送!」
観た人にしか分からない商法です。
どこのテレビ局か予想してみてください。大体の人は当たります。内容はとにかく引っ張ってるだけです。
そして、残念なことに映画監督も引っ張りすぎて(機長の戦闘機回想シーンのインサートは脈絡がなく特に酷く)話の整合性が取れなくなり後半急いで詰め込みやっつけ仕事になっています。
その証拠に、公聴会で尋問している女性のキャラが、かなり狂っています。(シミュレーション何回したか人的要因があると機長に指摘されてしぶしぶ35秒待機したシミュレーションをして全パターンのフライト失敗して、やられたって顔して、次に用意していた機内音声を公聴会の全員で聴いた後、精査した人達が集まっているはずの会場は静まりかえり、個人的感想ですがシミュレーションしていて機長がいたからこそ乗客乗員は救かったと思っていたと称えます。)
不自然に尋問中に左エンジンが発見され、状態が精査されないまま現場スタッフの見立てのまま伝えられます。実話と言いつつ盛ってます。
映画ワクワクでみた人は、時間返せと思うでしょう。(ただ、下調べを少しした人ならパッケージの段階で変だと気付くでしょう。感動物でもなければ乗客乗員の絆も感じられない暗めの写真で沈みかけの飛行機でハイポーズ空に機長どーんですから。で、雲で隠すように引っ張りサブタイトルを書くと。)
あわや大惨事をどう捉えるか。
イーストウッド監督の作品が大好きだ。
本作も、どの観点で見るかで感想が変わる題材がモチーフ。
NYで離陸後すぐにバードストライクに直面し、NY上空からの落下を短い時間の中で判断してハドソン川に着水し、155名全員の命が助かったサレンバーガー機長の判断を、事故調査委員会はミスや過失がなかったか追求していく。
それと共に、42年間飛んできた経験に、自惚れがあったのではないか、何かが間違っていたのかもしれない、と自問自答していくサレンバーガー機長。
無事着水し全員の無事を確認できたから良いようなものの、そもそも155名の命を危険に晒してしまったのも確かであるし、川に着水という大きなリスクを取ったのも確か。自身の中では最善を尽くしたが、もしかしたら乗客誰かが命を落としていたかも、もしかしたらNYの街中に飛行機が暴走墜落し多くの命を奪っていたかも、あらゆる紙一重だった危険性にうなされ、追い詰められていく。
周りやマスコミ、会う人皆が奇跡だと称えてくれているだけに、機長本人の感想とは乖離が大きく、賞賛に値する行動だったのか、困惑混乱し、また囲んで詰め寄るマスコミに家族も頭を悩ませる。
培ってきた経験や感覚を、208秒の中での判断で発揮したことが、人為的な奇跡なのか、自惚れによる人為的なミスになるのか、難しい判断だが、最後には引き揚げられた壊れたエンジンがサレンバーガー機長の証言を証明し、データやコンピュータが実際の現実とはかけ離れたり想像であると知らしめてくれた。
ただし、演者がトムハンクスな時点で、もう機長そのものが、何をしていてもベストを尽くしているように見えてしまうのがデメリット。駆け出しの副業の会社のサイトが実際より大きく見せているという会話があっても、胡散臭い機長なのかな、という印象には全然ならなかった。もっと善悪どちらにも見えるようなキャストにすれば、もっと見ている側はどちらを信じるべきかを客観的に見られたと思う。飛行機事故調査が題材の他の作品、フライトの方が、個人的には考えさせられた。
でも、作中、「ここ何年かの中でNYに良いニュースがもたらされた、特に飛行機関連では」という台詞があり、その感覚がNY市民のこの着水事故の見方にも、サレンバーガー本人にも大きく影響しているのを感じる。だからこそ事故が題材でありながら、全体を安心して見られるようにという、イーストウッド監督の配慮とトムハンクス主演の効果なのかもしれない。
かつ、サレンバーガー機長が、あわや街に突っ込んでいたらと最悪の事態の想像に襲われる描写は、死者が出なかった結末でこそ奇跡と称えられているが、再びNY市民が9.11のトラウマを思い起こさせられ、多数の犠牲者と深い悲しみに襲われていた可能性を示唆する。
機長が責任感のある人物で、確認も怠っていないこと、副操縦士がハンドブックと照らし合わせながら臨機応変に設備スイッチを操作し機長と連携していること、CA達が最善を乗客に尽くし、注意を怠っていないこと、クルー全員が落ち着いていることがしっかりと描かれていて、実際の方々の名誉を傷つけていないところは良かった。
ただし実際は、操縦官はありえない量の機器チェックリストをこなすようで、イーストウッド本人もご高齢になってきているし、老人でもわかりやすいような内容に落とし込んだと感じた。
