劇場公開日 2016年12月23日

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「クールにしてハード。ホントに考えさせられる!」アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場 CBさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0クールにしてハード。ホントに考えさせられる!

2017年2月3日
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鑑賞方法:映画館

なかなかハードな映画。
ずっと緊張し続けで席に固まっていた。

誰も悪くないし、誰も間違ってない。だが、現実にひとりの少女の命は奪われてしまう。
撃つか撃たないかという緊迫感がほぼ全編に渡って続くという構成はすごい。そしてそれを全く冗長にしない脚本と演出、アカデミー脚本賞、演出賞、監督賞の候補になるのだろう。
無関係な少女の命を奪うかもしれない作戦を実行する決断は、上へ上へと持ち上げられ、または横へ広げられ続ける。当事者の気持ちもわかる。結局、最終的な判断は、大佐と軍曹という強烈な上下関係がある中での無言の圧力というか、軍人としての阿吽の呼吸というか、共感というかに基づくデータの改竄によって決定している。
目の前の比較的小さな悲劇を防ぐか、ごく近い将来に起きると予想される大きな悲劇を防ぐか、といった判断を、軍人は戦場で都度しているわけだが、それを技術の力によって机上に持って来ることはできても、その判断の質が向上するものではないことを示していて、ほろ苦い映画だ。
究極場面では、民間人を一人でも巻き込む危険があり甚大な被害の確率が50%以上の場合はどんな作戦も実行しないという暗黙のルールを出来上がり、確率計算をする人に負荷が寄るだけで、「確率は65%だが、作戦を優先しよう」といった上位の「犠牲があってもやるんだ」という責任を背負った意思決定が行われるわけではない。これは、射手の「撃っても良いのか?」という疑問や要望に、指示命令系統はどこまで応える必要があるのか、という点も含めて難しい問題そうだ。

戦場という状況の恐ろしさを改めて気付かされつつ、戦場と遠く離れた場所で意思決定と実行が行なわれようとも、関わる人たちの苦悩と悲劇はなんら変わらないのだということ、巷で言われているような「ゲーム感覚での戦争」になっているわけではないんだということを教えてもらった。
民間大臣の「あなたは遠くから決定しただけ」という非難に対して軍人大臣は言う。「私は自爆テロ現場の処理で多くを見てきた。どんな軍人に対しても『お前は参加していない』と言ってはならない」このセリフも重かった。
軍人とは、ほんとうに非日常の極限を要求される職だ。そうした職業が必要という状況は、やはり、理想の姿ではないのだろう。
観ている間はひたすら緊張感、後でいろいろ考えさせられるクールな映画でした。ぜひ、機会を見つけて、鑑賞してみてください。

CB
とみいじょんさんのコメント
2022年3月5日

コメントありがとうございました。

ロシアの暴挙、そしてアスリートのコメントと無力感に襲われます。

でも、ロシア国内でも反戦デモが起こったこと、ロシアの暴挙を後押ししていた感のある中国も牽制に動いたこと、岸田総理大臣のコメント、まだまだ、人類は捨てたものではないなと思います。
最後まで足掻きたいです。

とみいじょん
everglazeさんのコメント
2021年7月1日


軍人が必要な状況は、理想の姿ではない。

仰る通りですね!

everglaze
KEIさんのコメント
2020年11月10日

何ともやるせない気持ちになる映画でしたね。。

KEI