「地獄のシスターVSエルヴィス・プレスリー」死霊館 エンフィールド事件 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
地獄のシスターVSエルヴィス・プレスリー
怖かった。あああ怖かった。めっさ怖かったです。
早いけど多分これ、今年No.1のホラーじゃないかしら。
実在の超常現象研究家ウォーレン夫妻が遭遇した
事件を映像化した前作『死霊館』が面白かったので、
同キャスト&監督の今回の続編も楽しみにしていた。
今回はイギリス・エンフィールドのホジソン家で
1977年に実際に起こったとされる事件が題材。現実に
数多くの記録資料が残されている事件なんだそうな。
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さて、前作でひときわ恐ろしい雰囲気を醸し出していたのが
“アナベル人形”だったが、今回はさらに恐ろしい存在が登場。
あ……尼さんが……尼さんが怖えええぇぇぇ!!!
冒頭5分で観客を恐怖の世界へと引き摺り込む地獄のシスター。
なんか真っ昼間でもフツーに廊下に突っ立ってたりするし、
“絵”のシーンはここ数年観た中でも屈指の恐怖シーン。
そもそもこの映画では夜でも昼でもお構い無しに
怪現象が起きるので、観てるこっちは常にビクビク。
一家が隣家に逃げ込む前のシークエンスなんて「まだ
続くのかよ……」と音を上げたくなるくらいの波状攻撃。
だいたいね、フツーは警察が来たら怪現象が止まるのが
お決まりのパターンなのに、この悪霊達はポリスメン
の介入などものともしないアナーキー野郎共なのである。
消防車、逆さ十字、包丁、リモコン、排水管、
回転おもちゃ(ゾーエトロープと言うそうな)
などなど、小道具の使い方もいちいち怖い。
目を離すと危険と分かっている場所を無理やり
画面外へ引き剥がすドSなカメラワークやピンぼけPOV、
ホジソン家全体をワンカットで映す等のカメラも巧み。
また、恐怖演出じゃないが、1970年代の雰囲気もグッドね。
まあ僕はかなりのビビりだが、今回は周囲のお客さん
からも軽く悲鳴が上がるような場面が3、4回はあった。
よく劇場でホラーを観る自分に言わせれば、これはそうそう無い。
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かなり恐怖度高めな本作だが、
同時に本作は家族愛そして夫婦愛のドラマでもある。
ホラー映画に“感動のドラマ”を入れたせいで恐怖も
感動もハンパになった作品は山ほどあるが、本作は違う。
霊障に苦しむ次女ジャネット(演じるマディソン・ウルフが
可愛いし上手い)は、自分を恐れて周囲の人間がどんどん
離れていく孤独に苛まれ、心を閉ざしかけている。
シングルマザーのペギーは苦しい家計に苛立ちを隠せず、
怪現象によってさらなるプレッシャーに晒されるが、
それでも子ども達に精一杯の愛情を注ごうとしている。
ジャネットを助けたいと恐怖に立ち向かう長男や、
母をビスケットで励まそうとする末っ子の優しさも沁みる。
ウォーレン夫妻の絆も重要な要素で、
お互いがお互いを“味方”と呼ぶ信頼関係が素敵だし、
その絆自体がジャネットの希望となる展開も素敵。
まさかこんなに純度の高いホラー映画で……
しかも今さらエルヴィス・プレスリーの歌に……
涙させられるだなんて、僕は思ってもみなかった。
なので、本作の印象に『興奮』を選んだのはミスではない。
心優しい一家やウォーレン夫妻をさんざん苦しめた悪霊
に対して遂に一矢報いるあの怒涛のクライマックスで、
僕は恐怖とは明らかに異なるゾクゾクを覚えたのである。
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鑑賞後にパンフを読んで初めて気付いたのだが、
本作は2時間14分(!)という、心霊ホラーとしては
異例の長尺。これには驚愕した。体感では100分前後
くらいに感じていたし、あくびひとつ出なかったもの。
“へそ曲がり男”がなんだかちょっと可愛かったり、
悪霊が本性を現した後はちょい怖さが減じたりはするが
(怖い人って黙ってる時の方が圧倒的に怖いよね)、
恐怖とドラマをここまで高度に両立させたホラーは滅多にない。
少なくとも、4.0判定を付けた前作『死霊館』以上の出来。
これはもうほぼ満点の4.5判定を差し上げなくては。
<2016.07.09鑑賞>
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余談:
あの人が額縁掴んで走るシーンは、ここだけ
見せられたらたぶん爆笑ものだと思うのだけど、
『呪怨』等がお好きな方なら分かってもらえる
と思うが、恐怖と笑いって紙一重だったりする。
……誰か今年のハロウィンで真似してくれない?
こんにちわ、最新作観られたのですね。
羨ましい。
第1作がTV放送され何の気なしにみたら
怖い、怖い。
ホラー好きと書いてる割りには見逃していて
お恥ずかしい限りです。
ホラー物としては久し振りに痺れたので
最新作も何とかして観に行きたいです。
力の入ったレビュー参考にさせていただきます。