「【捕らわれた部屋でママ/ジョイを支えた、ジャックの無垢な姿に涙溢れる】」ルーム NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【捕らわれた部屋でママ/ジョイを支えた、ジャックの無垢な姿に涙溢れる】
オーストリアでの監禁事件を描いたエマ・ドナヒューの「部屋」が原作だそうだ。
このような事件は数々明らかになっているが、憂鬱な気分になる。が、希望ある映画である筈と思い、鑑賞。
今作の第1章「インサイド」の前半は、捕らわれた母子の得意な限られた空間での日常が描かれる。
ママ/ジョイ(ブリー・ラーソン)は幼子ジャック(ジェイコブ・トレンブレイ)のたった二人の限られた空間(3.3メートル四方の分厚いガラスが天井に嵌められた部屋)で生活する姿が”少し楽し気に”描かれる。
が、時折現れる、”オールド・ニック”の存在にジャックが違和感を覚える様子をジェイコブ・トレンブレイ君(髪が長い)が絶妙に演じる。
物語は第1章の後半、手に汗握る二人の”部屋”からの脱出劇の後の姿を描く第2章「アウトサイド」に引き継がれる。
今作が秀逸なのは、閉塞した空間から脱出した親子を描いて”ハッピーエンド”で終わらない所であることは間違いない。
世間の興味が二人に注がれる中、ママ/ジョイの(監禁中離婚していた)両親のジャックへの接し方が両極端なのも、観ていて切ない。
ママ/ジョイの父:じいじ/ロバートのジャックは可愛いのだが、誘拐犯である父親を思い出し、素直に愛情を示せない場面や、ママ/ジョイの母:ばあば/ナンシーと彼女の新たな連れ合いレオが親身になってジャックと接する姿には涙を禁じ得ない。
あのような衝撃的な事件を受け入れるのに血縁があるほうが阻害になるのかどうかは観客の判断に委ねられるが、何とも切ない。
<ラスト場面でのジャックの”この部屋、縮んじゃったの?こんなに狭かった?”という言葉に涙が溢れた作品>
<2016年4月9日 劇場にて鑑賞>