「流石に☆1ということはないが、大絶賛にはちと疑問。」君の名は。 alalaさんの映画レビュー(感想・評価)
流石に☆1ということはないが、大絶賛にはちと疑問。
所謂「話題になってたから一度は見とかなきゃ」みたいなミーハーな人達で成り立ってる興業かなと感じました。
ちなみに自分も、人からの強い勧めもあり、家族が話題の作品だから観たいと言うのでついでに観た次第。
面白かったかと言われると…人に勧めることはまずないです。見終わった直後は普通に良かったと思いましたが、正直、数時間後の今すでに内容がほぼ思い出せません。
序盤は少しジブリ的な雰囲気を感じましたが、後半はそうでもなく、というか割と中盤にはもうジブリ的雰囲気は絵面だけになってました。ちょっと下品なんだよな…
映画.comの解説によると、『もののけ姫』や『千と千尋の神隠し』等ジブリ作品にも数多く関わってきた作画監督がついているとか。だからかぁ…
先に言っておくけど、自分の中では今作のせいでジブリ(の絵面)にマイナス点入ったからな。
あらすじはもう、皆さん耳にタコができるほど聞いたかもしれませんので、今回はカットで。
[良いと感じた点]
●映像・色彩はとても綺麗で、音楽と映像・ストーリーは非常にマッチしていて、映画を盛り上げていました。特に流星のシーンは美しかった。アニメーションならではの煌めきです。実写のアメリカンCGのビカビカ系の輝きに慣れてる自分には新鮮でした。
●組紐や黄昏時など、身近なちょっとしたものがキーポイントになるよう、作品にうまく組み込まれており、ロマンチックな演出でした。身近な物が誰かと繋がっているという繊細な表現は良いですね。今時、「スマホで上辺だけ繋がってる」みたいなロマンの欠片もない話が多いので…小さな田舎町の神社の跡取り娘という古風な雰囲気を生かし、一昔前の「次はいつ会えるかわからない切なさ」や「いつでも気軽に連絡できるわけではない寂しさ」を現代人にもわかるよう無理なく取り込んだ設定が素晴らしかった。
●一見、成功した映画の主題歌だから売れたように思う人もいるかもしれませんが、個人的には今作のために書き下ろされたというだけあり、映画の雰囲気と非常に合っていて良かったです。自分はファンでも何でもありませんが、単体でも良い歌だと感じました。
ただ、詳しくは下に書きますが、ほぼ全てのこだわりが裏目に出ている感じも否めませんでした。
[気になった点]
●音楽自体はとても良かったが、台詞をかき消す勢いで大音量を出してくるので(しかも歌詞入り)、どうしても台詞・内容に集中できません。良い歌だけど、話に集中できないほどって推し過ぎでは。音量どうにかならんの?
●映像が綺麗と上に書きましたが、人によっては描き込み過ぎと感じると思います。大画面なら綺麗なのかもしれませんが、自分はTVだったため、少なくとも「ちょっとデカい」程度のTV画面では最初は「おぉ~!」と思うものの、30分もすると細か過ぎて目がチラチラしてきます。
美術系、特に油絵なんかに詳しい方は思い当たるかと思いますが、サイズの大きい絵画ほど「離れて見る」ことを目的としているため、近付いてみると実はめちゃくちゃ粗が目立ちます。よくこんなもんが綺麗な絵に見えるな、人間の脳ってテキトーなんだなと初めて見た時は衝撃ですが、実はこれを緻密に描き込むと逆に「ウザったい」感じになるそう。同じことが今作の画面上でも起きており、かなり遠くのビルの窓だの、細ーーい電線だの、いちいち全てを描き込み過ぎて、途中から非常に視界がウルサイと感じました。技術は素晴らしいが、結果話に集中できないのでは本末転倒です。ピクサー・アニメーション・スタジオでは必要以上に丁寧すぎる仕事を「完璧な陰影をつけた1セント硬貨」と呼ぶそうですが、まさにこれをやってしまった感じ。
●『秒速5センチメートル』の時も強く感じましたが、女の子に対する異常な理想?というか…ブラ紐や無意味なパンチラ、胸を揉む、内股走り、三葉が口から出したものを朧が飲む等々、変に性的なニュアンスを感じるシーンが多く、ゲンナリ。監督は特殊な性癖でもあんのか?女性は余計に「ただただ気持ち悪い」と感じる人多いのでは。自分は『秒速~』の時も似たような(そしてもっと強烈な)気持ち悪さを感じ、序盤でギブアップした経験があります。まさかと思い調べたら同じ監督でした。ウワァ無理。気にならない人は全く気にならないと思いますが、これで最初に感じたジブリ的雰囲気は吹き飛びました。
