「体験する映画か」君の名は。 うそつきかもめさんの映画レビュー(感想・評価)
体験する映画か
日曜日、レイトショーなのに座席は6割がた埋まっていた。
もはや社会現象化したと言えるのだろう。そういう自分も、レビューの異常な評判のよさに惹きつけられて、観に来た。
感想は、「体感する映画。いや体験する映画」か。
とにかく観て欲しい。そして観終わってから感じるであろう、なにかの縁(えにし)とか、運命のつながり。
映画風に表現するなら、組み紐でからまった「誰かとつながっている感じ」を体験して欲しい。おすすめの映画だ。
映画館を一歩でたら、すれ違う人と目が合ったり、歩いている自分の姿が窓に映ったりするだけで、何かの意味を感じてしまう。
確実に、観る前とは違う自分がいる。こんな体験、子供の頃に『スーパーマン』を観て以来か。
日常から切り取った風景も、ちょっと足を伸ばせばどこにでもありそうでいて、極限まで磨き上げられた景色。
日本のどこにも無い。無いから自由にストーリーを飛躍させられる。
でも確実に日本のどこかにある風景。実写では撮れない映画だろう。
新海誠の才能に素直に圧倒された。
新しい夏映画の定番に化けていきそうな新海アニメ。もろ手を挙げて歓迎したい。
========以下ネタバレ========
・残念だったこと
おばあちゃんおんぶはリアリティない。実写だったら、俳優の体力的に断念せざるを得ないシーンだろう。
奥寺先輩は、かなり非現実的なキャラで、長澤まさみも苦労しただろう。もしくは長澤が大根なだけか…全体的に、東京側の登場人物にリアリティが薄かった。瀧のキャラ造型が弱かった。
三葉の周辺は生い立ちまで深く考えられているのに。
三葉が神職である必要があったのか。奇跡を演出するのに、一発で理解できる説得力は生まれるけど。その割りに、神とか生命とかそういう描写が限りなく薄味に仕上げられている。
音楽は、世代の違いだろうか、私には響かなかった。むしろうるさいほどに感じた。
・良かったこと
息をのむほど美しい風景。
市原悦子の説得力はさすが。「結び」の言い伝えは、この作品の重要なキーワードで、あれ以上切ったりつまんだりできない。
展開の面白さ。最後まで綺麗につながっていくお話しの魅力と、誰にでも共感できる説得力。