「本作は航空機事故の映画です しかし本当は人間の判断を機械的に管理する怖さを告発してもいるのです」ハドソン川の奇跡 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
本作は航空機事故の映画です しかし本当は人間の判断を機械的に管理する怖さを告発してもいるのです
昔、飛行機で出張ばかりしていた時期がありました
ふと気がつけば、CAでもないのに一週間連続で毎日飛行機に乗り続けていたこともあります
序盤の走って飛び乗る三人組みたいなことも二度三度(汗)
ジャンプイン!とトランシーバーで叫ばれて羽田空港をグランドサービスのお姉さんと全力疾走したことを思い出しました
機内に入った途端にドアが閉められて、飛行機が動き出したこともありました
満員の乗客の白い目が痛かった
それだけ飛行機に乗っていると、色々怖いことも何度か経験しました
事故にはならないささいなことです
だからニュースにもならない
ごく小さなこと
CAさんや、空港のグランドサービスさん同士が、小声で何か言い交わして不安そうな表情を一瞬見せてすぐに笑顔に戻るようなこと
でもそれが大事故の一歩手前だったのかも知れなかったのではと生々しく思い出されました
機長、副操縦士の的確な判断、CAさん達、グランド、整備などの大勢のスタッフの献身によって、自分は何事も無くこうして本作を観ることが出来ているのだと改めて思われました
もしかしたら本作のパニック寸前の機内の乗客のような体験をしたかも知れなかったのです
本作の事故は2009年のこと
2001年の911の大惨事の記憶がまだ生々しく残っていた頃です
福知山線の脱線事故は2005年のこと
本作は機長が乗客を救い
福知山線の事故では運転士が100名以上の乗客の命を奪いました
命を預かる仕事の怖さ、重さ
そしてそれを毎日毎日、機械ではない一人の人間が果たしていく
管理する側が人間を機械とみなした時、本作のように英雄を犯罪者のように扱い
そして、人間を機械のようにスケジュールに縛りつけようとした管理をしたとき鉄道事故は起きたのです
ほんの少し、僅か数秒
それが人命にかかわる仕事の人間の重圧
パイロットでなくても、鉄道の運転士でなくとも、あなたの扱うシステムのファイルのたった一文字の間違いで、そら恐ろしいトラブルが起きるかも知れません
そんな時代なのです
だから管理も厳重になり、機械が誤りがないかを管理しているのです
いまならAI が機長の判断は誤っていると言い出すかも知れません
あなたの判断が間違っているとAI が言ってくるかも知れません
本作は航空機事故の映画です
しかし本当は人間の判断を機械的に管理する怖さを告発してもいるのです
本物のエアバスを使い、エキストラにも本人さんが本人役で登場したりしているそうです
特に機内のシーンは迫真でした