「細かい点への疑問を封殺させる映像と演出が圧倒」君の名は。 zhiyangさんの映画レビュー(感想・評価)
細かい点への疑問を封殺させる映像と演出が圧倒
新海誠は『言の葉の庭』の映像美に驚愕した一方、『星を追う子ども』があまり面白くなかったし(そして名作の誉れ高い『秒速5センチメートル』とかは見てない)、RADWIMPSをフィーチャーした今作は何となく悪い意味でポップな印象を受け、正直全く期待していなかった。で、結果としては見事に裏切られた、良い意味で。
映像美は相変わらず圧倒的で、新宿の目まぐるしくごちゃごちゃした街並みも、飛騨の雄大で何となく停滞した雰囲気も、美しいの一言。ただ、今回一番やられたと思ったのは話の展開のミスリードにまんまとはまったこと。予告編で『転校生』よろしく男女の主人公の中身が入れ替わるのは知っていたが、そこに『時をかける少女』な展開が交じってくるとは思わなかった…。入れ替わりは同時代と勝手に思い込んでいたので、糸森町の真実を知ったときはしてやられた!って感じだった。時系列が複雑で、タイムパラドックス的に考えて茶々を入れることもできなくはなさそうだが、見事に内容がこんがらがらずに頭に入ってきた。台詞の言い方が仰々しい気もするが、アニメだしそんなものか。一番心配だったRADWIMPSの音楽は大丈夫だろうかという点は、むしろ良い仕事したなという印象の方が強い。歌入りのところだけはどうしても気になってしまうが、歌が入るタイミングも歌の雰囲気も合ってると思うので、個人的な好みだからどうしようもない。
「また新宿かよ!」「また万葉集かよ!」「また彗星かよ!」と今まで使ってきたモチーフが繰り返し利用されたが、持てるアイデアと好きなモチーフを惜しげもなくつぎ込んで、文句なしなエンターテイメント作品を作ったらこれができたのかもしれないとか思ったり。古典の先生の演出はにくかったですね。