何というか…自分の理想で「女の子はこんな感じのはず!!」という偏見をリアルっぽくすることを追求しすぎたのか、これがリアルと本気で勘違いしているのかわかりませんが、「この子可愛いだろゲヘヘ俺の理想なんだウヘヘ」という製作者側の気持ちが透けて見えるというか(風評被害すげーぞ)。
三葉が自分の好みではないので尚更「ウワァ…」と思ってしまいました。少年時代、現実の女の子が周りにいなかったんですかね、この監督。
●伝えたいことがありすぎたのか、それとも伝えたいことは特にないけど監督の書きたい物語が沢山あって、それを1つの映画に集約してしまったせいなのかわかりませんが、全体的にのっぺりとした印象。
「彗星が落ちて町が消滅」「見知らぬ男女の身体と精神が入れ替わる」「神様の力を借りて3年の時を超えて繋がり合う」「子供たちだけで発電所を爆破・電波ジャックしてまで町を救う」…等々、起こっていることはそれぞれおおごとなのに、今一つ「大変なことが起きた!」という緊迫感が伝わってこない。
そもそも身体が入れ替わった意味は一体?結局、何度か入れ替わっただけで瀧がいつ三葉を好きになったのかもわからない。キッカケははっきりとは描かれておらず、最初は「あの女、余計なことを…!」と恨みがましく言っていたのに、憧れの先輩とのデート帰りに「他に好きな子いるでしょ」と言われるシーンで観客は突然、瀧が先輩から三葉に心変わりしたことを知らされます。ただ数回入れ替わって、名前くらいしか知らん女の子を助けようとわざわざ新聞さかのぼって事件を調べて、有り金叩いて遠くまで旅して、発電所を爆破?電波ジャック?え???何でそこまで思い入れてんの??いつの間にそこまで入れ込んでたの???そこら辺、全然描かれていないので、観客置いてけぼり。
「何か凄いこと起きて、主人公2人が運命の恋に落ちて、何か凄いことして、何か凄いこと起きて、2人は再会!!これぞ運命!!」という、何か凄いことするところを何か凄い感じに作ったら映画できました。という感じ。とりあえず何か凄そうに見える映画を撮りたかったのか?実際売れたし、製作者としてはそれで良いのかもしれませんが。
細かいことはどうでもいい!と思える人は良いですが、個人的には、ファンタジー要素の強い作品は人間性で現実味を出さないと、観客はキャラクターに共感できず、「他人の想像の産物でしかない、現実味のない世界に生きてる設定の興味も現実味もないキャラクターが何かワーキャーやってたなぁ」で終わってしまうと思うのです。
ストーリー自体は少しくらい「観客の想像にお任せします」という部分があっても、それが深みを増してくれるかもしれませんが、キャラクターの心情については「こういうことがあったから、今このキャラはこんな気持ちなんだよ」というのはザックリと、キャラの目線ひとつでも良いのでどこかに差し挟んでくれないと、どのキャラにも感情移入できません。感情移入できない映画は映画ではなく、動く絵画と音楽をボーッと楽しむしか方法がありません。低評価の人達は、ここが引っかかっている人も多いのでは。
(※後日追記)先日テレビで、「本作は監督が何度も試写を重ね、人々が感動するシーンを感動する順に並べた、皆が感動するように作られた作品なんだよ!」と紹介されていました。なるほど、だからのっぺりしてるのか…
話の展開に監督のこだわりが良くも悪くも感じられないというか、上にも書いた通り「何か凄いことが起きて、何か凄いことやって…」をただ纏めて整えただけという印象を受けた理由がやっとわかりました。
つまり、皆が平均的に感動すると思う綺麗なシーンを、皆が平均的に感動するように並べた作品ということですね。
長くなりましたが、総合的には暇な時にレンタルや地上波放送で1回観れば充分という感じです。ただ、映画館で観たらストーリーよりも映像美の力で感動させられたかもしれないので☆2。