余計な発言をせず思慮深いが必要な発言だけし、管制塔とやりとりをしながらも情報を適宜取捨選択し不時着に集中する機長と、操縦交換後はサポートに徹して、目で見て経験したことをもとに機長は正しかったと寄り添い、たまにポロッと面白く場を和ませる副操縦士。名コンビだ。副操縦士役の俳優さんはエリンブロコビッチでシングルマザーのジュリアロバーツをサポートする相手役だった。とても良い配役だと感じた。
【実話】乗客155名全員の命を救出
バードストライクにより、エンジンが故障
その状況の中でハドソン川に着水着陸
機長の冷静な判断により、
乗客155名の命を救った実話物語
勿論、副機長との連携も素晴らしかった
シミュレーションで副機長の発言
「次は暖かい日に」がウケた
エンドロールでは実際の当時の機長たちと
乗客が集まり、再会を祝っていた
飛行機には何度乗っても怖いですが、
時間かかっても新幹線にしようと思った
フライトを連想したが
クリント・イーストウッド作品は、後味の悪い映画が多い。この映画も最後に裏切られるのではないかと心配していた。例えば、機長の体内からアルコールが検出されて、英雄から犯罪者になってしまうとか。それじゃあ、「フライト」と同じになってしまうか。
結局、機長の主張する通りタイミングがポイントとなり、35秒経過後のシュミレーションでは近くの飛行場には無事に着陸できなかったことが証明され、機長のハドソン川着水の判断が正しかったことが証明されるシーンは圧巻で、感動的なエンディングだった。久しぶりにクリント・イーストウッド作品では感動してしまった。
タイトルなし
無事着水するのがラストかと思いきや、着水に至る判断が正しかったのか、調査委員会からの指摘に苛まされるトム・ハンクス機長のストーリー。実話だけに、少し無理に引き延ばそうとしている感が、ありました。
何かに導かれたような人生の使命に感動
ドキュメンタリーと映画が見事に融合した、とても素晴らしい体験だった。
全く無駄なストーリーもないし、過剰な演出もない。
この映画に関わる全ての人にプロフェッショナルの仕事を感じた。
恥ずかしながら、普通ならこの奇跡の事故のドキュメンタリー映像の単品映画なら自分は観ようと思わなかっただろう。
しかし、トムハンクスを主演に置く映画としてつくることによって、こんなにもドキュメンタリーを観たくなる試みを打つとは!!
本当にクリントイーストウッド監督の意欲的な姿勢には自分の発想力が恥ずかしくなるほどに脱帽だし、尊敬します。
結果はわかっているのに、こんなにも冷や汗と安堵の涙を出したのは初めてです。
たったの2時間弱でこんなにも感動させてくれて本当に有り難うございました^_^
緊迫のコックピット
トム・ハンクスの誠実な魅力が光っている作品でした。制服姿がとても似合っていました。
パイロットのサリー(トム・ハンクス)の苦悩する様子が丁寧に描かれており、冒頭から引き込まれ、公聴会でのやり取りなど見応えが有りました。
多くの命を預かるパイロットの重責を考えると、知識、経験、冷静さ、精神的な強さが求められそうですね。
改めて大変な職業だと感じました。
NHK - BSを録画にて鑑賞
アンチ「フライト」
BS/NHKのドキュメント(アナザーストーリー)を観ていたので、感動をもう一度の単純なノリで観たのがいけなかった。
話の本題はその後の運輸安全委員会での厳しい糾弾劇だった。
端から判断ミスの先入観でクルーを圧迫する審議官、途中でデンゼル・ワシントンの「フライト」のいやな後味が蘇り、クリント(クリント・イーストウッド監督)お前もかと叫びたくなった。
耐えてよかった、機長の冷静な判断がデータに裏付けされ容疑は無事晴れた。委員長が最後に副操縦士に意見を求める、「あの状況になったらもう一度同じことをしますか?」ジェフは「今度は7月にしたい」と答えた。
ジョーク好きのクリントならではの演出でした。
英雄なんかじゃない
【ハドソン川の奇跡:おすすめポイント】
1.チェスリー・“サリー”・サレンバーガー役はトム・ハンクスしかあり得ない、本当に素晴らしい名演技!!!
2.チェスリー・“サリー”・サレンバーガー役トム・ハンクスの不安や葛藤シーンがいいなぁ!!
3.実話をここまで再現した監督はじめ、スタッフや本人役が凄すぎる!
【ハドソン川の奇跡:名言名セリフ】
1.チェスリー・“サリー”・サレンバーガー役はトム・ハンクスの名セリフ
→「メーデー メーデー カクタス1549 両エンジン推力喪失」
→「あの状況では不可能だ」
→「君だけは信じてくれ」
→「英雄なんかじゃない」
→「40年の経験が 208秒の決断だけで疑われる」
2.ローリー・サレンバーガー役ローラ・リニーの名セリフ
→「当然よ あなたは皆を救った」
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