「就職戦線異状あり」何者 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
就職戦線異状あり
「桐島、部活やめるってよ。」の原作者×豪華若手実力派共演。
校内ヒエラルキーという斬新な切り口で「桐島~」が鮮烈な青春ドラマになっていただけに、今度は就活を題材にどう見せてくれるか密かに期待していたのだが…
う~む、いまいちだった。
就活という社会の荒波に呑まれながらも自分自身を見出だしていく青春ストーリーにしたかったのか、ルームシェアで集った若者たちの本音がぶつかり合う群像劇にしたかったのか、各々抱く恋模様を描きたかったのか、何を言いたかったのか伝えたかったのかよく分からず。
本音が露となり突然サスペンスチックになったり、度々象徴的に挿入される舞台劇も何もかもシュール。
若者の生活の全てとなっているSNS。
それで知り合ったり、共有し合ったり、今じゃメールで合否の通知が届く!(古い考えの人間なもんで…(^^;)
と同時にそれは、相手の動向をさぐったり、見下しや悪口を吐き出すツール。
ネット上でボロカス言う輩と何ら変わりなく、見ていて不快ですらあった。
さらに言えば、登場人物たちが誰一人魅力無いという事でもある。
佐藤健演じる主人公なんてただのヤな野郎。ファンの方は幻滅したくなければ見ない方がいいかも。
彼らは何に苦悩しているのか。
結局は自分の保身と対人・恋愛関係に悩んでいるだけであって、誰一人就職戦線で本気で戦っていないのである。
劇中で主人公が冷笑していた如く、自分が可愛く、自分が苦悩し頑張っている所をただ見せびらかしていたいだけ。
映画は見て面白かったと言うべきものであると思っているから、なるべく見た映画は褒めるようにしている。
だけど本作は…、合わなかったな。
敢えて良かった点は、
菅田将暉の人懐こい図々しい快演はもはや十八番。
後、中田ヤスタカの主題歌。
自分も就職には大変苦労した身である。
だから本作が良かったら、自分が何者か苦悩する若者たちに、望み通りか否か別として必ず何者にもなれる、というちょっとしたエールじみた言葉で締めようと思っていたんだけど…
この映画は何者にもなれないよ。