「背景にあるもの」ルーム ハルさんの映画レビュー(感想・評価)
背景にあるもの
ツラい作品の鑑賞が何故か続くが今作は救いがあってホントによかった、という個人的な感想はともかくとして、とにかく泣ける作品だった。
フィクションだと分かってはいてもジョイとジャック親子の状況を察すると冒頭の5秒くらいで泣けてくる。あの冒頭のシークエンスは秀逸で、原作がそうであったように幼児の視点で「部屋」が語られていって作品の前提を知らなければ愛らしくもあるシーンだ。しかし知っていればその子供によって無垢に語られる「部屋」の異常さが際立ってくるのだ。あれだけで特異な状況やそれまでの経緯、子供の性質まで表現できていたのでとても上手い演出だと思う。息子にジャックと名付けたジョイの想いとかも考えるとね‥
圧巻なのはブリー・ラーソンの演技でジョイという女性の性質を破綻まで含めて演じきったプランの確かさが感じられた。そういう彼女がいたからジャックだけでなくオールド・ニックまでもが真実味をもって存在していたのだと思う。
ちなみに時期設定としては誘拐された当時のままであったと思われるジョイの部屋に「Ok Computer」のポスターがあったので劇中は2005年くらいだろうか。そして彼女の実家はすごくお洒落だったがどういう設定だったかは原作を読むしかないか。
脚本は原作者の草案を監督と二人三脚で練り上げていったということだが、前半と後半で文字通り世界が変わるわけだが、そこをうまく繋げて円環のように仕上げたのは素晴らしい。ただしジャック達に見えている世界はより広くまた厳しくもあるだろうが二人なら大丈夫だろう、そう思わせてくれたことが良かった。
現実の二人については、ブリー・ラーソンは今後が気になる女優になった。そしてジェイコブくんはいわゆる上手い子役像そのものなので将来が心配な気がするけど余計なお世話。