劇場公開日 2016年2月27日

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「今年の自己ベスト10に入る作品かな?」偉大なるマルグリット Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5今年の自己ベスト10に入る作品かな?

2016年4月2日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

悲しい

楽しい

これこそ、映画だ!大いに腹を抱えて笑って、そしてその後、ホロリと泣ける。
映画を観た後は、人生について考える。
愛について語り合う事が出来る作品、これぞ映画の楽しみです!

実在した歌手にヒントを得て創作された作品だと言うけれど、これが例えフィクションであろうとも、観ていて観客を明るく幸せな気持ちにさせると同時に、ヒロインの真摯な生き様とその行動力と勇気に心酔出来る秀作だ。

この映画のヒロインマルグリットとは、有り余る金と貴族の夫と言う名誉も持ち、物語の描かれている1910代の世の中にあっては、当時持てる物の全てを持っていた筈の理想のヒロインだ。
自分の大好きな音楽を利用して、サロンコンサートを日々行い、戦災チャリティーをする事で、社会参加も積極的に行い、当時の上流階級の女性の中に於いては、決して他に類をみない、まるで夢のような理想の幸せな人生を生きていたように見える。
だが、現実の彼女の気持ちは、世間の羨望とは真逆で、孤独と苦しみ人生と言うヒロインの葛藤が克明に描かれていて本作は素晴らしい展開だった。
映画の始まりから終わりまで彼女の陰鬱な表情を捉えている事も印象的だった。

そして映画は、彼女が最も愛し、最も人生に捧げている全ての愛の対象である夫と音楽の才能と言う彼女にとり最も必要不可欠な二つの存在に限って、手に入らない運命にある。
ここに観客で有る私達一般庶民の悩みや、葛藤がピタリと彼女の苦しさと重なる。
マルグリット自身はだが、決して尻込みをせずに、むしろ徐々に大胆に先へ先へとその手を伸ばして行くのだ。彼女自身がその事が最も困難な道だと知りながらも、自己の人生で一番大切な愛を得る為の探求を諦める事はない。その真摯な姿勢が痛いのだが、滑稽な彼女の奇声として表現される事で面白、可笑しく作品として笑える様に創られている。

丁度時代は、劇中でも登場したチャップリンの無声映画全盛時だが、かつてチャップリンは「人生はクローズアップで観たら悲劇だが、ロングで引いて観たら喜劇だ」と名言した。
ヒロインがいくら、生粋の音痴でもこれ程の酷い音痴に本人が些かも気が付かないと言う事はない。
彼女はそれを知りつつも尚、自己の大切な存在を得る為に挑んで行ったのだ。
これこそ、本当の喜劇で有り、悲劇ではなかろうか?

だが、人々は彼女のそんな生き様に影響を受けて変化して行くのだから!
マルグリットの人生に乾杯だ!
彼女の人生に喝采を送りたい!
始まりは若き画家のキリルと新聞記者のボーモンは彼女を利用しようと擦り寄るが、しかし、徐々に彼女の一途な生き方に心を奪われていくボーモンの姿に観客は自分を重ね合わせる事だろう!
ハリウッド映画と違い、フランス映画は、やっぱり琴線に触れる巧い映画が有るものだ!

ryuu topiann