海よりもまだ深くのレビュー・感想・評価
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台詞、表情、間の使い方、どれもが自然で、ドキュメンタリー映画を観ているかのよう
誰一人として演技してないリアル映画。台詞、表情、間の使い方、どれもが自然で、ドキュメンタリー映画を観ているかのような感覚になった。
主演の樹木希林、阿部寛、真木よう子はもちろん、良多の部下、姉の旦那子供、団地の住人、など脇役の演技も自然で無駄がない。変にデフォルメせず、誰もが実際に周りに居そうな人間で親近感を覚えた。特に良多の部下の気怠そうな感じは、今時の新入社員っぽくてそこら中に居そう。
中でも樹木希林と阿部寛の演技は頭ひとつ抜けている。二人の演技が優しくてホッコリ、やり取りをずっと観ていたいくらい。ダメ人間の阿部寛を責めたりせず接する樹木希林に心を打たれた。
俺も将来ダメ人間になる可能性が高いので、樹木希林と阿部寛(良多)のやり取りは、将来の自分と母を重ねて胸が熱くなった。俺がダメ人間になったとしても、良多の母のように受け入れてくれると信じたい。
大きい事件も起こらず淡々としてる映画なのに、飽きずに観られたのは役者陣の演技の力だと思う。キャスティングがしっかりしていれば、派手な演出は必要ない、そう教えてくれる映画だった。
是枝監督らしい作品
まず、是枝監督らしい作品という印象。使う役者も樹木希林、真木よう子などおなじみの顔ぶれや、小林聡美、阿部寛といった「好きそう…」な役者を揃えている感があった。
彼の作品に必ず登場するうだつの上がらない男性。でも、子供に対する愛情だけはあったり、お金にだらしないのに、人情だけはあるような登場人物がいかにも男性の作った作品と思わせる。
「男って言うのは悲しい生き物なんだよ」と言われているような気がしてくる。それに反比例して女性が、いかに現実的で夢のない生き物のように描かれている気持ちにさせられる。その女性に未練を断ち切れないのが男なんだよ。と言いた気な雰囲気が漂っている。
また、主人公の良太の姉に小林聡美、その夫が良太の別れた妻が来るとなると喜ぶ。妻がいても、超美人の義妹が来ると言われると妻の前でも目を輝かせて会いたがる。
男特融のバカさ加減がうまく描かれている。
良太が淡々と「そんなに会いたいっすか、うちの元嫁」という一言に笑えた。
結局は台風の中300円の宝くじ券を家族3人で探すところに冷めて離婚した夫婦であっても、どこか似たもの同志を感じさせ、ほのぼのとした未来を予感させる終わり方だった。
これぞまさしく是枝映画
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小説家で探偵で、ろくでもない金欠の阿部は離婚を経験した。
で、養育費と引き換えに月1で息子に会ってた。
息子を自分の実家に連れてったそんなある日、元嫁の真木が迎えに来たが、
台風で帰れず、一晩を元家族で過ごす。結局何のオチもなくそのまま終了。
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こういう特に何ということのない日常を切り出す是枝映画。
昔はこれがとてもつまらなく感じ、大嫌いだった。
でも最近は人情の機微に関心を持つようになって来たからか、
引きこまれるってほどではないけど、何か心地よさも感じる。
劇場の銀幕でもっと集中して見たらすごく感動できたのかも。
未練タラタラ
タイトルは劇中歌のテレサテンの「別れの予感」の歌詞からとったそうだが、「海より深い・・」と言えば古今東西、母の子への愛として使われる常套句だが家族愛全体を言っているのでしょう。
これまでにもライフワークのように様々な家族の形を映画化してきた是枝監督、今回は離婚してしまった元家族を追っています。離婚大国のアメリカ映画によくありそうなプロット、海外の映画祭の常連でもありますので狙ったのでしょう。
ところが、観ての感想は役者さんの魅力以外は凡庸につきますね。
