「古くせー"何者"は、"桐島、部活やめるってよ"の続編か?」何者 さぽしゃさんの映画レビュー(感想・評価)
古くせー"何者"は、"桐島、部活やめるってよ"の続編か?
※注1 あ、ドンデン返し映画だと思ってないのでネタバレまーす!
※注2 長文です。
(あらすじ)
"就活を一緒に頑張ろう!"って集まった大学生:拓人(佐藤健)、光太郎(菅田将暉)、瑞月(有村架純)、理香(二階堂ふみ)、隆良(岡田将生)の5人。最初は励まし合っていた彼等だったが、互いの価値観の違いや、自意識、言葉の行き違い、SNSの書き込みなどによって、その関係が変わっていく。
※絶賛コメントではありません。
また、朝井リョウせんせファンの方、閲覧注意です!
すみません。
そうそう、朝井リョウせんせ原作なんですよ。
「桐島、部活やめるってよ」の原作者ですね。
実は本作を観て、映画「桐島、部活やめるってよ」を見直しました!
だって、桐島~は"部活"がキーになってて、本作は"就活"ですもんね。
狭い世界を描いてる点で、共通してる何かがあると思って。
あと、私ちょっと勘違いしてたかも?って思ったんですよ。
いや、桐島~観た当初は、朝井せんせ=映画部の子達かな?って思ったんですよね。
ほら、神木隆之介くんの役ですよ。
関係ないけど、神木くんの眼鏡をあげる仕草が好きでしたー♡
非リア充の神木くん達が、リア充の桐島の取り巻き達に勝つ!神木くんを、朝井せんせだと思ってて、かなり微笑ましく観てました。
でも本作を観て、あれ、違うぞ。と。
うわ!やっべwって、なりました(笑)
何故、やっべって思ったかを、今からお話します。
でも私、バブル後期社会人デビューで、企業から接待受けて「どうぞ来てください!」って言われる時代で、就活で苦労した経験がないんです。
しかも大学も美術系で"個"で生きてる人達が多いので、なんでしょう?友達との距離感が、圧倒的に違うんですよね。
本作は、就活あるある。
もしくは、こんなやついるよねー!
もしくは、お前は俺か!?
な"共感力"に依存する映画なので、そこに乗れなかった私は、とんちんかんな感想になってしまうかもしれません。
お許しください。
主人公は、拓人ですね。
ここ、一番の間違いのように思えますけど……、まあいいです(笑)
冷静な分析屋ってことで、意識高い系の理香と、集団の中で生きたくないクリエイティブ思考の隆良カップルを、寒いって感じで見てるんです。
で、就活に関してもそうとう分析してて、いかにも"内定もらえる新卒者"を演じています。あ、だからこそ、貰えないんですけどね(笑)
そんなの、面接官はお見通しですから。
そして、仲間の中でも"良き就活アドバイザーな自分"を演じています。
もともと拓人って演劇をやってたんですね。
でも、食べていけなわけで、諦めたんです。
しかし、元の仲間は続けている。
舞台のクオリティはさておき、自分で劇団を立ち上げて、月一で公演してる。ま、気になりますよね。
そう、この"演じる"が、本作の大きなテーマではないかと思います。
プロモーションでは、人間の本音と建前、面と裏を描く!つってはりましたけど。
そうじゃなくて、"なりたい自分を演じる自分"と、"本当の自分"の差でしょう?
人間は、夢を見始めた瞬間に不幸になるんですよ。
そこに届かない自分を、嘆き悲しんで。
ただ、本当の自分=裏=闇=人間不信とかいってしまうのは、かなり短絡的だし、優しくない目線だなーと。
人間の心の機微を描けてないなーと、ちょっと残念。
だって、人は嘘をついたり、何かを隠して、取り繕って生きているもんじゃないですか。
ね、朝井せんせ。
個人的に思うんですが、裏がある人間より"バカ正直"と言われる部類の人達の方が怖くないですか?
彼等は空気なんか読まないし、こちらのタイミングなど全く気にせず、企画会議でもこっちの一番の見せ場で「すみません!俺、そういうの、全くわかんないです!」とか言ったりするんですよ。悪気なく。
私は"裏がない人間こそ怖い"と思いますよ。
だって、読めないもん。読むものがないんだから(笑)
なので、フォレストガンプって良い映画ですけど、同時に怖いなぁーって思うんです。
冷静な分析屋で就活アドバイザー的な拓人ですが、別アカウントのツイッターでみんなを批判?してたんですね。
ここ、大きめのBGMでダーン!って、ドラマティックに過去回想シーンが流れ、心の中の声がかたかたとツイートされるんです。
実は別なこと、思っちゃってました!って。
びっくりしました。
いや、ドンデン返しだからじゃないですよ!
