劇場公開日 2016年11月12日

  • 予告編を見る

「「悪意」とは」ミュージアム R41さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0「悪意」とは

2024年7月6日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

知的

秀逸なプロットとスピード感あふれる進行 サイコスリラー感満載の作品だった。
サイコパスの犯人 彼の幼少期に起きた両親の惨殺事件
双子の姉がいるという設定も凄いが、その姉が言う「悪意」 それに向き合えるのか死ぬしかないのか? そこまで切羽詰まるように考えていたことが伺える。
つまり犯人の肉体的異常は心の中の悪意によってもたらされてことが臭わされている。
その双子の弟を見続けてきた姉の思い。
あまりにもショッキングな出来事による精神崩壊 肉体異常 異常性快楽 サイコパス
この犯人像の描写が実に巧みで、その設定がショウタにまで受け継がせている点は空恐ろしい余韻を残している。
犯人の姉は、連続猟奇殺人事件を弟の犯行だと薄々気づいていたのだろう。
沢村が訪ねて来た時、脅されたものの割と素直にカルテを渡したのは、沢村に感じる狂気に弟を殺してほしい気持ちを託したのだと思った。
その後警察が訪ねてきてもいい加減な態度で接したのは、弟が逮捕されれば死ぬまで彼が苦しまなければならないと思ったからだろう。
結果、姉自信が手を下すことになったのは、運命的だと決意したのか。
犯人は最後に3つの選択肢があるなどと言ったが、それは犯人側の勝手な思いで、冷凍庫の中の二人の頭部を見た沢村の絶望を考えれば、拳銃自殺もあったように思う。あの絶望感を味わえば自殺するという選択肢は存在したはずだ。
しかし絶妙のタイミングで現れた犯人を見て、沢村の自殺という思考は跡形もなくなった。
このシーンで、割とすぐに二人が生きている映像が差し込まれるが、このシーンはカエル仮面を被せられた妻を見抜くところまで引っ張ってもよかったのかなと思った。
連続猟奇殺人事件 = 「セヴン」
作家はここに発想があったのだろうか?
サイコパスという言葉だけで人物像を作らず、細部まで徹底した犯人像を作り上げている。
特に秀逸だったのが、沢村が犯人にたどり着く過程と、警察が女医の言葉から過去の事件にたどり着く過程に違いがあり、それが事件の奥行きを深くしている点だ。
そして女医の心理描写を描きながらも忍ばせていることで視聴者に考えさせている。
そして最後は家族仲良く運動会… そこに映るショウタのかゆみ つまりショウタの中に起きてしまった「悪意」
事件後を嗅ぎまわる記者 彼は裁判員が冤罪を起こしたことを調査している。
それが一連の連続猟奇殺人事件を引き起こしたと考えている。
それは至極当然のことだが、人を裁く カエル男にしても女医にしても、警察も検察も裁判官も、もちろん記者も すべて人を裁こうとする。
これそのものが人間の「悪意」なのかもしれない。
ここまで深く現代社会をえぐりつつ、悪意というのは人の心に伝染するのではないかと問題を投げかけている。
エンタメとしても素晴らしい作品だった。

R41