「何故ヒットしたのか」君の名は。 soichiさんの映画レビュー(感想・評価)
何故ヒットしたのか
シンゴジラも含めネタばれアリです。
先日、某放送局で何故ここまでヒットしたのか分析していましたが、少し違和感があったので記載します。
自分が何故この映画に感動したのか一言でいうと、3.11後の日本で、絶望(喪失)と再生への祈りを見事に表現している点です。
同時期にヒットしたシンゴジラも同様のテーマを内包していました。
我々日本人は、3.11のように一瞬にして街が消失し、多くの人々が亡くなる絶望をリアルに知っています。
映画では、主人公の三葉が、実は3年前の彗星災害で死んでいたことが明らかになります。
糸守での生活を生き生きと描いていただけに、もう一人の主人公の瀧が、亡くなった糸守の人々の名簿をみるシーンは何とも言えません。
ひとりひとりの人生が、単なる名前の羅列になる現実。
そこから二人が奇跡を起こすのですが、それは希望というより祈りに近いものを感じました。
ジブリの鈴木さんが「希望という病」という表現をしてますが、正にその通りです。
シンゴジラも全く同じで、映画の中でも語られるスクラップ&ビルドが基本構造になってます。
米軍の最新兵器も歯が立たなかったのに、日本の新幹線や在来線が活躍し、笑うシーンなのかもしれませんが、何故か泣けてきて泣き笑いしてました。
2つの映画には共通して、圧倒的な絶望に対する祈りがあり、それに感動したのだと思います。
あり得ないと思いつつも、信じたいのです。
谷川俊太郎の詩に「私が歌う理由は、一匹の子猫。ずぶ濡れで死んでいく一匹の子猫。」という一節があります。
優れた作家は、世界に充満する声なき声を代弁する依り代のような存在だと思うのです。
我々は、作品を通じて顕在化された、その声なき祈りを聴き、感動するのではないでしょうか。
そういう意味でこの2つの作品の類似性は決して偶然ではなく、
今の時代に生まれるべくして生まれ、ヒットするべくしてヒットしたのだと思います。