主人公はギャンブル好きで年金暮らしの母親の金までくすねる非道ぶり、どうしようもない残念な中年男、妻にも愛想を尽かされたものの未練たらしく、うじうじと付きまとう様を延々描くので観ていて辛い。
作家志望だから生活力に欠けているのは仕方ないと思うが、是枝さんのキャラ設定には疑問。
いい年をして倫理観に欠け、自己中心的な性格付けはどうかと思う。多少、リアリティを犠牲にしても爽やかさを感じる阿部さんを描いて欲しかった。
それでも主演が阿部寛さんだから悪い人には思えず救われています、そしてこれまた、母親役が一癖ある樹木希林さん、このご両人の掛け合いがこれまた素晴らしいのでなんとか観ていられました。
最後にかかる主題歌、是枝監督ご指名のハナレグミこと永積 崇の「深呼吸」、この映画の為の書き下ろしだそうだが日本語のイントネーションとは異なる抑揚の個性的な歌い方に違和感がきつく、醒めてしまいました。もちろん、感性は人それぞれですから良い悪いは言えませんがね・・。まあ、是枝作品は才能は別として感性的に私にはピンとこないと言うのが実感でした。
タイトルなし(ネタバレ)
阿部寛はカッコいい役柄と、いわゆるダメ男の両極端な役柄がどちらもハマる珍しい類いの俳優さんですが、これは完全に後者。
全体としては、何度も繰り返し見る度に深まるタイプの作品で、じわり、じわりと静かに進むけど無駄なエピソードが一つもありません。とてもスマートにまとまっています。ハナレグミの歌も作品にぴったり。とにかくキャストが素晴らしく、役者さん達の演技や、深い名ゼリフの数々に思わず唸ってしまうこと必至。
私自身を含め、実際多くの大人たちが、子どもの頃なりたかった大人になれない…少なくとも完璧とは言い難い。
だけど、それでも生きていくんだよな。自分の人生だもんな。そんな風に、情けないところもひっくるめて、自分自身を愛するように愛したくなる映画、という表現が一番近いかもしれません。
作品の終盤、主人公が父親の遺品の硯で墨をする場面が出て来るのですが、この映画のカタルシスと思います。この後場面は切り替わり、電車に揺られながら、主人公が布にくるんだ硯(らしきもの)を手に持っているシーンへと続きます。
鑑賞者はそれを見て「ああ、父親の硯を手放さなかったんだな。この先、彼は何とか自分の人生を腐らずにやっていけそうだな」という予感と共に、台風が去った後の、さっぱりした清々しい雰囲気がちゃんと主人公と重なって物語が終わるので、作中ではダメ男で(ギリ、ダメ男。このまま行ったら転落したでしょう)散々グズグズするわりに、鑑賞後は嫌な気持ちになりません。むしろ晴れやか。
年を重ねた大人にとって、離婚、子どものこと、仕事、お金、年老いていく親のこと、それぞれ所帯をもつ姉弟との微妙な距離感など、暮らしぶりは登場人物たちと多少違ったとしても、身につまされる事は多いかなと思います。こんなはずじゃなかったは誰しも一度は経験するのではないでしょうか。しかし、そんな冴えない、淡々とした、壊れものだらけのガラクタみたいな日常も、残念で情けない大人たちも、どこか愛しく、尊い気持ちにさせてくれる。
「東京物語」は美しくて、心臓から血が出てしまうけど、こちらはたまにクスッと笑えて、最終的に人間賛歌で終わるのがとても良いです。元気になれます。
配役が最高でした。全員バッチリハマってた、全員光ってました。今まであまり気にしたことなかったのですが、橋爪功って上手いなぁと感心してしまいました。
海よりもまだ深く
これというほどに激しいものがあるわけでは無い。
これほどまでに感動があるといわれると無いのかもしれない。
けれども、これほどまでにどこにでもある風景の映画は、そう無いのかもしれないと感じた。
主人公の未練残した男を演じる阿部寛さんが絶妙にいいバランスだったな。
売れない小説家で自分の人生もままならいい生活だけども、自分の周りの人に対しては、優しい男。
それがとても味があった。
そして、樹木希林さんの絶妙なまでのどこにでもいそうなおばあちゃんがまた好きだな。
「幸せって何かを捨てて得るものだと思う。海よりもまだ深く誰かを愛した事ないな」
一見難しくてよく分からんって感じだけど、物語が進むにつれてそういう事か、深いなって思いました。
