「新海監督の"ガトリング砲"が全ての客層を狙い撃つ!」君の名は。 さぽしゃさんの映画レビュー(感想・評価)
新海監督の"ガトリング砲"が全ての客層を狙い撃つ!
あのー、後半むっちゃ泣いてましたね。
なんでか分かんないけど、泣いてました。
ええ話しやったなぁーって、首をさすりながら思いました(前から3列目しか空いてなかったので)。
「どこかに自分を理解してくれる人がいるなんて幻想だよ」って、2年ほど前に好きだった人に言われましたけど。
いやいや、いるんだって!って。ほら、いるじゃん!ってスクリーンを指さしながら、叫びたかったです。
ただ同時に、新海監督の「狙い澄ました感」が若干匂うなぁとも思ったんです。
と、言いますのは。
"男女入れ替わり"とか"タイムトラベル"とか"一人の人を探し求める"だとか、あと、ネタバレになるので話せませんけど、ファンタジーでSFでラブストーリーで。
あれ?なんだろう?このデジャブ感?って思うんです。
ヒットしたアノ映画の、アレじゃね?
おー!エンタメ、どストライクだな!って。
両手に名前書こうって言ったのに、あれか!って。
あ、観てない方は分かんないですよね。
あのシーン!
まるで剛速球が、額に当たった感じでした。
うわ、すげー真っ直ぐくるなーって。
おばちゃん、まぶしいーよーって。
多分この衝撃で、首がやられたんだと思います(笑)
その後、四日間、激痛で横になれませんでした。
ストーリーが入り組んでるって感想が散見されますけど、私はもの凄く真っ直ぐな作品だと思いましたね。むしろ"どエンタメ"
でも、新海監督の凄いのは、ここからです。
この"どエンタメ"に、「古典文学」とか「伝統」とか「しきたり」とか「絆」とか、所謂「古き良きもの」を足して、映画に何かしら意味を持たせたい層(そう、私達w)もきっちり狙って投げて行く、コントロール力なんです。
もっと言うなら、ジブリではあり得ない、でも「国民的アニメ」にギリギリOKな下ネタを入れて(口噛み酒をネット販売する云々エピソードや、男子、女子入れ替わりのリアクション)、深夜アニメ枠ファン"魔法少女まどか☆マギカ"とか、"ベルセルク"とか、ガチなアニオタへも目配せする凄さ。
この欲張り!
全部、全部、持って行くのか!ってブルブルしました。
「(失礼を承知で申し上げます)ぶははは、観たか駿!」
と、心の中で叫びました。
あと、スマホを使ったシーンとか、新海監督はだいぶ前にこのお話を書かれてるんでしょう?現在を見越したこのストーリーも、凄いですね。
てか106分の尺で、よくこんだけ詰め込んで、よくこんだけ纏めましたね。
新海監督(某プロデューサー)の"ガトリング砲"が、スクリーンから観客めがけてバンバン撃たれてたのが見えましたよ。
もう、全部の層を持って行ってましたもんね。
実は新海監督の「秒速5センチメートル」が、ちょい苦手で。確かに画は綺麗ですけど、登場人物達が携帯小説並に、自分達の心情をいやってほど語り続けるのが息苦しくて。
ほら携帯小説って、登場人物が"自分と彼氏"っていう、もの凄く狭い世界を描いているんですよ。新海作品の、その狭さが苦手でした。
なので、今回。まさかこんなに広く狙って来るとは思わなくて、びっくりです。
しかも、コントロールむっちゃ良いやん。
※追伸
男女入れ替わりって、ひと?二昔前な感じであれば、その所作の違和感で、みんなが引く感じに描かれてたと思いますけど。今は、それが逆に魅力に転じるっていうのが、新しいというか、面白かったですね。
あと、私世代には、「起きたら夢を忘れてる」ってくだり、切なく響きました。
あの時のこと、なんとなくしか覚えてないもの。
ずっと忘れずに、いたいけどね。