「【アホっぽく、スカして、カッコ良い?】」ヘイトフル・エイト 芥さんの映画レビュー(感想・評価)
【アホっぽく、スカして、カッコ良い?】
結論から言えば、中身を感じなかったです。
長尺でダラダラと物語が進んでいき、キャラクターが伸び伸びと会話劇を繰り広げるのは、今作だけではなくタランティーノ監督作品の特徴と言うべきものであります。
が、今作は他のタランティーノ監督作品と比べ、会話にも物語にも大した深みなど無く、残酷的な描写に加え、登場人物達の醜さを何となく表現した様な作品でありました。
とにかく説明調の台詞が多い事多い事。小説を読んでいるんじゃないんだから、もう少し映像で鑑賞者の理解を得ても良かったのではないかと、素人ながらに思ってしまいました。章ごとに物語を区切り、一旦落ち着ける場面を作ったのは良いですが、そのせいで今作は無駄に間延びしたような構成になっているのでは無いかと思いもします。
肝心の推理シーンは、言う程決定的なミステリーもありませんでしたし、犯人は誰だ?と考察しがいのある内容でも無かったように思えます。全員が全員微妙に怪しいようなキャラクター性だったので、特別こいつが怪しいと思考を巡らせるような場面展開はありませんでした。
しかし、ドメルグ姉弟率いる犯罪集団がロッジを襲撃した際に落ちた飴等の伏線は、真相がわかった後に見ると気持ち良いですね。
タランティーノ監督はキャラクター達の人格や動向を細かく描きたかったのでしょうが、元々薄味のスルメを噛み続けても永遠と味の深みは滲んできません。
キャラクター自体が普遍的で、特段個性のある人物達では無いので、細かく説明した所で奥行なんて出ないでしょう。ただダラダラとした会話劇が繰り広げられ、タランティーノ監督作品の特徴が悪い方向に転じてしまったのでは無いでしょうか。
ただ、タランティーノ監督作品お決まりのラストの残虐なシーンは、不思議とスカッとするものがあり、一種の“馬鹿馬鹿しさ”を憶える良い出来だったと思います。
『レザボア・ドッグス』『パルプ・フィクション』『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』は好きですが、今作は『チャーリー・ブラウン』の様に面白さの走りが悪く、怪我を患ったマラソン選手のようでした。