絶妙なキャラクター設定と、絶妙な演技と、微妙な展開
リョウタのキャラクターは、極端なダメ人間として描かれているが、
一方で、現在より未熟であった頃の自分まで含めると同性として共感できる部分が多く、物語に没入できる大きな要因となっていたと思う。
若くして才能を表彰されたことにより社会に適合するタイミングを失い、妻子と別れた経験を持つ私にとっては特に共感ポイントが多かった。
また、女性の「上書き保存に対する見解」がクリアに描かれているのにも好感を持った。
真木よう子演じる元妻はリョウタに対して苛立ちを募らせるも、文学的なポテンシャルにだけは変わらぬリスペクトを置いている点、一度魅力を感じた部分が全て覆ったわけではなく、子どもを育てる上でこうなってほしいという願望とリョウタの人物像があまりに乖離しているから別れを決断をしたのだという心情が、説明的でなくかつハッキリと描かれていて、女性の「上書き保存」の解釈としては納得感が高かった。
一方、特に何に気づいたわけでも成長したわけでもないリョウタが夜中の公園でふわっといい感じの雰囲気を味わい、ラストギリギリで父親の想いに軽く触れ、少しだけ表情が変わるという結末は、そこまでのストーリーに没頭できていた自分にとってもちょっと物足りなかったし、リョウタに共感しづらい人にとっては、全く納得できない展開だったのではないかと思う。
別れた男女のみでなく、母親や姉まで含めて、人物設定と役者の演技が絶妙で、それだけで作品として楽しめたが、是枝作品を初めてあるいは2〜3作目として鑑賞するにはあまりお勧めできない。
何物にもなれない葛藤
何物にもなれなかった現実とどのように向き合うのかがテーマだと思った。
離婚した夫は、一度文学賞を取った限り目立った功績も無かった。
しかし、元妻と息子には愛情があり、再婚しそうなことに嫉妬していた。
どうにかして、息子の気持ちを取り戻そうとするが、現実は上手く行かない。
しかし、その現実を受け止めながらも生きようとする姿が描かれていた。
リアルな日常を切り取り、感情の交錯を描くのは、さすが是枝裕和監督だな~と感じた。
名台詞の数々
強烈なメッセージはないのだけど、日常のどこにでもある家族、人生をドキュメンタリーのようにリアルに描く是枝作品。こんなはずじゃなかった人生、子供の頃なりたかった自分ではないけど、そうなりたいと思うことが大事、幸せになるためには何かを諦めなくてはならない、男は今を愛するのができない、一言一言が名言でした。今を一生懸命生きる、そして過去にはいつまでも執着しない、それくらい「今」を大事にというのがメッセージとして自分には感じた。
言葉を書き留める
主人公は劇中周りの家族や人から心に響く言葉を幾度となく投げかけられる。
その度にメモを残し、仕事に生かしているが、ラストでは息子に大事な言葉を投げかける側の人となる。
人は何かなりたい自分を思い描き、それを目指して生きることに意味がある。
軽い気持ちで言う言葉は3回繰り返してしまうが、最後は念を押し4回本当だと息子に言う。
そして、樹木希林が言うように人はいつか死ぬのである。生きている間に言葉にして伝える必要がある。
海よりも深く人を愛し、自分を愛することこそ生きる実感が湧く。
是枝監督の映画は娯楽ではない、
惨めでも、情けなくても人生
私は今是枝監督の作品を巡っていて、これは6本目なのだが強いていうなら「歩いても歩いてもと」似た鑑賞感の作品だと思う。母に樹木希林、息子に阿部寛をキャスティングし、決して綺麗事だけではない家族の人間関係を多面的に映像化した。
阿部寛が演じるのは、昔は作家として有名な賞を取って大成したが今は落ちぶれて、ギャンブルが趣味の情けない父役。母役の真木よう子との間には1人の息子がいるが、完全に愛想を尽かされており、養育費も払えないため息子と1ヶ月に1回会うのでさえ渋られている様子。現在も、真木よう子にはもう新しい恋人がいるのだが、そのデート現場をコソコソ隠れて尾行したりなど終始情けない。
でもそんな2人が昔は好きなもの同士だったから今息子の存在があるわけで、、、
