「50代母が3回見て感じたこと」君の名は。 kmym40さんの映画レビュー(感想・評価)
50代母が3回見て感じたこと
きっかけは近所の同年代の男性から熱く薦められたことでした。
予備知識ゼロでこの作品が新海監督作品デビュー、9月末に見に行きました。
鑑賞中、何度かフラッシュバックに襲われた。
前半は映像と音楽とテンポよく面白い、楽しい。
キラキラした風景に初恋の人とのデートの思い出がよみがえり、あの時は世界が輝いて見えたな、などと楽しく見ていました。
中盤、画面のカラーがダークトーンに変わり、立ち入り禁止の黄色いテープや瓦礫の山を見たとき。
私はこれを知っている。これは3.11だ。
あの日のことを描いているのだ。と思いました。
まっさらな状態で見ていたので確実ではないけれど。
住民を避難させる場面、防災無線のサイレンに鳥肌が立ちました。
その時は「津波てんでんこ」という言葉や津波到達点を伝える石碑が思い出されました。
一度目は想像以上の展開にびっくりして、多くの伏線などは見落としながら終了。
でも、不思議です。なぜ、この映画が頭から離れないのか、何日たっても彗星の落ちるシーンを思い出すと胸つかまれ涙ぐんでしまうのか。
もう一度見たい!とこんなにも思う映画は初めてでした。
映像と音楽がすばらしいので映画館で味わいたいと思うのもありますが、それだけではない、何かがある。
12月に部活が忙しくて見ていない娘と3回目を見に行きました。
住民避難のサイレンのあたり、隣を見ると娘は前のめりで目を見開き、ポカンとして固まって見ていました。
想像以上の展開にびっくりしたと。
「私にも運命の人っているのかな。」などと大人びた口調で話す娘を見て、私なりの思いを娘に話そうと思いました。
新海監督は自然からインスピレーション、癒しを感じ、憧れや敬意をもって作品を作っている。
でも、自然は時には冷たくて厳しいもので3.11ではそれを思い知らされた。
私は彗星の墜ちるシーンに自衛隊機から撮影された幾重に続く大津波の映像が重なる。
星が墜ちる先にもあの津波の行く先にも生きてる人がいるのに、誰にも止められない。思い出すと胸がつまる。
ほんとに人生も明日も何が起こるかわからない世の中だけど、
スパークルの歌詞の中に「こんな世界を二人で~生き抜いていこう」とあって、「生きよう」では弱い。
「生き抜こう」だからね。障害や困難を乗り越えて生きるってことだからね。
でも、一人で生きるって無理だから。
支えあって励ましあって、誰かを思う気持ちはパワーを生む。
瀧くんのみつはに会いたいという思いに突き動かされてご神体にたどりつき、みつはに届いて、みんなを助けたい一心でできるだけのことをして未来に帰っていった。
それを引き継いだみつはも走って走って、途中転んで心折れそうな時に手のひらのメッセージを見て「生きよう!生きたい!」ともう一度走り出したよね。
新海監督は若い人たちにそんな風に精一杯生きることを応援したくて作ったんだなと思う。
私はその思いが伝わってきて感動しているんだと思う。
映画をみた後のラーメン屋さんで熱く語る母に娘はなんと思ったか黙って聞いてました。
こんなこと後にも先にもないことだと思う。
春先までの大ロングランやアカデミー賞の行方も気になる。
もう少しこの映画の余韻に浸れそうです。
新海監督この映画を作ってくださり本当にありがとうございます。