「見るところの違い」君の名は。 岡部 竜弥さんの映画レビュー(感想・評価)
見るところの違い
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そもそも「セカイ系」の作品は脚本の出来を注視するようなものではないと僕は考えています。
なぜならセカイ系とは主人公の成長やそれに伴う葛藤と何かしらの道理(大抵は超自然的なもの)によって連動した世界を、「主人公の内心」誇張として見るものだと思うからです。
その点で見れば、この「君の名は。」はかなり優れたものと言ってもいいのでは無いのでしょうか。
最も特筆するべきはその演出力と、それによる比喩表現力です。
物語終盤、彗星の事件から時間が経ち東京で生活をする2人がすれ違う電車の中で目が合うシーン。これこそがこの物語を比喩的にかつドラマチックに表現していると思います。
決まった場所、決まった時刻でしか走れない電車という乗り物の中で、天文学的な確率で目があった相手に運命的なものを感じ、後先も考えず衝動的に追いかける。そしてそこからようやくあった2人が1度は通りすぎるけど、やっぱり振り返り相手の名前を尋ねる。「君の名は。」と。
映画の内容からすればとっても小さな奇跡です。
ですが要はこの映画はこのシーンの規模を大きくしたものなんです。
小さな規模の奇跡の比喩を大きな奇跡によって行う。
僕はこの考え方がとても好きです。
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