この映画のタイトルである「海よりもまだ深く」という歌詞が入ったテレサテンの「別れの予感」という曲が流れるシーンでの樹木希林のセルフがとても良かったので必見です。
卒業式
壊れてしまった夫婦は戻らない。母親の願いもむなしく、かすがいのはずの息子の存在ももはや効果無し。
嵐の一日、この家族が昔の睦まじさを取り戻す。台風一過して、きっと一日前と違う人生を歩むに違いない。家族の卒業式のようだ。
ただ、停滞を抜け新しい生活のスタートであるのが救いだ。
登場人物に出演者がしっかりはまっていて良かった。
団地に親近感
そんなに子供が可愛いなら、ダメな生活からなんとか抜け出すための努力はできないのか、と思ってしまう。別れた夫の母親に会いに行く元妻も現実にはありえないんじゃないかと思う。唯一共感できたのは、団地住まいの生活がすごくリアルだったこと。自分も団地で生まれ育ったから、すごく共感できた。ただ、団地暮らしから抜け出したいというセリフが何度か出てきたけど、団地暮らしってそこまで惨めじゃない。ちょっと偏見が強すぎると思った。
『海よりもまだ深く』(2016)
『海よりもまだ深く』(2016)
離婚や不倫など夫婦崩壊から生じるエピソードやお金の問題など、夏目漱石もそういったテーマが用いられていたが、現代でもどぎつくなりながらいつまでも続いていく話である。そういう事をしない人達のほうが多いはずなのだが。主人公(演:阿部寛)は妻子と別居しているが既に離婚しているのだろうか。規定日に慰謝料や息子と面会で会うが、妻(真木よう子)は怒っていて、3人でお茶もせず、恋人を作ってしまい、遠くでその二人を見て、頭に来ている主人公。男は未練があり、女は怒ってしまって離れようとする。同じ是枝映画の『万引き家族』はまだ観ていないが、主人公のお金の足りない境遇で、おそらくそれに似たような息子の靴を買うシーンがある。小説家だが、それでは暮らせず、探偵事務所に勤めているが、仕事もうまくゆするような方法でピンハネのような入った金を競輪やパチンコにつぎ込んで、うまいことに増やしていたりする。主人公の職業は変わっていると言えば変わっている気味だが、エピソードは細かいところまでリアルに思えたりする。
親と姉の樹木希林と小林聡美のコミカルな感じが救っているのもあるが、阿部の雰囲気のコミカルな面も悲劇の辛さを薄めた感じにはしている。息子役の吉沢太陽の抑制された演技が、夫婦仲の壊れた子供のガラスのような感じが出ている。恋人もいるような妻なのだが、姑や嫂のいる家に少しだけ入ってきて食事をしたりするシーンもあったが。こういう状態でどう修復というのはなっていくものなのか。修復を視点にするのも大事な気がするが、実際は難しいのだろうか。どうしてそうなってしまうのだろう。不安定に陥った家族とは。吉沢と樹木の祖母と孫の会話は泣かせるシーンだ。修復したい男と、怒り続ける女。子供や親は付随しているが、もともとは二人の男女の問題である。これをどう見つめていくかが大事だし、こうした状況を映画で提起するのは意味ある問題提起の方法だと思う。樹木希林が、夫婦仲の壊れた二人に対して、布団を並べて用意するシーンも
深いシーンだ。是枝の色と、山田洋二の色ではまた違う色があるようで、山田映画も思い出してしまったりする。是枝のほうがドライな性格群を用いるようでもある。二人きり部屋に遭遇することになり、阿部が真木に、新しい恋人の事を問いかけるシーンも複雑なものであるが、ここで婚外交渉をする女という空気感の時代性(私は批判するが)が出されている。シングルマザーが異父兄弟をつくるかも知れないという場合についての、未練のある男側の気持ちが出ているが、まるで女のほうは男に対して冷めきってしまっている。だが男女とも子供に対しては愛情があるのだ。ただ、男は自分の家の金のようなものではあるが、母親や姉が管理している実家の金を夜分にこっそり探して利用しようとするあたりが悲しい。そういう面も妻が離れてしまった要因の一つなんだろうか。しかしそれに失敗すると仏壇に線香をあげたりする。樹木と阿部の親子の会話も味がある。しかし、許せないこともあったかも知れないが、女のほうが二夫にまみえずという教育が強ければ、別の分岐点があっただろうにとも思わせる。自由平等の時代にしていったらこういうケースが増えた。この映画では、真木と樹木の嫁姑の阿部の息子との話になりそうになるが、樹木のほうが回避した。そして樹木にしては孫、真木にしては子供のへその緒を、保管していた樹木が真木に渡すシーンになるが、樹木が「なんでこんなことになっちゃったのかねえ」と詠嘆する。真木も不憫な顔をする。
