「成功したから許される、自己満ハリウッド愛」ヘイル、シーザー! Cディレクターシネオの最新映画レビューさんの映画レビュー(感想・評価)
成功したから許される、自己満ハリウッド愛
豪華キャストを贅沢に驕り、
キャストの個性を引き出しながら、
光、色彩トーン、広角ワイドレンズ、美術などにこだわり、
セリフの間が絶妙な演出。
コーエン兄弟のパフォーマンスが、
十分に発揮されています。
でも、物語はゆる〜い、ハリウッドあるある話でした。
しかも、かなりの映画マニアでないと、
意味不明なネタギャグ連発。
劇場がシラッとしてる空気に包まれています。
僕以外は、
クルーニーファンだと思われる2.30代女子が15人ほど。
痛快誘拐サスペンスだと思って、
予告編に裏切られた犠牲者達の、
ため息が聞こえてきそう。
前の女子は、
とうとう中盤で寝てしまったようです(笑)
ええ、コーエンの映画愛は、
ジンジン伝わりましたとも!
劇中でパロディネタにされるのは、
ハリウッド黄金期の名作映画のオマージュの数々と、
1950年代のおかしな時代背景。
ベンハーや十戒、
エスター・ウイリアムズやジーン・ケリー、
落ちぶれた西部劇スターの現代劇トレード。
タレント至上主義からスタッフが虐げられ、
ユニオンが設立までの葛藤。
さらには共産主義の赤狩り…
そこらへんの知識がないと、
さっぱり置いてきぼりになっちゃう。
まぁホントの映画オタクか
60歳以上の’おじいちゃんじゃないと、
大多数の日本人には分からないかも。
さすがの俳優陣は、皆いい仕事してます。
ジョシュ・ブローリンはサイコーですね!
前作のボーダーラインもキレキレでしたけど、
メンインブラック3が頭から離れない(笑)
ジョージ・クルーニーや
スカーレット・ヨハンソンら名優の、
繊細なコメディエンヌ的演技をみてるだけでも、
とりあえず楽しい。
サスペンスでドキドキして、喜劇で笑いたい!
みたいな期待がなければ、
結構いい時間です。
とにかく、
コーエン兄弟が愛おしくてたまらない
ハリウッド黄金時代を、
おちょくりまくってる(笑)
主人公の何でも屋に、バレバレなセットに、
宗教の表現問題に、南部なまりの西部劇スターに、
スキャンダル女優に、ゲイの監督に、
スタジオの管理体制に、燃えやすいフィルム。
あぁそうだったんだろうなぁと、
ニヤニヤしっぱなしだよ。
まあ、元祖オタク監督の
タランティーノもそうだったけど、
興行的にも世の中的にも認められると、
スタジオのお金バカバカ使って、
自分のやりたいことに走るのよ。
クリエーターなら当たり前です。
コーエン兄弟のファンなら、
そういうとこ受け入れて楽しみましょ。
「俺たちは映画が、
インチキなとこも含めて大好きなんだーっ」ていう、
彼ららしいメッセージなんだから。(笑)