「おっさんのファンタジー」君の名は。 ハルさんの映画レビュー(感想・評価)
おっさんのファンタジー
『シング・ストリート』がそうであったようにこの作品も監督が同い年。だからというわけでもないだろうが、映画としてはこわいくらいにすんなり染み入ってくる感じがする。懐古趣味といってもいい今作はアラフォーにとって極めて映画的であるからだろう。
同い年のおっさんが赤い糸で結ばれた運命の人との出会いをけっこう真正面から描くという、それこそ赤面ものの行為をどう評価するべきか‥‥いや泣けたんだけども。新海作品はほとんど知らないしどちらかと言うと避けてきたから、今作が彼の作品群の中で異質であるという評価はなるほどそうかと思う。
なぜそうなったかという説明などはまったくされないまま進んで行くSF的仕掛けだったりまったく響かない楽曲群だったりかなり非現実的な人物描写だったりで苦笑いさせられるのだけども、まあよく知っている国産のアニメ映画的な性質なので受け入れられる。
それでも何故「3年のズレ」という設定にしたのかは考えるだけ無駄なのか?なぜお互い気付かなかったのかは「忘れた」ってことでいいか。この辺は何だか作家の個人的な想いを感じるがまあいい。3つ上にいたのかね‥。
さて、普通に考えたら3年という時間の経過がないと彗星の惨禍について(瀧の)記憶が薄れないという判断はあっただろう。でないと糸守町でピンとくるはずだから‥(バカらしい‥)。でも実際そのようなものだろうし、それを現実に照らすとあの3.11のショックは東京の10代にとって3年で風化するものに違い無いし、他の世代にしても往々にして通じる感覚だろう。だから「それでいいのか?」ていう提示にもなっていると思わなくもない。
そして実は最初から精神だけでなく時間軸も超えて入れ替わっていたからこそ、最後はそれを利用して災害から町を救うということが出来ることになる。しかし口噛み酒がその媒介になるとか凄すぎる。そこは紐で良かったんじゃ‥。
ラストでは彗星落下から9年後の時点ではあの入れ替わりの記憶を失くしているが「どこかで誰かを探している」瀧。それはおそらく三葉も同じだったというのだから気の長い話。端から見ればヤバい二人なんだけど‥純愛というかオカルトなんだけども「会った瞬間にわかる」というのは何だかグッとくる。そしてお互いが次の駅で降りて駆け出してとうとう出会い、それでも「変なヤツと思われたら‥」という不安を振り払って言う「どこかで(会った?)‥」からの「君の名は。」うわあ何て恥ずかしい作品なんだよ。泣けるけど。
ちなみに瀧は律儀なところがあるのでこの時点でも童貞くさい。三葉は違うと思う。もう一回見たくなったな。