"普通のこと"を、オチとか言うんでー(笑)
こんなSNSの使い方、某巨大掲示板ができた2000年前後からみんなやってはりましたよ。
もっというなら、その頃からネット小説の世界では、こんな切り口のお話が沢山転がっていました。
朝井せんせってお若いのに、感覚が古いんですね。
特にSNSをネガティブに描いてるとことか、老齢の作家先生かと思いました。
しかも拓人のツイッター、"闇"というほど辛辣ではありません(笑)
原作は未読なので分かりませんが、朝井せんせって就活で苦労したことも、それで他人を妬んだことも恐らくないんでしょう。もちろん、某プロデューサーも。
悪口の言い方、下手っすよ。
その為、どんでん返ってないです!
「登場人物がつまんないのは、作者がつまんないから」
登場人物って、作者のミニミーですもんね。
あ、いやいや、違います!私じゃないですよ!奥田英朗せんせが仰ってたんですよ。
いや、この分析屋の主人公:拓人に、朝井せんせが透けて見えたんです。
本作のラスト。
主人公は改心して表面的な言葉ではなく、本心を語ろうとします。
うーん。なんというか……。
本心で語る=演じない自分がいいみたいな結論になってて。
そこも違うだろーと。
その結論、あまりにも捻りなしで簡単だな!と。
そんな簡単にまとめんなよ、と。
そもそも人間の心理を、表とか裏とかー、簡単なんですよ。
最近の若者って、こんなに視野狭窄気味なんですかね?
拓人を主人公にしたから、こうなるんですよね。
隆良の視点で、もっと(朝井せんせがちょっと体験した就活を)客観的に桐島~的に俯瞰で描けば、"これが若者のリアル"以外の、もっと深みのあるテーマが生まれたのかも。てか、こんな嫌ミス風味、いらんでしょ?
桐島~、で、ゾンビ映画撮りたい神木くんの役に、教師が言うじゃないですか。
「もっと身の回りのこと書け。恋とか、高校生ならでわなやつ。ゾンビはリアルじゃないから」
みたいな。
ね?ね?
神木君の役は、ゾンビ=高校生活のメタファーとして描こうとした訳ですよね。
高校生活って、そんな生温いもんじゃないから!って。
むしろ、ゾンビがリアルという。
そこまで分かってた朝井せんせが、こんなの"若者のリアル"とか思ってるとしたらがっかりですよ。若者とか、青春とか、言っちゃうの?って。
がっかりですよ!
本作も桐島~と同じく、あの頃の痛い自分を追体験させる。という手法ですが、そこに私の"あの頃"はありませんでした。
ある方だと、楽しめるんですかね?
ただ偉そうに言わせて頂くと、共感できなくても、理解できなくても、説得されてしまうすげー映画って、ありますよねー。
さて、タイトルの疑問です。
"「何者」は、「桐島、部活やめるってよ」の続編か?"です。
桐島~では、高校の人気者:桐島が部活を辞めることで広がる波紋、そこから浮かび上がる生徒達の関係、スクールカースト的なお話でしたね。
私ずっと考えてたんです。劇中に登場しない桐島って、この騒動を見てどんな顔してるのかな?って。
早稲田在学中に史上最年少で"すばる文学賞"を受賞し、映画化され、ベストセラーになり、東宝に入社し、本作の原作で直木賞を受賞し、映画化された、ヒエラルキートップの朝井せんせが透ける拓人を見た時、「あ、こいつが桐島だ!」って思いました。
桐島、上からみんなを見て、こんなふうに分析してたんだ。って。
つまりこの映画、朝井せんせ自身の改心の物語なんですよ!
あ、あれ、強引ですか?
高校時代、みんなを騒がせた人気者:桐島が、大学~就職時に一悶着あって心を入れ替えるの巻!
そう考えれば、更に面白くなるんですよねー。
"桐島、部活やめるってよ"が!
そっちが?
ええ、そっちがです!
だってー、本作の予告とかで流れている「俺達、何者かになれるのか?」の答え、桐島~のラストで出てるじゃん。
あれ、ほんと秀逸なラストですよ。
そんな朝井せんせの頭の中を軽く覗く感じで、2作を見比べることをオススメします。
えっとー、以上です!
いつも、長々とすみません。