そんなときに、なぜか父と息子は暴風雨の中を公園のトンネルの中に夜を抜け出していて、一緒に煎餅を頬ばり、死んだ父、そして祖父の話をする。息子に父が言う、「まだなれていないけれど、
なるならないではなくて、なろうとして生きているところが大事なんだ」と諭す。元妻が迎えに来る。暴風雨。その中で元夫婦がトンネルの中で会話するシーンは妙なシーンだ。元妻の言い分では、
修復は不可能で新たな恋人(小澤征悦)の元に向かう。ドリンクを買って戻ってきた息子も含まれ、元親子三人の暴風雨の中のトンネルの中の会話。宝くじが風で飛んだらしく、豪雨の中を元夫婦と子供が一緒に探すシーンはなんらかの含蓄であり皮肉なのか。翌朝、天気になって男は女とその子を送るが、別れられるほうが優しいのか、夫も応じ、姑も複雑ながら静かに微笑んで別れる。
月に一度ずつこうして面会交流している様子だ。離婚問題を直視している映画だと思う。せっかくの夫婦が親子が家族が、40代、50代、それ以降となるとさらに辛くなる。どうすればこうならないで済むのかと考えていかねばならない。探偵事務所の後輩の池松壮亮が同じような親が離婚したケースで阿部との会話、「本当に好きならどんな状況でも子供は会いに来る」として、20歳ころにそうしたという話や、阿部と池松の会話が伏線となって、阿部と吉澤の会話に還っていくところも職人の手作りのような感じを受ける。
フェロモンよう子に悶絶
樹木希林さんと監督是枝裕和さんでレンタルした。
是枝作品実はそんなに観てない。見たい見なきゃと
思いながらついつい先延ばしにしてしまう感じだが
私が見た作品を思い出す。幻の光、花よりもなほ、
歩いても歩いても、空気人形、海街diary、
そしてTVドラマで、ゴーイング マイ ホーム。
どの作品も大好き。今回の作品も是枝裕和さん色満載です。池松壮亮さんにリリーフランキーさんに小林聡美さん。もういい表情が声がすべてがいい。見る前に
真木よう子さんには失礼だがこの面子の中では少し落ちるのではないかと思ってましたが、真木よう子さん
最高。さよなら渓谷は本当に良かった、そして真木よう子さんの出演映画・ドラマいつ見ても真木よう子さん私には良い感じにしか見えない。しかしなぜか見る前は大丈夫かなぁ〜と思ってしまう。不思議ですが真木よう子さんだけかもしれない感情が生まれるのです。長々になりましたがこの作品間違いなくオススメ
女優陣が最高。男優陣も間違いないが真木よう子さんの身体に声に仕草に目に心を抜き取られた。
是枝監督はやはり良い監督さんだなぁ〜と思いながら
エンドロールを眺めた。
台風、大好きなの。なんか気持ちが清々する
映画「海よりもまだ深く」(是枝裕和監督)から。
見ず知らずの若者と中高年の会話って、お互いの立場を考えずに、
言いたいことを言うから、面白いことが多い。
幾つになっても定職を持たず、ダラダラ生活を繰り返し、
競馬などのギャンブルに打ち込む中年に向かって、若者が叫ぶ。
「あんたみたいな大人にだけはなりたくないです」
それに対して、中年も負けてはいない。
「言っとくけどな、そんな簡単に、なりたい大人になれると思ったら、
大間違いだぞ」と言い返す。
これは、経験から発せられた言葉として、ニヤッとさせられた。
また「男」に対する女性の視点が妙に引っかかって、メモをした。
「男ってのはさ、なくして初めて愛に気付くんだよ」
「男の人は、すぐ『賞味期限』気にするから」
「なんで男は『今』を愛せないのかね」など・・。
一番メモしたのは、樹木希林さん演じる主人公の母親の台詞。
「友達をつくんなさい」
「そんなもの作ったって、お葬式にでる数が増えるだけですよ」
