「監禁7年目、5歳になる息子の父親は犯人。」ルーム lylycoさんの映画レビュー(感想・評価)
監禁7年目、5歳になる息子の父親は犯人。
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この題材なら、エンタメ的に美味しいのは悲惨な監禁生活と、そこからのドラマティックな脱出劇だろう。完全にスリラーの題材だと思う。でも、この作品はそこを目指さない。監禁中の描写も犯人より母子の生活に重点が置かれている。その部屋が世界のすべてだと教えられて育った5歳の子どもを丁寧にリアルに描いていく。
これが後半に効いてくる。脱出を決意した母親は、本当は部屋の外にも世界が広がっていることをわが子に教える。そんなちゃぶ台返しを、子どもは簡単に受け入れられない。当然、脱出後の生活の困難が後半の主題になってくる。だから、脱出までの展開は意外に早い。精神的には、脱出後の方がキツいくらいだった。
それでも、子どもにとってあの「部屋」が母とふたりだけの悪くない思い出になっている感じや、周囲の心ある大人たちに触れて世界を少しずつ受け入れていく様子にはグっときた。あの子役の演技たるや。ちなみに、観終えてから、フリッツル事件について検索してみたんだけど、正直やめておけばよかった。闇が濃すぎる。
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