袴田巖 夢の間の世の中
劇場公開日:2016年2月27日
解説
2014年3月に死刑判決の再審開始決定で48年ぶりに釈放された袴田巌さんの日常を追ったドキュメンタリー。1966年6月に静岡県で味噌会社専務一家4人が殺害され、放火された事件の犯人とされ、死刑囚として48年もの獄中生活を送ることとなってしまった袴田さん。再審開始決定により釈放された翌日から袴田さんと姉の秀子さんの何気ない生活をカメラが記録していく。監督は狭山事件を題材にしたドキュメンタリー「SAYAMA みえない手錠をはずすまで」などを手がけた金聖雄。
2015年製作/119分/日本
配給:Kimoon Film
スタッフ・キャスト
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2018年3月31日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
冤罪によって48年間もの間、死刑囚として獄中生活を強いられた袴田巌さんの、釈放後の日常をカメラで捉えた貴重なドキュメンタリー。冤罪の理不尽さを社会正義で持って断罪するという方向の作品ではない、袴田さんと姉の秀子さんの淡々とした生活を中心に、徐々に人間性を回復していく様子を詩的に捉えている。
映画序盤の袴田さんの姿は、死刑囚として48年間も閉じ込められると、人間の尊厳はどこまで破壊されてしまうのかまざまざと見せつけられる。何を話しかけてもきちんと認識できていない。完全に支離滅裂で、彼の心は現実世界にあらず、自らの作り上げた世界に閉じこもっている。入所中は、ずっと独房の中を歩き回る癖があったが、その癖が出所後も抜けない。そんな袴田さんの姿を観て冤罪の残酷さに戦慄する、しかし本作はそこからの袴田さんの回復を追いかける。徐々に回復していく袴田さんの姿に希望を感じる。
2020年4月29日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
黙々と歩き続ける習性が身に着いた、50年近い刑務所生活。いまだ健常な姉との会話は、どこか拙い。妄言もたまにこぼれる。すぐ目の前に常にあった、自分の望まない死の恐怖が彼をそうさせたのだ。ああ、誤った司法は、この人をここまで壊してしまったのか、と心が痛んだ。親族や支援者を含め、会いに訪れる人たちは皆笑顔なのだが、それは釈放された今だからこそ。この人たちだって、ずっと苦しんで戦ってきた人たちなのだなあ、としみじみと見入った。
でっち上げ捜査で捕まって48年。その長い長い時間を奪われることを、あなたは想像できますか?それだけで僕は気が狂いそうだ。袴田さんの足の親指の巻爪が、脳裏から離れない。
『私が長い獄中生活で学ばざるを得なかった「自由」というものは
このような強烈な無念さと一種の眩しさをもっている
私はあらためて自らに質問しつづけている
お前は罪のない身でありながらいつになったら自由を取り戻せるのか』袴田巖
2016年3月16日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
冤罪という重いテーマの映画なのに、なぜか優しく温かく、
笑っていいのかしらと思いながら、笑ってしまう。
ドキュメンタリーって敬遠しがちでしたが、これは思っていたドキュメンタリーとはちょっと違ってて、まるで劇映画のよう。
また観たい作品。
周防正行監督や、香川リカさん、谷川俊太郎さんなどが応援している映画で信頼できると思って観に行きましたが、これは歴史に残る1本。