「こんにゃくは、ゆっくり冷まして、一晩寝かせた方が、
味がしみるのよ、人と同じで」
「便利になったなぁ」「歳をとって体が不便になった分ね」
「台風、大好きなの。なんか気持ちが清々する」
「幸せってのはね、何かを諦めないと手にできないものなのよ」など
さすが、人生を長く生きてきただけあるな、と感じた。
こんな台詞が気になるなんて、私もそろそろ仲間入りだなぁ。
負けるもんかー
初見の感想です。
感受性が強いもので、製作委員会のかたがたに、「君たちこの映画に共感するでしょ、でも人生捨てたものじゃないから。ままならないこともあるけど、幸せ見つけて今を大事に、前を向いて歩こう、ねっねっ」と言われたような気がして、
余計なお世話じゃバカやろう!あたしゃビックになるぜ!ったくよう!
と力が湧いてきました。
いや。ほんとに、実は好きじゃないです。
なんか余計な手垢がつきすぎてというか、是枝監督の「市井の人演出」が心なしかその路線でクドくなってきたような気がしました。
抑圧された場面が続き、台風一過ですっきりするという構成は爽やかなんだけど、これをメジャーでやる意義は…とか考えると、お偉いさんにうまく使われたのではという邪推が生まれ、正直純粋に楽しめませんでした。
女優樹木希林は相変わらず持っていきますが。小林聡美も。
覚えてるよ、忘れないよ。
派手な映像や二転三転するシナリオで惹き付ける映画
というのも当然好きなのだけど、映像も物語もシンプル
なのにスクリーンに釘付けにされる映画ってのが
世の中にはある訳で、それって大予算組んで制作
された映画よりも物凄い事かも知れないと時折思う訳で。
本作もそんな映画。
巨大宇宙船がアメリカ東海岸全域を破壊している間、
こちらはカチカチに凍ったカルピスシャーベットを
スプーンで砕く事に苦心してるてな具合のスケール感。
昨年の同監督作『海街diary』もハデな映画とは
到底言い難いが、本作はさらに小規模だ。
にもかかわらず、上映中こちらの目は釘付けにされてしまう。
それは何故かと考えたら、この映画に登場する人々に
シンパシーを抱かずにはいられないからだと思う。
彼等の行き先が気になってしようがないからだと思う。
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「どうしてこうなっちゃったんだろう?」
色んな人物がそう口にした。
大人になった自分は、もっと立派な人間に、
もっと良い人間になってると思ったのに。
大きな夢を抱く事は誰でも出来るけど、
それを実現できるのはほんの一握り。
大成する人は才能だけでなく、日々の努力を
惜しまぬ精神と運とを兼ね備えた人だったりする。
主人公リョウタのように多少の才能があってもうまく
いかないし、大抵の人はそんな才能すら与えられない。
モーツァルトになれずとも毎日努力さえすれば
サリエリくらいにまでにはなれるかもだが、
『1日1日を大切に』だなんて啓蒙じみた言葉を
何百何千回と聞いてきても、リョウタと同様、
やっぱり流されるままに生きてる日常。
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だがそのことをそんなに深刻に考えなくても、
これこうして僕らは生きている。むしろリョウタの
母のように、下手に執着し過ぎないから生きられる。
「あたしは海よりも深く人を愛したことなんか
ないけどさ、それでも楽しく生きていけるのよ」
そう語った彼女の言葉は真を突いていると思う。
“愛してる”だなんて、そんな大袈裟に言うものでも
思うものでもないのかも知れないし、始終そんな
重い心を抱えていたら、自分が生きてゆけなくなる。
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だけど、
あの母でさえも“楽しく生きて”見えない時があった。
どうしてこんなことになっちゃったのかね?と、
息子の嫁に声を震わせながら語ったあの瞬間だ。
ふだん忘れていても、“愛してる”という気持ちは、
ちょうど塗り重ねられた油絵の具のように、
時々ふっとその顔を覗かせる。
