「多様性に本当は不理解な米社会の現実と今後の可能性」人生は小説よりも奇なり Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)
多様性に本当は不理解な米社会の現実と今後の可能性
この映画のラストシーンがとても爽やかで、エンディングだけで考えるなら、きっと心に残るエンディング作品のベスト100選位の中には推薦したくなるような、綺麗なラストシーンだった!!
そして、作品の全編で使用されているショパンのクラッシック名曲の数々。それはあたかもこの作品の主人公達2人の、心の中のざわめく葛藤とは裏腹の穏やかな、美しい旋律を奏でるのだ。
その美しい旋律は、この映画の2人のように、静かにだが、誰にでも確実に忍び寄る老いに対する備えが甘い、このゲイカップル達の、脇の甘い生き方、危機管理能力の欠如した生き様を笑っている様にさえ、皮肉れる程、音楽が美しく効果的に使われている作品だった。
そんな、彼ら2人の生き様は、少々時代遅れな生き様と表現している様も感じられるのであった。
「光陰矢の如し」 誰の人生でも、人間にとって1日は24時間平等に有る筈なのだが・・・
しかし、現実には人生の時間と言う魔物?は過ぎてしまうとあっと言う一瞬の出来で、殆ど自分の思い描いたように、理想的に順調には事は運ばない。そして気が付けば時間だけが悪戯に経過しているような、幻想を感じさせるものなのだ。
他の方には当て嵌まらなくとも、少なくとも、私自身が自己の人生を振り返るなら、正に時間は無慈悲に過ぎ去るのが早いと感じてしまう、そんな人生を生きている。
この作品の主人公達2人の人生もおそらく、私と同様に無慈悲に時が流れてしまったと思える2人の人生模様なのだろう。
本作の主人公2人は言わずと知れた、最近では、もう決して珍しくはないLGBTの当事者。
いやむしろ食傷気味な映画の一つのカテゴリーテーマと言っても良いのかも知れないゲイカップル、ゲイピープルの人生を描いた作品なのだ。
ところで、社会学の統計によると、何処の国でも、どの時代でも、平均して人口の2~3%の人々は、このLGBTと言うセクシャルマイノリティーに当て嵌まる人々だと言う。
それが事実とするならば、日本の場合で言えば、小学校の各1クラスには平均して、1人の割合でセクマイの人々が存在していると言う計算になる。電車の中にも、何処でも人が百人集まれば、その中で2人~3人はLGBTだと言う計算になる。
それ故、こう言う人々の人生模様を描く事があっても不思議はないのだろう。
だが、ハリウッド映画ではやたらこの手の作品ばかりが、近年は目に付いて正直食傷気味な私なのでした。
前半39年間パートナーシップを結んでいたベンとジョージが結婚した後から、起こる人生の苦難の描写である作品の前半部分は少々救いが感じられず、息が詰まって気が滅入ってしまう。
ベンが宿無しになり、甥子のエリオット一家の家庭に居候した事で、エリオットの息子ジョーイとベンの関係が不協和音を奏でた、後の描かれる終盤の展開が素晴らしい作品だった!
前半が、暗く歯切れの悪い演出が続いていたその分、一期にラストへの持って行き方が好印象を残すきっかけになった様に思う。
多様な人々が、生きて、生活する事でこの地球で生きている人々全ての人生もより豊かで円熟した深い体験をする事が可能で有る事をこの作品は示してくれた!観て損はない作品だった!