「できることは信じ続けることだけ。」太陽のめざめ だいずさんの映画レビュー(感想・評価)
できることは信じ続けることだけ。
なかなかに良かったです。
マロニーは、一生懸命支えてくれるおとなをなんどもなんどもなんども裏切ります。
私などは忍耐力もないので、途中でさじを投げたかもしれません。妊婦への暴行が特にきつかったです。
でも、私たちに出来ることは、信じることをやめないことだけなんだ、どんなことがあっても諦めずに諭し、背中を押し続ける事だけ。全体を通じてそういう意思を感じました。
マロニーは判事や教育係やテスの支えのお陰で、どうやら更生できそうな雰囲気で終わります。
でも、現実はそう甘くないでしょう。
教育も足りていない前科者が10代で親になり、結婚したとして上手くいくか。正直昨今のニュースを見ていて、いきっこないと思ってしまいます。
ですが、この先の裏切りも含めて、彼らを信じつづけること。それだけが、数少ない、「人を救えた前例」なんだろうと思いました。
マロニーはあんな母を愛しているんですね。母に愛されたい。その気持ちが叶わないことが辛くて辛くて。誰にも十分に愛されていないことを知っている、あるいは直視できず、よくないことばかりしてしまうのだと思います。自分を価値がある人間と思えないから。
母も愛してないわけではないけれど、気まぐれで自分勝手すぎる。とはいえきっと彼女にも悲しい負の連鎖があって、もうちゃんとできないんでしょう。悲しいけれど母を諦めて他の人と関係を築くしかもう方法はないけど、血も繋がってないのに自分みたいなもんを誰が愛してくれるよ。そんなマロニーの叫びが頭の中に響き続け、苦しかったです。
でも周りの人が頑張ってくれた。
テスのお母さんが、お腹の子供を堕胎するのは父親がろくでなしの自分だからでは?という問いを否定してくれたこと。
判事がプレゼントの石を文鎮にしてくれていたこと、手を握ってくれたこと、ずっと更生を願って諦めないでいてくれたこと。
ヤンが、ぶつかりながらも寄り添い続けてくれて、最後にはマロニーの味方になってくれたこと。
テスが自分を愛してくれたこと。
ちょっとづつちょっとづつ、人を信じ、慈しむことを覚え、遂には、更生施設の新入りを励まし、穏やかな表情で子供を宝物のように抱きしめられるようになりました。
特にマロニーが子供を抱いているところは、泣けました。
子どもの誕生を祝福できていることに、泣けて仕方がなかったです。自分がもらえなかった十分な愛を子どもに注いでくれそうで嬉しかったです。
あと、マロニーの泣き方に、見ているこちらも泣かされました。なんていう顔のしかめ方をするのだろう。どんなにこの子は傷ついているのだろうと。
今でも泣けてしまう感じです。
これは、非行少年たちを支えようとする大人たちに対するエールの映画だと思います。諦めずにずっと続ける。それだけしか出来ることはないんです。