息子の離婚に心を痛める母、
息子の本をほうぼうに自慢していた亡き父、
本の話の時だけほんの僅かに表情の和らぐ妻、
そして、現在進行形で息子を愛するリョウタ。
公園の大ダコ。あの大ダコはあの夜、海の底にいたのだろう。
深さを測れる方法は無いけど、リョウタは息子を深く愛してる。
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けど、ごく当たり前の話、人間はいつか消える。
どれだけ大事に想っていた、大事に想われていたと、
後から気付こうが気付くまいが、人は消える。
もうすぐ私は死ぬだろう。
そんな言葉を、いつも冗談ばかり言っている
親から聞くと、何だかドキッとしてしまう。
それで笑って誤魔化す。バカなこと言うなよと。
当たり前に思えるものが信じられないほどあっさりと
消えてしまう事を、頭の中では誰もが理解している。
だが、それを本気で考える事は無意識に避けてしまう。
だって、それってものすごく怖い事だから。
それでも時にはその事実を痛感させられる時があるのだ。
当たり前のように思っていたものが、自分の前から
消えかけてしまっていることに気付く瞬間があるのだ。
終盤、階上から手を振る母の姿に、目が潤むのは何故だろう。
並んで去っていく妻と子の姿を見つめ続けるのは何故だろう。
この瞬間を目に焼き付けねばと強く願うのは何故だろう。
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日々の生活に流されながらも、
「これは忘れてはいけない瞬間だ」と気付く時がある。
それなら、メモでも何でもいい。心に留めておかなくては。
覚えてるよ、忘れないよ。
優しいエンドロールの歌声に、
僕の覚えている事は、忘れたくない事は、
一体何だろうかと考える。
<2016.05.21鑑賞>
愛すべきダメ男の日常とその先
ほんとに何も起きないと言ったら起きない。台風という一つの気象がほんの少しだけ、主人公と家族を吹き抜けて何かが変わりそうな予感だけして、日常に収斂していく…だけの映画。でもそれが良いのだと思う。
観に行った日はご年配のカップルが多く、団地や家族の中のあるあるエピソードで笑いがたえず、キャストの自然な演技に終始くつろいだ雰囲気に満ちていた。
オープニングのモチーフが後半で出てきたり、物語の組み立ては気持ちよく進む。サイドで進む一件関係なさそうなエピソードも、他の場面に活かされていく。きちんと物語として成り立っている。かと言ってあざとさはなく、味わいはあくまで一筆書きのよう。
そういった意味でも、海街diaryとセットで語られるべき作品、という印象だが、あちらは初の漫画原作、本作は是枝監督オリジナル。監督はこういう私小説的な作品が今の気分なのだろうか。(実のところ海街より先の撮影だったという噂も聞く)
最後に、全体をこれまたさりげなく包み込むハナレグミの音楽、主題歌も沁みます(^^)
優しい映画
海街に比べて話題になってない気がしたんですが、配給が東宝+ギャガからギャガだけになったからでしょうか。
個人的には、刺さった!って感じではなかったですが、海街よりも楽しめました。
昔、地元の小さな映画祭で、ゴザを敷いた公民館で小津安二郎を観た時に、地元のおじちゃんおばちゃんが声を出して笑って観てて、小津映画ってこんなに笑えるんだ!とびっくりしたことがあったんですが、この映画も年配の方が多く、みなさん声を出して笑って観てらして、その時の小津映画の雰囲気を思い出しました。
メインの家族の話もよかったですが、池松壮亮がなぜあそこまでダメな阿部ちゃんに優しいのか、どんな借りがあるのかとか、一瞬だけ出てきた橋爪功の娘とか、物語のはしばしに別の物語が想像できて、もっと見ていたくなりました。
みんな、それぞれに思惑や後悔はあっても、それぞれを大切に思っている、優しい映画だと感じました。
それにしても、別れた夫婦での人生ゲーム、気まずいだろうなあ……(笑)
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